第1回定例会一般質問 奥田雅子2019.2.15

1.地域コミュニティ施設とその運営について

2.備災を促進するための支援について

<地域コミュニティ施設とその運営について>

区立施設再編整備計画(第一期)第二次実施プランが、第一期計画の具体的な実施計画として2019年度からの3か年の取組みとして定められ、その中で地域コミュニティ施設のあり方が示されました。施設の再編に当たってはハード面とともにソフト面、つまり運営をどのように行っていくかも大変重要なポイントであると考えます。そこで、今回は地域コミュニティ施設の運営について質問してまいります。

地域コミュニティ施設は、一般的な貸館的な区民会館や区民集会所、ゆうゆう館、機能移転後の児童館施設の転用を基本に、多世代型の機能を備えた場として、それまでの地域における役割を受け継ぎながら、新しい施設として生まれ変わろうとしています。幅広い対象者の利用を促し、受付窓口では、高齢者への声掛けや日常の相談なども行い、地域のみなさんと緩やかにつながる施設にするとあります。

2025年問題が取りざたされるこんにち、地域コミュニティ施設を考えるには、現在のゆうゆう館の機能をどのように維持・発展させていくかが重要なカギになると考えています。

なぜなら、今後さらに進展する少子超高齢社会に対して、高齢者がいかに地域で安心して生活できるか、介護保険制度や区の介護予防事業も利用しながら、地域の様々な機関や人の関係性を紡ぎながらの地域づくりが求められているからです。

現在のゆうゆう館は、それまでの区直営の「敬老会館」から機能が一新され、協定書に基づく区との協働事業という形で様々なプログラムが組まれ、高齢者を中心としつつも協働事業については年齢も居住制限もなく、多世代を対象とした幅広い事業展開を、ケア24や学校・児童館との関係もつくりながら拡げてきており、利用人数も飛躍的に増加していると聞いています。そしてこのような事業展開を可能にしているのが、受付等業務委託を受けながら協働事業を展開している主に地域で活動しているNPO法人の方々です。そこで伺います。

①直営の敬老会館時代から現在のゆうゆう館事業への経過を、区としてどのように評価されているか。見解をお聞きします。

今後、ゆうゆう館が地域コミュニティ施設に転用された場合、これまでの成果は維持・継続、そして発展できるのだろうかといった不安の声があり、そのような危惧が今回のパブコメにも寄せられています。それに対する区の答えは、「施設管理事業者の選定方法について今後検討していきます」というものでした。

行財政改革推進計画では、多様な主体によるサービス提供として、公の施設の運営については指定管理者制度の導入を積極的に検討し推進するとあります。

一般的に施設の管理・運営をアウトソーシングする場合、いくつかの手法があると思いますが、施設の目的・性格・規模・地域との関係などを総合的に判断し、最適な手法を選択する必要があります。利用者との関係も含めて柔軟な判断が必要とされると、私は考えますが、地域コミュニティ施設も指定管理者制度の導入の対象になるのかどうか、気になるところです。指定管理者制度は2003年の地方自治法改正によって管理委託制度に代わって新たに導入されたものと認識しておりますが、

②そもそも指定管理者制度とはどのような制度なのか、また、指定管理者制度が導入された背景について伺います。

全国一律的に指定管理者制度が導入され、本来、地方自治法では「導入することができる」という“できる規定”であったものが、新規施設は全て指定管理者制度導入という自治体の首長らの誤解もあり、公の施設は多種多様、大小さまざまであるにも関わらず、その設置目的に照らして市民の参加・参画のもとに管理・運営のあり方が検討されることもなく、全国的には一挙に導入が進んでいったようです。しかし、杉並区においては当時導入に積極的では無かったように聞いていますが、

③杉並区が最初に指定管理者制度を導入したのはいつどのような施設で、どのような理由があったのか、伺います。

④その後、少しずつ導入されているようですが、現在の状況について、指定管理者制度を導入している公の施設の種類および数を伺います。

一般的に指定管理者制度のメリットには管理経費の削減、行革的な視点があると思いますが、大規模施設の場合には、それなりのメリットがあるものの、地域コミュニティ施設のような、比較的小規模で、しかも施設数が多い場合は、それぞれで行うよりも現在のように区が一括で行う方が管理経費の削減になると思います。ですので、事業運営を重視し、一方で管理面での経費削減がそれほどの効果が望めないのなら、現在のゆうゆう館の契約スタイルで改善すべきところはするとして、継続することの検討も必要だと考えますが、

