第2回定例会一般質問   2020.6.2   奥田 雅子

いのち・平和クラブの一員として一般質問します。

●この度の新型コロナウイルス感染症は誰もが初めての経験であり、得体のしれないウイルスへの不安と恐怖に世界中が巻き込まれました。日本においても例外ではなく、人々の暮らしや医療、介護、経済への影響は計り知れないものとなりました。そんな中、私が疑問に感じたことは、医療崩壊については最優先課題として取り組むことは当然ながら、その陰で介護も崩壊の危機に瀕しているということが、あまり取り上げられていなかったことです。ここへきて、政府は27日の閣議で第2次補正予算案を決定し、介護・福祉の現場を支えている職員に対し全額国費で新たな給付金を出すことも盛り込まれましたが、これらが現場の手元に届くのはいつになるのか、スピードが求められます。この間、私は実際の介護現場における窮状を聞き取り、現状に即した支援が必要との思いを強くしました。そこで、杉並区で行われた対策や支援について確認するとともに、次に必ず来ると言われている第2波に向けた備えについて、今回は高齢者支援を中心に質問します。

★まず、高齢者を取り巻く問題について、事業者の立場、利用者の立場から現状を確認していきます。最初に事業者の立場から5点質問します。

  • 区は介護事業所の開設状況や運営・経営状況など実際のところをどこまで把握しているか。

調査聞き取り等は行ったか。把握していれば施設系、通所系、訪問系のサービス提供状況について確認します。

  • 施設系、通所系、訪問系とそれぞれ課題は違うところにあると考えますが、区の認識を伺います。
  • 厚労省や東京都から都度、感染予防策や感染が発生した場合の対応、物資関連の事務連絡の発信がされていましたが、事業者自らが常にアクセスして情報を確認する手間を考えると、区が情報を精査し、場合によっては区の取組みや見解を添えて情報提供することが合理的だと考えます。逼迫する介護現場への配慮という観点からもそのような対応について区の見解を伺います。
  • 介護現場ではマスクや消毒液、手袋や防護服、フェイスシールド、非接触型体温計、パルスオキシメーターなどの不足によりリスクを抱えてのケアが不安だと聞きました。また、介護従事者には子育て世帯も多い状況であり、学校が休校になり働けないスタッフが増え、人手不足の問題も発生していました。複数の事業を行っているような大きな法人であれば、その事業間で人員の融通も可能かもしれませんが、単体の事業者などは厳しいはずです。その上に経営的にも減収となれば、現場職員の疲弊は想像に難くありません。そのような状況に対して、区は必要物品の優先配布などの対策や支援を行ったのでしょうか。現場の要望を聞き取り今後の対策に活かしてほしいと思いますがいかがか伺います
  • 介護従事者が体調不良等が見られ、医師が感染を疑った場合は濃厚接触者と認められなくとも予防的観点から、速やかにPCR検査を行うことは重要であり、介護する側、される側も安心できます。医療と同様に介護崩壊も絶対に起こさないという姿勢で取組むことが必要だと考えますが区の見解をお聞きします。

★次に利用者の立場から4点質問します。

  • 施設に入所する高齢者にとっては変わらない日常が送れるよう施設職員は奮闘してきたと思いますが、様々な行事やイベント、家族面会などができない中で刺激も少なくなり、運動機能や認知機能にも影響が出ているのではないかと懸念します。介護保険最新情報でもエクレシアでのスカイプを使ったオンライン面会の事例が紹介されていましたが、各施設での様々な工夫や事例を区内の施設間で共有するために区としても積極的に良い取組みの情報を提供するなどの働きかけが必要と考えますが、いかがか伺います。
  • 施設や訪問介護でも新規利用者の受け入れ中止となっていた場合があり、代替サービスの組み替えに苦労するケアマネの話も聞いていますが、必要なサービスの提供ができなかったという事例はなかったのか確認します。
  • 特に在宅高齢者への対応が心配です。コロナ禍において感染不安などから、これまで利用していたサービスを控えたり、自宅に籠りがちになることで、身体機能の衰退が進むことがここでも懸念されます。家族がいればその変化にも気付けますが、特に高齢世帯や独居高齢者の場合は周りの者の目配りもこの状況下では届きにくく、見逃されてしまうことが心配でした。平時からおたっしゃ訪問などを通して、状況把握はできているものと理解していますが、今回のコロナ禍での対応として、特に強化した点などあるか確認します。
  • また、高齢者の状況把握のためには、日ごろから高齢者に係っている機関がいつもにも増して全体共有、役割分担の調整が必要と考えます。ケア24やケアマネ、訪問介護、訪問看護、医療さらには地域の民生委員などからも知恵を借りて高齢者に寄り添った対応が必要と考えますが区の見解を伺います。

