障がい者の施設には、働く場である「授産施設」と、障がいが重くて授産施設で働けない人の訓練のための「更生施設」があります。こころみ学園は知的障がい者の更生施設です。ブドウ、しいたけの栽培とワイン生産を中心とした作業訓練を行っています。
知的障がいが対象の療育手帳(愛の手帳)1度(最重度)、または自立支援法の障害程度区分5〜6(平均5.2)がいらっしゃり、定員は90名、短期入所10名、平均年齢51歳、最高齢は81歳。開所した40年前から入っている人もいます。入所者を支える職員はパートも含めて70人。
「食事づくりは入所している人たちが交代で、洗濯は洗濯係の10名で100人分の洗濯を毎日行います。雨が降っても洗濯は休めません。休むと次の日は倍になってしまいますから。その他、動ける人はみんな外で農作業です」「障がい者だからできない、ではなく、得意なことを見つけてやってみることを大切にしている」「単純な作業でもずっと長いことやっているうちに責任感が出てきます」と事務局長の佐井さんは語ります。
来週89歳になられる創始者の川田昇園長さんがぶどう栽培を始めたのは、1年間コンスタントに手がかかり、その成果がよく表れるのがぶどうだから。そしてワイン造りはぶどう栽培を始めてからの夢だったそうです。「ワイン造りはカッコイイ」から。障がい者は「カッコイイ」ところから遠い所にいる。だからこそ、ワイン造りというカッコイイ仕事をさせたいと考えたのだそうです。「でも、同情で買うのは1回きりだから“障がい者がつくるワイン”ではだめ。“おいしいワイン”をつくらなくちゃ」と実力を磨いたといいます。
しかし、こころみ学園にも悩みが。入所者の高齢化が進んでいて、作業に関われる人が減りつつあるとのこと。定員制なので、空きがなければ新しい人が入れない。介護施設との提携など高齢化対策が目前に迫っています。 杉並区議 市橋綾子