⑤地域コミュニティ施設の管理運営方法をどのように考えているのか、区の見解をお聞きします。

地域コミュニティ施設について、区は計画の中で、「乳幼児親子を含む子どもから高齢者まで、誰もが身近な地域で気軽に利用でき、世代を超えて交流・つながりが生まれる施設」をめざすとしています。

しかし、それは、ラウンジの設置で済むというような安易な発想で可能となることではなく、地域住民の目線、当事者の目線に立って、そのニーズを探り、一人ひとりの健康や生活にも配慮しながら運営してこそ、達成できることであり、貸館的発想の運営ではできることではないと考えます。

⑥計画には“ゆうゆう館の機能継承”という文言が散りばめられていますが、この「地域コミュニティ施設での事業実施」という側面について区ではどのような議論になっているのか、重要視したいことは何か、区の見解を伺います。

子どもから高齢者にまで対象を拡げることで、世代を超えての交流・つながりが生まれる施設になれば、そして30~40というほぼ小学校区に匹敵するようなエリアごとに配置されるなら、地域区民センターのような大きな施設とは違った、まさしく地域に根付いた住民の居場所になるのではないかと期待がふくらみます。そう考えた時、施設の運営を担う主体が誰なのかが大きなポイントとなります。営利を第一の目的にしている一般企業にはこのようなきめ細かな運営は向いていないと思います。現在のゆうゆう館運営事業者がこれまでやってきたことを正当に評価して、新しい事業者も含めてその力を一回り大きくなる地域コミュニティ施設でも発揮してほしいと思うことから、やはり地域で活動しているNPO法人や団体が担ってこそ利用者の立場に立った運営ができるのではないか、これまで培ってきたスキルやノウハウを使わない手はないと思います。そう考えた時、地域コミュニティ施設に指定管理者制度は馴染まないのではないかと、思わざるを得ません。

指定管理者制度が施設管理と事業運営を一体として行う制度であるならば、再委託が可能であったとしても、地域のNPO法人には手に余ると言えるのではと考えます。現在のゆうゆう館は受付・日常清掃などを業務委託契約で、大規模清掃・修繕は区が担い、そして協働事業については協定書を取り交わしながら運営されていると聞いています。

指定管理者制度については、各地で導入後に取り消しや取止めも起こっており、又、指定期間、指定管理料、利用料金制、精算などの細かい取り決めについての課題もあるようです。

今後杉並区が新たに指定管理者制度の導入を考えようとする場合、指定管理者制度を導入するかしないかを含め、これまでの経緯や利用者の意見なども考慮した十分な議論を行うことを望みたいところです。

⑦特に地域コミュニティ施設については、現在のゆうゆう館の実態も踏まえ、事業者や地域の利用者の方々の意見にも十分耳を傾けていただきたいと思いますが、地域コミュニティ施設は所管の違う機能が1つに複合化されることから、関係各課の連携が重要と考えます。現在どのような体制で議論がされ、最終的な担当所管のあり方についての区の見解をお聞きします。

現在、モデル館として運用されているゆうゆう馬橋館での様子をお聞きしました。多様な世代が利用し、特に小学校が近隣ということもあって、小学生の来館も多いようです。今後、地域コミュニティ施設が地域に増えていけば、放課後や長期休みの学校以外の子どもの居場所としても期待できると思いました。様々な可能性を生み出していくためには地域コミュニティの姿をどう描き、その達成のためにどう運営していくのかがとても重要だと感じました。

⑧以上、地域コミュニティ施設の運営のあり方について質問してまいりましたが、最後に地域コミュニティ施設が区民にとって使いやすく、豊かな関係性が紡げる場所として機能していくために、どのような施設にしていきたいのか、改めて区の見解を伺って、次のテーマに移ります。

<備災を促進するための支援について>

区内の防災公園と言われている桃井原っぱ公園、下高井戸おおぞら公園や都立公園などで、ある市民団体が自ら企画して、体験型の避難所模擬訓練を行っています。私も企画・運営に参加する中で感じるのは、災害に備えることを一般的に「防災」と言いますが、災害は人の意思で防ぐことができないものであり、本来の文字が表わす意味からすれば「災害に備える=備災ビサイ」と呼ぶのがふさわしいのではないかということです。そこで今日はこれまでの体験をもとに杉並区の備災のあり方について質問します。

