決算特別委員会意見開陳  2014.10.10 そね文子

区議会生活者ネットワークといたしまして、決算特別委員会に付託された2013年度杉並区一般会計歳入歳出および各特別会計歳入歳出決算について意見を申し上げます。
当該年度は、自民党安倍政権が誕生後に打ち出した、生活保護費の切り下げ、原発ゼロ政策から再稼働への方向転換、民主主義を後退させる秘密保護法の強行採決での成立、さらに今年度に入って4月の消費増税、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認などが加わり、地域に暮らす私たちの生活にも大きな影響を与える出来事がありました。
なかでもオリンピックの東京招致については、原発事故の収束の見通しがたたず、ふるさとを追われた人たちがまだ多数いるなかで、首相が福島の原発から出る汚染水はコントロールされていると世界に向けて発信したことは、福島の人たちを深く失望させました。
国の経済状況を見てみますと、アベノミクスともてはやされた経済政策ですが、デフレ脱却・インフレは進みましたが、原因は円安による輸入品の物価高によるもので、製造業や市民の生活があっぱくされ、消費の拡大にはつながっていません。無駄な公共事業に加えオリンピック関連施設の建設による資材の高騰が震災からの復興の妨げになることが懸念されます。円安・株高の進行で利益を得たのは大企業や富裕層、賃金が上がったのは大企業の正規社員であり、多くの市民には円安による燃料費や輸入食品などの生活必需品の高騰に消費増税が追い打ちをかけています。進行する少子高齢化のなか、生活保護費の増大、子どもの貧困率が過去最悪を更新するなど格差が拡大し、財政上の課題は山積しています。
当区にあっては、杉並区基本構想・総合計画が二年目に入り、その取り組みを軌道に乗せる重要な年でした。区長の任期満了による改選の前に敢えて施設再編整備計画、施設使用料・手数料の見直しを進めたこと、保育施設やこれからますます需要が逼迫する特養の建設に精力的に取り組まれたことは、プロセスについて少々申し上げたいことはありますが、評価をするものです。
財政においては、対前年度比で特別区税は3億円の減となりましたが、全体の歳入は0.7%の増加となりました。収入未済額は3年連続で減少し100億円を下回っています。
持続可能な財政運営を行っていくためのルールの1つ、経常収支比率は、目標80%以内、に対し82.5%となりましたが、前年度よりはやや下回りました。公園の整備、保育施設の整備、高井戸第二小学校や大宮前体育館の改築経費など、区民生活にとって必要な投資と扶助費の増大により、経常的経費充当一般財源等は前年度比0.8%の増となっています。施設再編整備計画を進めるにあたり、先にも述べた資材高騰があることも含め、これからも健全な財政運営のための不断の努力が強く求められます。
さて2013年度決算について、限られた時間ではありましたが質疑を通して、また、いただいた資料をもとに施策の執行状況について調査を行った結果、一般会計並びにすべての会計決算案に対して認定すべきものと判断しました。
そのうえで以下、決算審査の締めくくりに当たり、時間の制約により述べられなかったことや、再確認をお願いしたいことなど、何点か絞って述べさせていただきます。

●施設再編整備計画について
現在「計画」となり、具体的に動き始めている区立施設再編整備計画ですが、計画策定までの一連のプロセスを振り返って一言申し上げます。
計画策定に至るまで、区は住民に向けて精力的に説明会を行い、また議会に対しても全員協議会を2回開いて説明をしてこられました。しかし、この間の施設再編整備に対する住民の方たちの受け止め方を見ますと、区報に出し、地域説明会、町会や各種団体、区民意見交換会も行い、HPにもアップしてパブコメを募集して来られましたが、関心が薄いというのが実感です。区民にお知らせをする手段と方法について検討が必要だと考えます。ただ、今回の関心の薄さは区だけの責任ではなく、私ども議会としても地域に出向き、住民の皆様と対話式の意見交換の機会をつくることもできたのでは、と思うところです。

