第1回定例会 一般質問  2015.2.13 市橋綾子

区議会生活者ネットワークの一員として、介護予防・日常生活支援総合事業(新しい総合事業)に向けた体制について質問します。

2000年に、介護の社会化を謳った介護保険制度がスタートし、2006年には介護予防制度が導入されました。そして昨年2014年6月に成立した、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」により、介護給付の「予防訪問介護、予防通所介護」は給付対象外、一定以上の所得のある利用者の負担割合の引き上げ、小規模の通所介護事業所等の指定権限の区市町村への移行など、介護保険制度は大きく変わることになりました。

なかでも大きな変化は、予防訪問介護・予防通所介護は「新たな介護予防・日常生活支援総合事業(以下、新しい総合事業)」に移行することです。自治体の裁量で、地域の資源を活用して、自由なサービスや料金が決められることになり、生活支援サービスの充実や、高齢者の社会参加が介護予防につながると期待されますが、その体制を整えるためには、既存の事業所に加えて、地域の社会資源、たとえばNPOや元気な高齢者も含めた地域のボランティアが、介護予防や生活支援などの担い手になることが想定されています。

区は、この新しい制度開始を前に急ピッチで準備を進めておられると思いますが、杉並区として何をめざしどのように取り組んでいかれるのか質し、現場で活動する立場の人たちからの提案もふくめて、質問したいと思います。

昨年9月の第3回定例会で、私は「2025年を見据えた介護保険制度のあり方と地域包括ケアシステムについて」質問をしました。国からの情報提供が不十分ななかでの2015年度からの制度改正への対応に加え、第6期介護保険事業計画案の策定に向けた準備段階でもあり、うかがった質問に対して多くは「これから検討」とのご答弁でした。

第6期介護保険事業計画案が策定されたいま、改めて「新しい総合事業」の体制づくりを6つの視点、1.第6期介護保険事業計画案について、2.新しい総合事業に向けた準備について、3.新しい総合事業の多様なサービスについて、4.生活支援コーディネーターと協議体について 5.サービスを担うボランティアの養成について、6.介護保険制度の周知について、質問します。

まず、第6期介護保険事業計画(案)について3点うかがいます。
今回の介護保険制度改正があり、区においても第6期介護保険事業計画(案)が策定されましたが、これまで区が取り組んでこられた介護保険事業、なかでも要介護1,2の方に対する「介護予防サービス」について、区はどのような評価をし、今回の計画策定に取り組まれたのか、お伺いします。

田中区長は昨年、2期目に向けた所信表明演説で、地域包括ケアを推進する必要性を述べられ、先日の予算編成方針のなかでも、「医療や介護が必要になっても、住み慣れた地域で安心して暮らせるよう地域包括ケアシステムの構築を進めていく」と力強く述べておられました。地域で相互に助け合い、支え合って暮らせる地域をつくっていきたいと考え、実践もしてきた私どももその実現に大いに期待するところですが、区はこの計画案で、どういう絵を描こうとしているのでしょうか、また計画の重点的な取組みは何か、あわせて伺います。

昨年12月1日から年明けの1月5日まで、第6期介護保険事業計画案がパブリックコメントにかけられました。区民からどのような意見・要望が寄せられたのでしょうか。件数と内容について伺います。また計画に反映するべきものがあったのでしょうか、伺います。

次に、新しい総合事業に向けた準備について3点伺います。
新しい総合事業の実施時期は、いつを予定しておられるのでしょうか。また、複数の関連する所管があると思いますが、どのような体制で検討していかれるのか、併せて伺います。

これまで介護保険制度により「要支援1・2」の認定を受け、専門職による介護予防給付を受けている方から、地域支援事業に移行することで、これまでと同様のサービスが受けられなくなるのではないか、といった不安の声が聞かれます。区はこれまで、区民に対して制度改正の説明を3回行ったと聞いていますが、その説明はいつ行われ、その説明会の周知方法、対象者、参加人数、どのような意見が出されたのでしょうか、伺います。

介護保険制度は改正のたびに複雑になっています。私も、今回の制度改正の学習会に参加しましたが、1度聞いただけではわかりにくいという感想を持ちました。サービス利用者の不安や心配を払しょくするには、会場に足を運べない人対策としても、おおぜいでなくても、数人集まれば、保険者として説明に出向く体制も必要ではないでしょうか。意見として申し上げておきます。

総合事業のサービスの提供側である民間営利事業者、非営利市民事業団体などから、自分たち事業者の仕事が減るのではないか、事業継続が困難になるのではないか、という不安の声があがっていますが、それだけではなく、ボランティアがホームヘルパーという専門性を持って対応できるのか、という疑問も聞かれます。つまり、「ホームヘルパーは「介護の視点」を養成講座130時間、平均して3ヶ月から6ヶ月間、講義、実技、実習を通して叩きこまれ、プロとしてプライドを持ってヘルパーの仕事に従事している。そこは思いだけで集まるボランティアとは違うことを認識してほしい」という訴えです。ボランティアには対応が難しい、専門的サービスを必要とする人も当然ですが存在します。区としてもそのような現場の声を聞く場を設定することが必要だと考えますがいかがでしょうか、伺います。