1.昨年、日本は大きな自然災害に何度も見舞われました。1月の豪雪に始まり、大阪北部地震、西日本豪雨、北海道地震のほか、非常に強いまま上陸した台風21号などが挙げられます。当区でも職員の方々が被災地に赴き、現地での支援を通して多くを学んでこられたと思います。先日の我が会派の代表質問でも区長より丁寧なご答弁がありましたが、備災の質問の前に、改めて伺います。

1-①主な支援内容やそこでの経験は記録としてどのような形で蓄積されているのか、伺います。

1-②また、それらの記録を全体共有していくことが必要だと考えますが、区の 見解を伺います。

2.さて、防災公園について伺います。

桃井原っぱ公園などの「防災設備を使ってみる」という訓練を通して感じるのは、防災機能としてあるにもかかわらず、いざ使おうとすると実際には使えない、使いにくい点が多いことです。たとえば、車いす用トイレは介助者なしでは便器に移れない、火の効率が悪いかまど、かまどスツールの台を外そうとしてもビスの頭にペンキが塗りこめられてしまって工具が入らないなどなど、使ってみたからわかったことです。そもそもどういうコンセプトで防災公園を整備するのかを、担当所管同士で(防災課とみどり公園課が)話し合われているのか疑問です。これは原っぱ公園に限ったことではなく新しくできた下高井戸おおぞら公園にも言えることです。

少し厳しい指摘をさせていただきました。しかし、杉並区の公園は、WSなどの手法を使い、住民の声を反映させて作ってこられたことを評価するもので、それが「防災公園」とすることで何か不足が生じているのだとすれば、それは残念なことであり、その原因は何なのかを見ていく必要があります。いざという時にあってよかったと言える防災公園にしていくために以下4点うかがいます。

2-①区内には防災公園が、馬橋公園・蚕糸の森公園・井草森公園・柏の宮公園・桃井原っぱ公園・下高井戸おおぞら公園の6か所ありますが、防災公園とはどのように定義づけられている公園で、一般の公園と違うところは何か 伺います。

2-②防災公園の整備についてはエリア的には充足しているのか、それとも今後も増やしていくことをお考えなのかお聞きします。

3点目

2-③今後、防災公園を整備する場合や改修する場合は関係部所の連携が必要だと考えますが、区の考えを伺います。

4点目

2-④公園を点検する際も、防災課とみどり公園課、そして管理事業者も一緒に行うことが必要だと考えますがいかがでしょうか。

3.次に液体ミルクについて伺います。

2011年の東日本大震災後、液体ミルクの導入を求める声が挙がり、2016年の熊本地震で大きくクローズアップされました。これまで私どもは区議会や都議会で、災害時に備え液体ミルクの活用を紹介してきましたが、ようやく昨年の8月、製造規格基準が定められ、今年4月から製品上市(せいひんじょうし)の予定と聞いています。水や熱源が不要であることからライフラインが断たれている間、活用が期待されている液体ミルクですが、課題もまた指摘されています。それは、災害時であっても母乳が基本であり人工乳は代替手段という前提のもと、人工乳を必要とする親子には健康状態をアセスメントしたうえで十分量を手配すること、支援する側が頭ごなしに決めるのではなく家族の状況や希望を細やかに汲むことが肝要であること、一律に配布するのでは本当の意味の支援にならないと専門家も指摘しています。災害時に母親と赤ちゃんが元気でいられるための支援が重要であることから以下質問します。

3-①発災初期の災害対応は主に基礎自治体が担うことになることから、区でも粉ミルクの備蓄はしていると思いますが、人工乳の配布に対して、どのような対応をするかといった考え方は震災救援所マニュアルなどに示されているのでしょうか。また、乳児を持つ親への対応はどのような体制で臨むことになっているのか伺います。

3-②発災直後は水やガス、電気が使えないと哺乳瓶の消毒ができないため、紙コップ授乳が推奨されています。新生児でも紙コップやスプーンでミルクを上手に飲めるそうです。防災セミナーや親子が集まる子ども・子育てメッセのような場などでも紙コップ授乳を知識として伝えていくことが必要だと考えますが、区の考えをお聞きします。