以前、私どもへの答弁では、今後、個別の施設については、地域に入って対話型で住民の声を聞いていかれるとのことでした。いま、「個別施設に関する説明会」のお知らせが町会の回覧板で回っています。このように地域住民の参加を促す工夫をしていただいて、できるだけ多くの皆さんと一緒に地域の施設について話し合っていきたいと思います。

人口減少社会をテーマにしたお話を、元安孫子市長の福嶋浩彦さんから伺う機会がありました。
人口をはじめ、あらゆるものが拡大することを前提とした、これまでの社会のしくみと私たちの頭の中を根本的に切り替える必要があること。人口減少を「地域の質の向上」に結びつけるという発想を持つこと。公共施設の量は減らしながら機能は維持し、質を高めていくことが必要との内容でした。当区におきましても、地域の質を高める施設再編になることに、私どもも力を出していきたいと思います。

次に福祉施策について申し上げます。

●塾費用助成
2013年度から子どもたちの学習意欲をサポートする施策の1つとして始められたのが、被保護世帯の中学3年生に対する塾代助成です。

自分の環境を選べない子どもにとって、親の貧困は機会の不平等を否応なく子どもにもたらし、そこから抜け出す機会がすでに奪われているのが今の日本の現状です。私どもは、貧困の連鎖を断ち切るために有効な施策として期待しておりました。実際、この制度を該当者29名中19(確認)名が利用。年度途中での塾通いを断念することが回避され、全日制都立高校への進学率は前年度77%だったものが90%に向上した実績に、この施策の効果を確認したところです。

今委員会では支援の仕方について様々な意見がありましたが、被保護世帯の中学3年生が高校進学のために塾で学ぶことへの支援自体には、おおむね議会の賛意は得られているものと思われます。
多重債務の最大のきっかけは子どもの教育費だと言われています。被保護世帯に借金を背負わせることがないよう、また被保護世帯に入らないボーダーラインの世帯に対しても子どもが学ぶためのなんらかの支援が届くしくみをご検討いただくようお願いします。

加速化する高齢者、要介護者の増加と年々1兆円を超える規模で膨らむ医療と介護費への対策として自治体は「高齢者が地域で自立した生活を営めるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが24時間365日切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム」の実現に取組むことになり、当区においても3つのエリアをモデルとし、「地域包括ケアシステム」づくりに取組んでおられます。このケア体制づくりは地域資源とどれだけつながれるかが、ポイントです。今後、地域にある社会資源を調査し、地域の様々な主体のネットワーク組織と協働でケア体制を打ち立てていただくことを期待します。

在宅介護を支えるセーフティーネットとして特別養護老人ホームの増床計画、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホームの整備、そして保育対応型児童発達支援事業所の開所、待機児解消を図る保育施設等の整備など高齢者、障がい者、保育それぞれの分野に手厚く取り組んでこられている姿勢を評価するものです。

●HPVワクチン被害の対応について
HPVワクチン(通称子宮頸がんワクチン)の副反応被害についてとりあげました。
区が国に対して、早期の原因究明と副反応被害の救済措置を求める要望書を提出されたこと、区長が区内の被害者を見舞われ、一部ではありますが救済対応をとられたことに敬意を表します。
しかし、全国には副反応被害で未来が壊されてしまった少女たちが多数います。今後も原因究明に向けて、区としても接種者全員の調査を行うことを改めて求めます。

次に区民生活分野について申しあげます。
●労働を男女平等の視点で見直す
なかなか計画に乗らないのが男女平等の施策です。子育てに追われ経済的自立が難しいシングルマザーの半数は貧困状態にあります。彼女たちに寄り添う施策を打ち出してしっかりと進めていかれることをお願いします。

非正規雇用の拡大により増加する「ワーキングプア」の問題とともに、長時間残業が常態化した正規社員の働き方の問題も深刻です。現政権は「成長戦略」の中に「女性の活躍推進」を掲げ、女性管理職の登用を打ち出していますが、労働環境が整わない職場で子育てや介護を抱えた女性がその能力を充分に発揮することは困難です。家族のかたちや子どもがいる・いないに関わらず、だれもが自分らしく地域で暮らすためには施策のありかたを点検し、男女がお互いにその人権を尊重しつつ、責任を分かち合い、性別にかかわりなく、それぞれの個性と能力を十分に発揮し、あらゆる分野に対等に参画できる「男女平等参画社会の実現」を市民とともに目指していかれることを求めます。