★次に、元気高齢者についてお聞きします。

  • 元気高齢者はこれまで出かけていたゆうゆう館や地域のサロン、公共施設での企画などがすべて中止となり、自宅に閉じこもる日々の中でも、それぞれに楽しみを見つけながら、早くコロナ禍が明けることを心待ちにしていました。そんな折、地域のサロンなどでは利用者に往復はがきで近況をやり取りし、それらをニュースにまとめて届けたり、電話やメール作戦、web交流会などの創意工夫が見られました。顔の見える地域のつながりだからこそできることであり、お互いに気にかけているということが気持ちの支えになっていることが伝わってきました。自発的に行われた取組みですが、日ごろからのつながりがいかに大切かということを改めて感じました。今回のことで、地域のサロンなどが運営や家賃などで困ったこと、工夫して成果があったことなどの情報を集め整理検討して、今後の活動に活かされることが重要と考えますが、区の見解をお聞きします。

★次に、今回の質問にあたりいくつかの事業所に聞き取りをした際に出てきた課題や提言について取り上げます。

• コロナ禍にかかわらず、日ごろから介護者が病気やケガなどで緊急入院しなければならないなど、残された高齢者や子ども、障がい者に対するケアに関して備えておくことは必要なことです。それぞれに利用可能なショートステイの拡充ももちろん必要ですが、今回、介護者が感染した場合に旧西田保育園を利用した預かり事業を行うという柔軟な対応はよかったと思います。そのような場合に活用できるツールとして、ケアラー支援団体が作成した「緊急引継ぎシート」(ケアラーのバトン)というものがあります。ケアラーが緊急入院などで介護ができなくなった場合に備え、現在のケアラー自身や要介護者、引き継げるケアラーの情報や留意点などをあらかじめ記入しておいて介護の引き継ぎをスムースに行えるようにするもので、わかりやすい場所に保管しておくのですが、このようなツールを区でも広めていってはいかが見解を伺います。

  • 特別定額給付金の申請について、これは高齢者に限った話ではありませんが、4月27日に総務省から出された「特別給付金申請の代理について」の中に、単身世帯で寝たきりの者や認知症の者、老人福祉施設などに入所している者への対応が示されています。自ら申請が難しい人やその支援者に「今回の特別給付金は代理申請ができる」という情報を知ってもらう必要があります。区ではその周知方法や支援体制についてどのように進めていくのか確認します。
  • コロナの影響から介護現場を担う事業者が減ることは避けなければなりません。緊急事態宣言中は在宅介護サービスが縮小され、代替サービスの確保が難しかった場合でも、ステイホームしている同居家族がいる場合は何とか家族対応で解決できていたかもしれません。しかし、緊急事態宣言が解除され、社会活動が再開された後でサービス利用ニーズが再び高まっているのではないかと推測されます。今後第2波が来るともいわれていることも併せ、苦境にも耐えうる持続可能な事業にしていくために必要な支援を区としても積極的に検討していくべきだと考えます。4月の介護報酬が手元に届くのは7月近くになるということで、7月以降にさらに事業所の経営状況の悪化が懸念されます。そもそもの介護報酬アップは国に対して強く要望すべきことではありますが、今回のコロナ禍においては、事業所として申請ができる補助金や助成金情報などを提供し、漏れなく申請できるようフォローが必要と考えますがいかがか。

  その上で、国や都の支援策の効果検証を行い、足りない部分や対象から外れる部分などに対しては区独自の支援策も検討いただくよう強く要望しておきます。

  • また、今後の緊急事態にも利用者、事業者がともに安心できるサービス提供となるよう具体的な感染防止対策などの危機管理研修を、特に通所や訪問介護を担う小規模事業者に行っていくべきと考えますが区の見解をお聞きします。
  • 最後に、高齢者にテーマを絞って質問してきましたが、今回のコロナによる福祉全般にわたる課題について多角的な検証と次に向けた対策の検討の進め方について区としてどのように考えているか確認し、質問を終わります。