第2回定例会一般質問と答弁    2020.6.2 奥田雅子

Q1)区は介護事業所の開設状況や運営・経営状況など、実際のところをどこまで把握しているか。調査・聞き取りは行ったか。施設系、通所系、訪問系のサービス提供状況について確認する。施設系、通所系、訪問系とそれぞれ課題は違うところにあると考えるが区の認識を伺う。

A1 高齢者担当部長) 開設状況について、介護事業所は十分な感染症対策を行ったうえでサービス提供を継続するのが基本だ。その中で感染拡大防止の観点から、短期入所では2事業所が新規受け入れ制限を実施し、通所では11事業所が自主休業を行った。なお現在はいずれも再開している。

 次に運営状況等については、通所や訪問事業者から、サービスの利用控えから利用実績が減少しているという声を聞いており、減収が見込まれる状況にあると把握している。

最後に施設系、訪問系、通所系のそれぞれの課題だが、施設系では感染経路の遮断等による感染リスクの軽減、訪問系では特に身体介護等を中心とした感染症予防対策、通所系では施設内での感染予防対策と利用自粛の人に対する適切な代替サービスへの切り替えといった違いがあると認識している。

Q2)厚労省や東京都から感染予防策等の事務連絡が発せられているが、区が情報を精査し区の取り組みや見解を添えて、事業者に情報提供することが合理的だと考えるが、そのような対応のついて区の見解は。

 単体の事業者は人員の融通も経営的に厳しく、現場職員の疲弊も想像に難くないが、そのような事業者に区は必要物品の優先配布などの対策や支援を行ったか。現場の要望を聞き取り、今後の対策に生かしてほしいがいかがか。

A2 高齢者担当部長) 区では区指定の地域密着型サービス事業者に対し、国や都から発出される通知に加え、区独自に留意点をまとめ周知を図っている。

 また、単体事業所に対する支援としては、国の人員基準等の臨時取り扱いに関する問い合わせに対応するとともに、これまで単体事業所も含む介護事業所にマスク8万枚を配布しており、近く約40万枚の配布を予定している。今後も事業者の声に耳を傾けサービス継続の支援を行っていく。

Q3)介護従事者に体調不良等が見られ医師が感染を疑った場合は、濃厚接触者と認められなくても予防的観点から速やかにPCR検査を行い、介護する側される側が安心でき、介護崩壊を起こさないという姿勢で取り組むことが必要だと考えるが、区の見解を伺う。

A3 保健所長)診察した医師が感染を疑った場合は、濃厚接触者でなくてもPCR検査の対象となる。区としては今後も介護崩壊を起こさないように感染防止に取り組んでいく。

Q4)国の資料で、区の特別養護老人ホーム・エクレシアでのオンライン面会の事例が紹介されていたが、各施設での工夫や事例を区内の施設で共有するために、区として積極的に取り組みの情報を提供するなどの働きかけが必要と考えるがいかがか。

A4 高齢者担当部長) 区内特別養護老人ホームの施設長会やサービス事業所の代表が集まる連絡会が定期的に開催されており、区も参加して情報交換を行っている。今後もこうした機会を活用し、事例の紹介など積極的に情報提供を行っていく。

Q5)施設や訪問介護でも新規利用者の受け入れが中止となっている場合があり、代替サービスの組み換えに苦労するケアマネの話を聞くが、受けたいサービスの提供ができなかったという事例はなかったか。

A5高齢者担当部長) 感染防止の観点から短期入所などで新規の受け入れを制限した事業所もあったが、ケアマネの尽力で、別の受け入れ先や代替サービスを見つけるなどの対応がなされ、必要なサービスが提供できなかったという事例は聞いていない。

Q6)感染の不安から、これまで利用していたサービスを控えたり自宅に籠りがちになることで、身体機能の悪化が進むことが懸念される。平時から「おたっしゃ訪問」などを通して状況把握はできているものと思うが、今回のコロナ禍での対応として特に強化した点はあるか。

A6 高齢者者担当部長) 緊急事態宣言による外出自粛などの影響で、高齢者が孤立し生活のリズムを崩すなどの心配がある。ケア24やゆうゆう館の職員、民生委員から電話での声掛けを行うとともに、約9800人の高齢者をを対象とする「安心おたっしゃ訪問」のお知らせに困りごとがあった場合の電話相談の案内を加えた。周囲からの見守りと高齢者からのSOSの両面から状況把握に努めたところだ。

Q7)高齢者の状況把握のためには、日ごろから高齢者に係わる機関がいつにも増して全体共有、役割分担の調整が必要である。ケア24やケアマネ、訪問介護、訪問看護・医療さらには地域の民生委員などからも知恵を借りて高齢者に寄り添った対応が必要と考えるがいかがか。

