2009年第4回定例会  一般質問と答弁

                                11.24 小松久子

[高齢者の住まいについて]

【Q】 ● 国の住宅政策が「量から質へ」「市場重視・ストック重視」へと転換し、区のマスタープランも改定された。この政策転換の意図することは、「住宅は、量的には充足されたので、今後は、民間により、質のよい住宅が供給され、長い期間使用する」との考えだと思うがいかがか。よいとすれば、この政策転換に伴って区に求められる新たな役割はどのようなことか。

【A】  国の住宅政策の転換について、その意図することは、住宅のストックが世帯数を上回り、量的には充足しているため、今後は質の高い住宅が、民間住宅市場において供給されるべきであるとの考えである。

     また、区に求められる役割は、住宅市場において自力で住宅を確保できない方々にとっての住宅セーフティネット機能を高めていくことと考えている。

 

【Q】 ● 区内のひとり暮らし高齢者数と高齢者のみ世帯の人数の推移と今後の予測をうかがう。

    ● 一般的にひとり暮らし高齢者は、男性よりも女性のほうが多く、しかも低所得といえる。当区においてはいかがか。また、今後、女性の高齢者の貧困問題はさらに深刻度を増し、住宅政策に大きく影響していくと予測されるが、区の認識はいかがか。

【A】  ひとり暮らし高齢者は、平成21年18,182人、高齢者のみの世帯の人数は、21年28,558人と推計していますが、今後とも、高齢化や核家族化の進展に伴い、更に増加していくものと考えている。

     ひとり暮らしの高齢者の女性の割合は、男性に対し、女性が約2倍となっている。所得については、一年間の収入が150万円に満たない人は、男性の21.1%に対し、女性は36.3%という高い割合になっている。

     また、このような女性の高齢者の経済的問題が及ぼす住宅政策への影響については、先のひとり暮らし高齢者に対する調査では、女性は比較的早くから各種の制度や福祉サービスを利用しており、むしろ男性の方が閉じこもりがちで多様かつ深刻な課題を抱えながら暮らしている方もいらっしゃるという傾向が認められた。もちろん、経済的な問題も安定した生活を送るためには極めて重要なので、低所得の女性高齢者が抱える課題については、住宅に関する問題も含め、早期に把握して、適切なサービスに結び付けられるよう努めたい。

 

【Q】 ● 既存の民間の共同住宅を借り上げ、高齢者向けに改良して、貸与することなども含めて、高齢者住宅の増設を図るべきと考えるがいかがか。

【A】  区では、今年度から区営住宅の募集に際して、高齢者が入居しやすくするため専用枠を設けている。

     また、今後、都営住宅の移管受け入れに際しては、都営シルバーピアを優先的に受け入れることとしており、既存ストックを有効に活用して対応していきたい。

 

【Q】 ● 高齢者の持ち家率は高いといっても民間の共同住宅に住む高齢者は多い。バリアフリー化などのハード面、ケアする支援者あるいは見守る人の存在などソフト面の双方に渡り課題を抱えている場合が多いが、バリアフリー化についてどのように促進していくのか。

【A】  区では、住宅のバリアフリー化を希望する方々などに、週2回、すまいの住宅相談を開催し、専門家による助言など、住宅改修に関する支援を行っている。また、実際にバリアフリー工事を行う際の改修資金を調達しやすくするために、住宅改修資金の融資あっせんを行うなど、民間住宅のバリアフリー化の促進を図っている。

 

【Q】 ● 住宅課で実施している民間アパート居住者を対象とした見守りサービスはとのような仕組みか。

【A】  この制度は、高齢者等入居支援事業の一環として実施しており、申し込みをいただいた方に、週1回の電話による安否確認を行い、また必要に応じて通院介助等を行うもの。現在、NPO法人に委託して実施している。

 

【Q】 ● 東京都は高齢者のすまい方検討会で、管理組合や自治会代表者などを「高齢者住宅支援員」として普及させていきたいとしているが、区としてどのように取り組んでいくのか 。

【A】  東京都では、集合住宅の管理人や管理組合の代表者等を対象に、年2回の研修会を実施している。区では、この研修会について、地域包括支援センターを通じて、区民の方々に周知を図っているが、区としては、これとは別に、区独自に進めている見守り協力員の充実や普及に重点的に取り組むことにより、これらの課題に対応していきたい。

 