3-③液体ミルクの導入について以前質問した際には、国や東京都の動向を注視していくと いうことでしたが、国内でも流通が始まることを受け区でも検討がされていくものと思います。しかし、消費期限が製造日から6ヶ月(グリコ)や1年(明治)と備蓄品としては短いため、自治体が現物を備蓄し、期限近くになったミルクを保育園などに提供していく「回転備蓄」が良いのか、あるいは、乳業会社と協定を結び、必要が生じたときに回してもらう、つまり自治体が在庫を抱えない方法が良いのか。後者の方が現実的だと考えるところですが、区としても検討が必要だと思います。区の見解をお聞きします。

3-④発災直後は、衛生面が悪化することから(乳児の)授乳環境を整えることが大事です。桃井原っぱ公園で行われるすぎなみフェスタでは「授乳所」と書かれたテントが設営されていて、配慮がされていて良いと思いました。避難所でもいかに早く授乳環境を整えられるかが重要だと考えますが、震災救援所の訓練でも女性の着替えの場とともに授乳所を確保するメニューが必要だと考えますがいかがか、伺います。

3-⑤日本栄養士会が「赤ちゃん防災プロジェクト」として妊産婦・乳児への栄養支援、避難所運用についてガイドラインを策定中のようです。この取り組みに対する区の認識と今後、区としても参考としていかれるのか見解を伺います。

⑥平常時の取組として、横浜市では乳児を抱えるママたちや妊婦さん対象の「子育てママの防災おしゃべりサロン」を開催していると聞いています。本区においても、例えば、子ども・子育てプラザなどで妊婦および小児(新生児・乳児・幼児)を抱える家庭向けに災害アドバイザーの講話を行ったり、参加者同士で話し合ったりする機会をつくり、防災に対する意識を高めてもらってはどうかと考えますが、いかがか伺います。

4.自助としての備災について

内閣府が毎年発行する「防災白書」の平成30年版の中に、「防災に関する世論調査」で自助、共助、公助のどれに力点を置くべきかという意識調査の結果がありました。それによると、2002年と2017年の比較では、25%あった公助は1/4の6%になり、逆に14%あった共助は25%に増え、驚くのは18.6%だった自助が約40%と倍以上になっています。しかし、意識していてもなかなか実行に移せないのが自助です。

これまで私が参加してきた市民企画の体験型避難所訓練では、参加者同士の情報交換タイムがあって、災害に備えていることを紹介するのですが、備蓄品や工夫を紹介できる参加者はごくわずかです。また、区報にイベントの案内を載せた際、持ち物として「避難所生活で必要と思うもの」と記載したのですが、「何を持っていったらいいのか」という問い合わせが主催者に押し寄せ、対応に苦慮したという声をもらいました。そこで伺います、

4-①公助の充実に取り組んでこられた区として、防災白書にある自助に対する意識の高まりに対しどのような感想を持っておられるか、またどのように対処されるのかお聞きします。

地域で開かれる震災救援所訓練に参加していても、震災救援所に行けば備蓄品で何とかなると漠然と思っている区民も多いように感じます。ところが備蓄倉庫の中を見学しても、ここには何がどれだけ入っているというような具体的な説明はありません。昨年おおぞら公園で私たちが企画した防災訓練で倉庫の中の状況を見て、これは自分で何とかしなきゃダメだと気付いたと感想を残してくれた参加者がいました。

4-②これまで区は自助に対してはどのように区民に伝えてきたのか。そのことが浸透しているのかどうか区の認識を伺います。

災害に備えることについて、身近な場所で地域の人たちと集まって具体的かつ現実的な事柄について話し合う場も必要だと思います。

4-③自治体職員による防災出前講座が各地で実施されていますが、杉並区でも「備災(自助)のすすめ」をテーマに地域でごく一般的な区民が一定数集まったら、職員が出前するといった取組みを行うことも有効ではないかと考えますが、見解をお聞きします。

5.最後に、危機管理室、防災課は、区民の命を預かる重要なセクションです。大災害が発生した場合、対策本部を立ちあげ、陣頭指揮をとるのは首長ですが、首長は福祉や環境、土木など、さまざまな分野で責任を持つ人であり、防災や危機管理の専門家ではありません。だからこそ、防災を熟知した人が、例えば、前の質問でも述べた防災公園を作る際に助言できる、すでに避難場所として設定されている箇所を検証して区に助言できる、また、そういう方がいることで「防災の達人」となれる職員の育成にもつながる、そんな役割を発揮できる防災の専門家を常勤でなくとも危機管理室の職員として配置することも必要ではないかと考えることから、その検討を要望して私の質問を終わります。