● 就労支援センター
就労支援施策について申し上げます。当該年度、就労支援センターを利用して就労した人は153人、そのうち定着したと思われる人は142人と目標値を大きく超えました。若者が働けるようになり、支援の対象から納税者になることは本人はもちろん、社会にとっても大きな意味があります。今後さらに履歴書にブランクのある人の受け入れ先を増やし若者が安心、納得して働き、意欲や能力を十分に発揮できる社会となることを期待します。

●協働とまちづくり
協働とまちづくりへの市民参加について伺いました。地域に暮らす人たちが、自分も地域の役に立ちたい、あるいは自ら地域が必要とする事業を立ち上げたいとした時に、それを応援する区であってほしいと考えます。
区民の活動は環境、福祉、防災、食事づくり、サロンなど多種多様です。受け皿としても、区のそれぞれの所管課、NPO支援センター、地域大学などに渡ろうかと思いますが、区民の活動の芽を見つけ、育て、伸ばしていくしくみが必要だと考えています。
今後、所管課の窓口にいらした相談者を具体的な活動につなげていく旨の、ご答弁を頂きました。ぜひ、杉並らしい市民活動への支援のしくみができることに期待をします。

次に教育分野について申し揚げます。

●特別支援教育
特別な支援を必要とする子どもが、学校によっては支援を受けられていない現状があります。特別支援教育コーディネーター教員へのバックアップ体制を整えること、校長先生、副校長先生への特別支援教育への理解を早急に進め、学校によって支援に差が出ることのないよう強く求めます。

最後に環境分野について2つ申しあげます。

●ごみ減量施策
ごみ減量施策についてです。区は粗大ごみから金属を取だし、リサイクルする事業を開始しました。その成果もあって、区民ひとり当たりのごみの排出量が23区で最小になったことについて、今後も誇りをもって施策を進めていただきたいと思います。一方、2015年2月に東京ルールⅢが終了し、これまで店頭回収されたペットボトルを区が収集していましたが、その後は販売店に対応がまかされます。区は、「ペットボトルの店頭回収を廃止します」とお知らせを出していますが、拡大生産者責任を進める観点からこれを見直し、販売店が独自で回収を行うよう促していただくよう求めます。

●地域エネルギービジョン
2011年3月、東日本大震災により福島第一原子力発電所の事故が起きました。都会で暮らす私たちの暮らしは、原発を誘致した地方の犠牲の上に成り立っていることを改めて知ることになりました。この事故の教訓から私たちがめざすべきは、国のエネルギー政策の見直しをはじめとして、再生可能エネルギーの拡大と省エネの一層の推進、地域分散型エネルギー社会の構築です。

杉並区はいち早く、区民の暮らしの快適さと安全性を確保しつつ、環境にやさしいまちを創るため、区の地域特性を踏まえたエネルギー政策の基本的な方向をまとめた「杉並区地域エネルギービジョン-これからの杉並区のエネルギー政策の方向-」を策定したことは大いに評価するところです。今後は、総合計画、実行計画に落とし込まれた区立学校への太陽光発電器と蓄電池の設置などの目標を実現し、自立・分散型エネルギー社会の創出に歩みを進めることを期待します。
最後に安倍政権の原発再稼働方針、武器輸出3原則の撤廃、秘密保護法、集団的自衛権行使容認など民主主義を大きく後退させ、いのちを大事にしない政治状況で、今ほど市民が政治に関心を持つことが求められている時代はありません。私どもは、子どもたちの未来を守るために、これまで以上に、原発依存のエネルギー政策から脱却し、市民の自治を地域から進めることに取り組んでまいります。行財政運営においても環境面からも持続可能な社会を目指し、活動していくことを申し上げ、区議会生活者ネットワークの意見とします。

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