A7 保健福祉部長) 支援を必要とする高齢者の状況把握については、日ごろからその高齢者に係わっている機関同士がお互いの役割を理解し、情報共有を図ることが重要であると認識している。

特に現在は新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛の影響で、高齢者の中には外出を控え閉じこもりがちになっている人も多く、身体機能の低下や病気の悪化で医療支援が必要な例も増えている。対面での支援が難しい中で、ケア24やケアマネ、訪問看護等地域で高齢者に係わる機関が高齢者の状況を把握していることから、それぞれの機関の情報や取り組みを共有し、状況に応じた支援に役立てていきたい。

Q8)今回のことで地域のサロンなどが行った活動を通し、日ごろからのつながりがいかに大切かということが分かった。サロンの運営や家賃などで困ったこと、工夫して成果があったことなどを整理検討して今後の活動に生かされることが重要と考えるがいかがか。

A8 高齢者担当部長) 外出自粛中は活動を支援するNPO団体が、連絡先を把握している利用者に電話で状況を確認していると聞いている。区としては通常の活動が困難な場合であっても介護者家族がつながっていることは重要と考えており、介護者の会などにアンケートを実施し、杉並介護者の会連絡会を通じて情報共有してもらう予定である。各グループには今後の活動の参考にしてもらいたい。

Q9)高齢者の介護者が緊急入院などで介護ができなくなった場合に備え、詳しい情報をあらかじめ記入しておいて介護の引継ぎをスムーズに行えるようにする「緊急引継ぎシート」を区でも広めていってはどうか。

A9 高齢者担当部長)「緊急引継ぎシート」は緊急時にすばやい支援を行うことを目的とするものと考えるが、区では地域のたすけあいネットワーク制度で、支援内容や医療等の情報を記入した個別避難支援プランを作成し、救急情報キットで保管する取り組みを行っている。また、介護者が新型コロナウイルスに感染した場合、介護保険課が直接担当ケアマネに連絡を入れ、介護者が入院している間の高齢者のケアについて依頼する流れになっている。担当ケアマネは対象者に係わる様々な情報を把握していることから、新たなツールがなくても対応できると考えている。

Q10)4月27日に総務省から出された「特別定額給付金申請の代理について」の中に、単身世帯で寝たきりの者や認知症の者などへの対応が示されているが、自ら申請が難しい人やその支援者に代理申請の情報を知ってもらうために、区ではその周知方法や支援体制についてどのように進めていくのか。

A10 区民生活部長)4月27日の総務省通知の内容については区ホームページで周知しているほか、杉並区コールセンターへ代理申請の相談があった際に丁寧にお知らせしている。また、区の高齢者部門、子ども家庭部門のほか、関係機関・団体とも連携しながら、寝たきりや認知症の単身高齢者や施設入所者に対して、可能な限りきめ細やかな周知に努めている。なおこのほか、申請書の記入が難しい人には、5月20日以降区役所1階ロビーに臨時相談窓口を開設し、6月8日から11日までの4日間は行政書士会杉並支部の協力を得て、申請手続きの支援を実施していく予定だ。

Q11)4月の介護報酬が事業者の手元に届くのは7月ということで、7月以降さらに事業所の経営状況の悪化が懸念される。介護報酬アップは国に対して強く要望すべきことではあるが、事業所として申請できる補助金や助成金情報などの提供のフォローも必要と考えるがいかがか。

具体的な感染防止対策などの危機管理研修を、特に通所や訪問介護を担う小規模事業者に行っていくべきと考えるが区の見解を問う。

A11 高齢者担当部長)現在区公式HPに置いて「新型コロナウイルス感染症の影響に対する支援一覧」を掲載しているが、今後、介護事業者向けのサービス継続のための国や都のさまざまな支援策についてわかりやすくまとめたものを作成し、随時情報提供していく。また、介護事業者の代表からなる連絡会でも情報の提供を行う。

 感染症に関する研修については、これまでも介護事業者を対象に、介護保険課と保健予防課との共催で毎年実施している。今回の新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、研修内容の充実を図っていく。

Q12)今回のコロナによる福祉全般にわたる課題の検証と、次に向けた対策の検討の進め方について、区はどのように考えているか。

A12 保健福祉部長)福祉サービスは介護、保育、相談、集いなど、人と接し触れ合って支援することが基本である。これらのサービスの提供を、新型コロナウイルスの感染防止を図りながらいかに維持していくか、また対面での接触が少なくなることによる要支援者の状況をいかに把握するかなど、今回の感染拡大は福祉分野のあらゆる面において様々な課題を突き付けられたと受け止めている。幸い現在は小康状態となっているので、この間の対応が困難であった事例や課題となった事項の分析・検証と、事前に備えておくべきことを洗い出し、再び感染が拡大した際に万全の体制で対応できるよう、スピード感をもって検討を進めていく。