☆特別寄稿① バイデン大統領の「ポリティカル・ウィル」と女性

シンポジウム「ジェンダー主流化とは何か」会場で 5/1

 2021年1月20日に発足した民主党のジョー・バイデン新政権は、アメリカ史上最も多様性に富んだ内閣となった。15人の閣僚のうち4人がアフリカ系あるいはラテン系アメリカ人が占め、女性は5人、その中には初めての先住アメリカ人の内務長官が含まれている。さらにゲイの運輸長官が任命され、初めて上院の承認を得た。年齢も39歳から74歳と多岐にわたる。「アメリカらしく見える」ことを目指したバイデンの閣僚人事は、共和党トランプ大統領の白人男性だけの閣僚から劇的な変化であり、政治的力をもつ者のポリティカル・ウィル(政治的意志)が政治のあり方を大きく変え得ることを象徴している。

 政権発足100日間で署名した一連の政策もまた、アメリカ社会に対するバイデン大統領の強いポリティカル・ウィルの反映したものと言える。まず政権発足当日、気候変動に関するパリ協定への復帰に署名し、「公的支援を十分受けていないコミュニティーの人種公平性とサポートを連邦政府が推進する」ための大統領令、そして「性同一性と性的志向に基づく差別の防止と闘い」に対する大統領令に署名した。
さらにオバマ政権でとられたDACAと呼ばれる親と一緒にアメリカにわたり市民権のとれていない若年移民に対する強制退去を延期する政策の復活、そしてコロナ危機を乗り越えるための連邦政府の強いリーダーシップの回復とWHOへの復帰等々がある。いずれもトランプ政権の「自国中心主義」で白人至上主義の政策を反転させるものである。こうした政策の先には、企業と富裕者層への大幅増税とそれによって賄われる貧困家庭への福祉と教育資金援助、さらには膨大な公共投資を通して労働市場の回復が目論まれている。
 (東洋英和女学院大学名誉教授、杉並・生活者ネットワーク会員 進藤久美子)