【Q】 ● アパートのあっせんや家賃滞納者には経済的助成や支援を行う仕組みが整備されているが、あまり活用されていないようだが、なぜか。

【A】  アパートのあっせん事業、家賃債務保証事業とも、平成20年4月から、対象者をこれまでの高齢者のみから、ひとり親家庭、障害者世帯など、対象者を拡充して実施している。 アパートのあっせん事業における成立件数は、平成18年度には36件だったが、平成20年度には48件と伸びている。 また、家賃債務保証事業については、平成18年度には6件だったが、平成20年度には22件と増加している。今後とも一層の周知を図るとともに、住宅に困窮する区民にとって、より利用しやすい制度となるように努める。

 

【Q】 ● 「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が施行され、高齢者向けの住宅が多種多様になった。選択の幅は広がったが、違いが分かりにくい。利用者にとって、わかりやすい内容の情報提供が必要であると考える。都で作成するパンフレットなどを地域包括支援センターをはじめ、ゆうゆう館など、多くの場での情報提供が望まれる。また、「高齢者のためのすまいフェア」や個別相談会を開催するなど啓発に努めるべきと考えるがいかがか。 

【A】  イベント等の開催は、現時点では考えていないが、ご指摘のとおり、高齢者を対象とした様々な住宅の制度があるので、区として、その制度概要や利用案内などを分かりやすくお知らせしたいと考える。

     なお、パンフレット等の利用案内などは、今後、高齢者が利用する施設に、可能な範囲で備えおくように努める。

 

【Q】 ● 高齢者優良賃貸住宅や高齢者専用賃貸住宅などを区内に誘致すべきではないか。

【A】  区の住宅施策の基本は、民間の住宅市場において自力で住宅を確保できない方々に対して、住宅セーフティネット機能を果たしていくことであると考えている。そこで、高齢者優良賃貸住宅や高齢者専用賃貸住宅については、供給者である民間事業者に対して、制度の周知に努めていく。

 

【Q】 ● 小規模多機能型施設整備を今後進めていくにあたり、高専賃との融合型施設とすることなどを検討すべきと考

えるが、いかがか。

【A】  小規模多機能型居宅介護は、単独で運営することはなかなか困難な状況であるため、区内では、これまでも認知症高齢者グループホームやショートステイ、デイサービスなど他の施設と併設する都市型多機能拠点として整備を進めてきている。ご指摘の高専賃についても、今後、都市型多機能拠点の選択肢の一つとなりうるものと考えている。

 

【Q】 ● 住宅マスタープランでは、東京都にシルバーピアの設置を呼びかけて増設を図るとしており、ぜひ進めていただきたいが見通しはいかがか。 

【A】  区ではかねてから東京都に対し、都営住宅の建替えに際しては、シルバーピアを併設するように求めてきた。

    最近の杉並区内での設置状況は、平成20年8月にシルバーピア荻窪、平成21年6月にシルバーピア高井戸西14号棟が開設されている。今後とも、区内の都営住宅の建替えに際しては、都区間で協議を行うこととなっているので、シルバーピアの併設を強く要請していく。

 

【Q】 ● 社会福祉協議会が受付窓口になっている、リバースモーゲージの制度である「長期生活支援資金貸付制度」は、この10月に制度の見直しがされたときくが、その内容を伺う。あわせて、当区におけるこれまでの活用状況と、活用の少なかった原因を伺う。

         この制度はもっと普及してしかるべきと考えるが、当事者や地域包括支援センターや民生委員など高齢者にかかわる人々への知名度が低く理解も不足している。もっと周知に力を入れるべきではないか。

【A】  この制度の本年10月の変更点は、「不動産担保型生活資金」に名称を変更したことと借受人の死亡などによる契約終了時の償還の据え置き期間を3ヶ月としたこと。また、これまでの杉並区での貸付実績は、平成15年に開始して以来、現在まで契約終了分も含め11件となっている。

     貸付に至らない原因としては、一戸建ての住宅が対象であることや推定相続人の同意、連帯保証人の確保といった貸付の要件を満たせない方が多いことがあげられる。この制度の周知については、パンフレット等を地域包括支援センターに送付し窓口で配布していただいているほか、民生児童委員協議会でも制度の案内などを行っている。今後とも、様々な機会をとらえて、制度の周知につとめていきたい。

 

【Q】 ● 高齢者や障害者、ひとり親世帯など社会的弱者に対象を特化して、すまいのあり方を検討し、区としての基本政策を定めるべきと考える。「スペシャル住宅マスタープラン」とでもいうべき政策を当事者や介護ボランティア、NPO関係者を交え、議論して作成したらどうかと考えるが見解はいかがか。

         高齢者が、在宅でも、介護度が進むなどの、ライフステージが変わったときに住み替えができ、心身ともに健康に暮らせるための仕組みをNPOを含めた民間との連携で整備することが求められる。区の見解を伺う。

