第2定例会一般質問と答弁 2018.5.30奥田雅子
<待機児童ゼロの実現と今後の課題について>
【Q1】 今年の認可保育所の利用申し込み一次調整が終了した時点で、未内定者が1,067名いたと聞いているが、その後の待機児童ゼロに至るまでの取り組みと経過を伺う。
【A1 子ども家庭担当部長】 本年4月の待機児童ゼロ実現に至るまでの第1次利用調整後の経過に関するご質問にお答えする。認可保育所入所申し込みのうち、第1次利用調整終了時点では未内定者は1,067名であった。この方々に対しては、区保育室及び区定期利用保育事業を含めて第2次利用調整を進めるとともに、認可外保育施設の利用を選択された方々の確認を行い、その結果、利用施設の決定に至っていない方が372名となった。その後この372名に対し個別に電話やアンケート調査により家庭の状況や意向の確認を行ったうえで、認可外保育施設などの利用可能な施設等をご案内するとともに、国の新定義に基づき、待機児童数から除外となる事由に該当するか否かの判断を慎重に行った結果、「待機児ゼロ」となった。
【Q2】 2010年度以降、区は認可保育所を核とした保育施設に取り組むように舵を切っているが、そうした政策転換をしたのはなぜか。
【A2 子ども家庭担当部長】 かねてから区長が言っているとおり、都市部における保育需要が増加し続け待機児童の解消が重要課題となる中で、区保育室や認証保育所等の西武といった緊急避難的な対応ではなく、保育を必要とする保護者のニーズを踏まえた認可保育所を核とした整備こそが、根本的な課題解決につながるとの確固たる考えに基づき、鋭意取り組んでいる。
【Q3】 認可保育所を開設するのに2年が必要といわれてきた理由を確認する。また、2016年度「すぎなみ保育緊急事態宣言」を発し、区有地などを使い確実にスピード感を持って整備を進める緊急対策に踏み切ったが、これによってどのような変化があったのか。
【A3 子ども家庭担当部長】 区が認可保育所を整備するに当たっては一定規模以上の面積を有するなど様々な条件を満たす用地を確保してから、施設の設計や建築確認とうの手続きを経て工事を行うこととなるが、一般的にはこれらを通して約2年の期間が必要になる。
一方「「すぎなみ保育緊急事態宣言」を踏まえて実施した、平成28年度の「待機児童解消緊急対策」では、既存の区誘致を有効活用して民間事業者が施設整備を行うという、これまでに例のない手法を用いることで、当該年度内に整備を完了することができた。
こうした「緊急事態宣言」後の変化としては町内に置いては、区長を本部長とする「待機児童解消緊急対策本部」を設置して、組織横断的な役割分担のもと、職員一丸となり緊急対策に取り組んだことが挙げられる。また区民をはじめ、多くの保育事業者に、本区が「待機児ゼロの実現に向けて全力で取り組む自治体」であることの理解が広がったことも大きな変化の一つと考える。
【Q4】 2010年度以降、認可保育所数、定員数ともに倍増しているが、認可保育所整備率及び入所内定率はどのように改善されたのか。
【A4 子ども家庭担当部長】 認可保育所整備率は、2010年4月に24.7%であったものが、本年4月には42.4%と、この8年間で約18ポイント増加している。認可保育所等入所内定率については、2010年4月が62.7%、本年4月が74%と同じく8年間で約11ポイント増加している。
【Q5】 認可保育所に入所できなかった方は、認証保育所等の認可外保育施設を利用してきたと思うが、この間の認可外保育施設の入所状況の推移を伺う。
認可外保育施設の中には、家庭福祉員やグループ保育などその特性を見極めながら残していく保育施設として支援する必要があると思うが、区の見解を伺う。
【A5 子ども家庭担当部長】 認可外保育施設の入所者数は、「すぎなみ保育緊急事態」を宣言した平成28年4月時点で1,130名でしたが、認可保育所に整備を一層加速化したことで、翌年4月が866名、本年4月が363名と大きく減少している。このことから認可保育所入所見未定者の受け皿としての認可外保育施設の役割は薄れてきている実態にあると受け止めている。
こうした状況を踏まえ、この間区では各認可外保育施設の意向や個別事情に応じた認可化移行を支援するほか、家庭福祉員やグループ保育を含め、各施設がより一層その特長をいかして利用者に選択される施設運営を行っていくために相談や地用案内等の支援を行っている。今後とも、各認可外保育施設に寄り添った適切な支援等に努めていく。
【A 区長の追加答弁】 待機児問題でいろいろご指摘いただいた。
認可外施設に入所している隠れ待機児童と言われる子どもたちについてだが、杉並区は23区の中でも認可外保育施設を多く抱えている。なぜそうなったかと言えば、後手に回ったと言えるが、その時々の保育需要が増え認可が足りない時に、一人でも預け先を確保するという緊急対策をやってきた結果として、認可外施設を多く抱えることになった。その時々の状況の中でできる限りの救済をやっていくという姿勢のもとで、保育室や認証保育所が増えてきた。2,500人以上の認可外施設があったと記憶している。区長就任前1,000人、就任後1,500人の割合。窮状にあえぐ人を何とか救うためのベストの策としてやってきた。ただ、認可外施設の補助金のあり方については国でも議論になっており、国の検討会の座長を増田寛也顧問が務めていることもあり、たびたび意見交換している。