次に新しい総合事業の多様なサービスについて4点伺います。
前にも述べましたが、「新しい総合事業」では、NPOや元気な高齢者も含めた地域のボランティアなど、さまざまな提供主体の参加を促す目的があり、今回区が改定する「保健福計画(案)」においても、その整備・充実が明記されています。
ところが今回の介護保険事業計画案には、①現行の指定介護事業所による現行相当のサービス ②基準緩和サービス ③短期集中予防サービス の3つの類型は計画化され、移行スケジュールも明らかにされているものの、新しい総合事業のガイドラインで示されている、NPOやボランティアによる訪問型サービスや、通所型サービスが挙がっていません。なぜなのでしょうか、大いに疑問です。どのような判断をされたのでしょうか、その理由をお答えください。

すでに地域で行われている 見守りや安否確認、外出支援、買い物、調理、掃除等の生活支援は、介護の重度化防止に有効な訪問型サービスですし、高齢者の社会的孤立の防止、社会的関係の回復・維持というニーズに対応するものといえます。また、区の公共施設や空き家や空き室、または「住み開き」といって自宅や個人事務所といったプライベートな空間を、本来の目的を保ちながら限定的に開放される拠点などで定期的に行われているサロンなどは、ミニデイサービスと言ってよい通所型サービスです。このようなNPOやボランティアによる訪問型サービスや通所型サービスを区の施策として位置付け、計画化の検討を開始するべきと思いますが、その予定についても伺います。

先ずは地域にどのようなNPOやボランティア団体があり、どのような活動をしているのか、などの実態把握が必要だと思いますがいかがでしょうか。現在までに行ってきている調査はおありでしょうか、今後の予定についても伺います。
そして、それら団体は今後の地域包括ケアシステムを支える社会資源として期待されるわけであり、区は団体の意見の聞き取りを行うべきと思いますがいかがでしょうか。伺います。

次に、サービスの担い手となるボランティアなどの養成について1点伺います。
総合事業における訪問型サービス、通所型サービスを担うボランティアの導入については、給付抑制を目的にした安易なボランティア導入は問題外です。しかし、導入するからには適正な養成・研修、その後の受け皿やマッチングが必要と考えます。区の見解を伺います。

さて、新しい総合事業では、生活支援・介護予防サービスの体制整備のために、「生活支援コーディネーター」と「協議体」の設置が求められています。
まず「生活支援コーディネーター」についてですが、新しい総合事業は、介護予防サービスの担い手づくり、地域資源を活用することが想定され、地域づくりにつなげていくものだと考えます。この視点から、生活支援コーディネーターに必要なものは「資格」ではなく、高齢者の生活を支える地域資源や、新たな人材を発掘する視点であると考えますが、区の見解を伺います。

次に「協議体」について伺います。
「協議体」は、生活支援・介護予防サービスの多様な関係主体の定期的な情報共有、および連携・協働による取組を推進するために設置されるものです。この事業でのレベルには第1層、第2層があり、第1層は市町村区域で、主に不足するサービスや担い手の創出・養成・活動する場の確保などの資源開発、第2層は、中学校区域で、第1層の機能の下で具体的な活動を展開 とされています。実効性を求めるなら第2層、区域ごとに捉えるべき、という視点に立って3点伺います。

第1層の協議体を区が設置すると伺っていますが、設置の時期を伺います。また第1層を設置後、第2層の協議体も早い時期に設置すべきと考えますが、いかがでしょうか伺います。設置時期も含め、構成なども一律にするのではなく、地域の特性を生かしながら柔軟に設置していくべきと考えますが、いかがでしょうかお答えください。

その場合、第2層の協議体の区域のイメージはどのようにお考えでしょうか。どこからどこまでを一つの地域と設定するのか、福祉のエリア分けを複雑化させないためにも地域包括支援センターの単位が妥当に思うところですがいかがでしょうか、伺います。

「協議体」が持つべき機能について伺います。地域のネットワークを生かして、地域の現状を把握し、既存のサービスの活用、また必要なサービスの開発など、その地域に必要な多様なサービスが展開されるような機能を持つことを期待したいと思いますが、いかがでしょうか伺います。

最後に、介護保険制度の周知について2点伺います。
現在、基本チェックリストにより介護予防の二次予防事業対象者の選定を行っておられますが、費用対効果の側面を含め、どのように評価されておられるのでしょうか、伺います。

今回の改正では、要支援者を基本チェックリストで判断をするとされていますが、有効に機能するかどうか危惧をするところです。と申しますのは、「これまでの二次予防事業対象者の把握のためのものと同じ項目のチェックリストの実施では、初期の認知症など、潜在的なリスクを把握できない」また、「専門職ではない職員に振り分けられることは、サービス抑制のためであって要支援者の介護予防のためにならない」という声が介護認定を行っている現場から聞かれます。これらの基本チェックリスト使用の問題点について、区はどのような対策を考えておられるのでしょうか、伺います。また、「要介護認定申請」が基本であることを周知することが重要と考えますが、周知の際の留意点をどのようにお考えか伺います。

以上、介護予防・日常生活支援総合事業(新しい総合事業)に向けた体制について伺ってまいりました。
地域では、その実情に合わせて市民自らが、誰もが、さいごまで、自分らしく、住み慣れた地域で暮らし続けられるためのしくみをつくる、地域をつくるといった取組みが広がっています。
自分たちの暮らす地域がどうだったら暮らしやすいまちになるのか。住み続けられるまちになるのか。私ども生活者ネットワークは、地域の方たちと共にそのしくみをつくりながら、地域からの提案を区政に届けてきました。

超少子高齢社会を目前にして、地域にある多様なニーズに沿ったサービスを生み出そうとする区民を協働の担い手として区が後押ししていただくことをお願いし、そして私どもも一緒に汗をかく覚悟であることを申し上げ、質問を終わります。