【A】  これまで杉並区住宅マスタープランは、住宅をとりまく環境の変化に応じて、3次にわたり改定を重ねてきた。その度に、高齢者や障害者などに配慮した施策を盛り込み実施してきた。今後、杉並区における高齢者のすまいのあり方については、「高齢者の居住の安定確保の関する法律」の改正も踏まえ、また、ライフステージに沿ったすまいの仕組みづくりも視野に入れて、高齢者福祉部門とともに検討していく。

 

 

[低炭素社会に向けた区の政策について]

 

【Q】 ● 現在の環境基本計画の総括について、審議会ではどのような議論がなされ、区としてどのように捉えているか。特    に「4つの挑戦」のうちの一つ、CO2削減目標について、区の取り組み総括を伺う。

         地域省エネ行動計画の総括について、「地球を救え、すぎなみ省エネ作戦」の6つの作戦それぞれについて、達成できたこと、できなかったことなどを評価し、改定に活かすことが重要であると考えるがいかがか。

         かつて、議会答弁では、環境基本計画改定では、できる限り数値目標を具体的に提示していきたいとのことだった。CO2削減目標値を定めることは不可欠と思う。見直しにおける数値目標を伺う。

【A】  環境基本計画の改定について、環境清掃審議会では、杉並区の将来像や施策のあり方、達成目標の到達度など、さまざまな観点から審議いただいている。区としても、審議会のご意見とともに、国の動向や区の将来を見据え、時代の変化に対応した施策を展開していくため、必要な見直しを進めることが重要と考える。

     また、CO2の削減目標については、これまで、区立学校のエコスクール化や家庭における省エネ対策の普及、緑化対策など、さまざまな施策を講じているが、削減目標の達成は、現実的には厳しいものと考える。

     地域省エネ行動計画についても、環境基本計画と同様に、具体的な施策の取組み状況や達成度を踏まえ、適切に対処している。改定におけるCO2の削減目標数値については、環境政策を進める上の一つの指標として、そのあり方を検討しているところである。

 

【Q】 ● 太陽光発電、太陽熱利用、高効率給湯器の設置助成事業の実績の推移と区の評価をうかがう。

【A】  太陽光発電機器については、平成15年度から助成を開始しているが、直近3ヵ年の実績では平成18年度が67件、19年度が74件、20年度が72件となっており、今年度の助成予定件数の138件を加え、7年間の合計で、

470件となっている。

太陽熱利用機器及び高効率給湯器の助成は、今年度から実施しているが、太陽熱利用機器が2件、高効率給湯器が137件。区では、区民の環境に対する意識や関心の高さが、こうした助成実績に繋がっていると考えている。

 

【Q】 ● 省エネ住宅の普及にもっと力を入れるべきで、住宅の省エネ診断を建築、建設、電気、ガスなどの事業者や環境活動NPOの協力で実施されてはいかがか。その際、事業者に対する啓発の意味も含め、耐震、バリアフリー、緑化、雨水利用など省エネ以外の住宅アドバイスと連携して行ってはいかがか。

【A】  区では、現在、環境団体であるNPOの協力により、家庭における省エネ相談を定期的に実施しており、住宅の省エネ診断や身近な緑化対策、雨水利用など、幅広く区民の相談に応じている。今後とも、相談実績や区民からの要望などを踏まえ、当該環境団体とも協議しながら、相談業務の充実に努めていきたい。

 

【Q】 ● 合成洗剤に比べて環境負荷の点から優れている石けんを広く区民に周知するため、環境基本計画などに石けんの利用を盛り込むべきと考えるが、見解を伺う。

【A】  石けんは、ご指摘のとおり合成洗剤に比較して水中における界面活性剤成分の分解性が高く、環境にも良いとされている。また近年では、合成洗剤についても研究が進み、同成分の分解性が向上していると認識している。     今後とも区民の健康と環境を守るため、石けんに限らず環境負荷の少ない洗剤の使用を推奨していきたい。

 

【Q】 ● 学校給食調理場で使用する食器洗浄剤の選択はどのような考えで行っているのか。

       石けんを使用するモデル実施を検討すべきではないか。

【A】  石けんについては、低温の水では石けんカスが生じやすく、その除去等が必要になり、水質汚濁を防止し十分な洗浄効果をあげるために大量のお湯を使うこと等の問題がある。これに比べて合成洗剤は、水に溶けやすく、石けんよりも少量で十分な洗浄効果をあげられる。このため当区では、石けんと合成洗剤について、環境への影響や作業面に対する配慮、経済性などを総合的に比較・検討して、現在、法令で規制されている有害物質を含まない天然植物から作られた合成洗剤を使用している。このため現時点でモデル実施については考えていない。