救済措置は自治体の政策判断で行ったことだ。最終的には首長判断で行ったことであるから、自らの自治体の政策判断でやったことについては自ら責任を取ることが自治自立の考え方だと思っている。したがって、それにどう対応していくかと言えば、自分たちで行った緊急対策が長引けば長引くほど財政の負荷がかかってくる構造となっているため、不足している認可保育所の整備をより加速化させて、住民ニーズに応えるのは必要なこと。緊急対策という政策の、きちっとした出口戦略というか後のフォローとして、今後も必要だと思っている。
もう一つ、関連して認可外施設をどうしていくかと言えば、認可の整備が促進していけば「認可に入れないから認可外」というニーズは減っていく。認可保育園の入園希望者の全員希望が叶う環境が整えば、「認可に入れないから認可外」というニーズは確実に減る。その時に現在認可外に行っている補助制度をどうしていくのか、大義名分と共に見直す必要が出てくるだろう。
一方で、認可では手が届かないサービス提供を求める区民ニーズもあるだろう。そういう意味で、認可外の事業者が「認可に入れないから受け入れる」という状況から独自のサービスを開拓していく、潜在的ニーズをどうくみ取っていくのかという努力も求められる。そういう中で、行政として、そういうサービスに対する補助金の大義名分があると認められればその時にはそういうこともあるだろう。刻々と変化する状況をとらえて戦略性をもって進めていくことが保育行政には必要となる。
<居住を支援する取り組みについて>
【Q1】 居住支援協議会のこれまでの具体的取り組み内容や成果、課題を伺う。
居住支援協議会は住宅確保要配慮者のための住いのあっせんだけでなく、入居前後の支援や空き家等を利活用する場合の問題点に解決なども検討すべきと考えるが、区の見解は。
居住支援協議会は住宅確保要配慮者の居住以外に抱えている複合的な課題を包括的に解決するために、福祉事務所やくらしのサポートステーションなどの関係部署との連携を構築することが不可欠と考えるが区の見解を問う。
今後の住宅用配慮者に対する居住支援に関する区の展望を伺う。
【A1 区長】 良好な「住宅都市」の形成をめざす杉並区において、誰もが安心して住み続けられる住環境を実現するために、居住支援協議会で行っている住宅確保要配慮者に対する支援は大変重要であると考える。昨年、住宅確保要配慮者へのアパートあっせんを行う不動産関係団体や、家賃債務保証を行う会社を増やし、支援体制の拡充を図った。また、空家等利活用モデル事業にも取り組み、子育て世代向けの賃貸住宅を1棟整備した。
課題としては入居前後の支援や空き家等を利活用する問題点の解決や、区の福祉分野等、関係部署との連携を強化することだととらえている。協議会の構成員から多くの意見があり、議論を深めながら具体的な方策について検討していく。
今後の展望については、これまでの取り組みに加え、障がい者専門部会を新たに発足させ、障がい者の住いのあり方について重点的に検討する。公民連携を強め、知恵を出し合いながら効果的な居住支援策に取り組んでいく。
【Q2】 住宅確保要配慮者の入居を拒まないアパートあっせん事業に協力する店舗数は現在どこまで進んでいるのか伺う。
【A2 都市整備部長】 アパートあっせん事業に協力する店舗数は、不動産関係団体が増えたことで、400件が530件に増えた。この中で特にこの事業の内容に賛同して積極的に情報提供に協力する不動産業者は26社から46社になっている。引き続き積極邸に協力してもらえる会社を増やすよう支援していく。
【Q3】 昨年度行った空家等利活用モデル事業の内容や完成状況について伺う。また、今年度もモデル事業を募集していくのか問う。
【A3 都市整備部長】 昨年、子育て世代を対象に支援しているNPO法人を事業者として選定し、子育て世帯向けの賃貸住宅2戸を整備し3月下旬に完成した。この事業者は入居者の状況に応じた就労や就学等のオーダーメイドの支援を行っていくと聞いている。現在入居者を募集中である。今後については居住支援協議会で再度実施する方向で検討している。
【Q4】 特に住宅確保要配慮者や空き家の所有者、空き家を活用したい事業者への周知を意識しつつ、区民全体への居住支援協議会の周知について伺う。
【A4 都市整備部長】 昨年度末、居住支援協議会の更なる周知のため、案内パンフレットをサイズや字を大きくしわかりやすく作り直した。今後、効果的な配布方法について検討し、支援の必要な方の目に確実に触れるよう努力する。
現在居住支援協議会のホームページはないが、協議会の構成員である民間団体のノウハウ等を活かし、情報を必要とする区民にわかりやすい、充実したホームページの開設に向けて支援していく。