緊迫するシリア情勢によせて

9月6日現在、米オバマ大統領は議会の支持をとり次第シリアを限定的に攻撃すると表明しています。一方国連事務総長、英議会、中露首脳は直ちに攻撃することに賛成していません。シリアは国境を接するイスラエルと安定的な関係を保ってきており、他のアラブ諸国とイスラエルの関係をうまく調整してきました。米国が主張する化学兵器使用が仮に事実としても、この上戦争と破壊を重ねて犠牲をふやすべきではありません。

 戦っている双方に停戦と和平交渉を呼びかけ、粘り強く説得する以外ないでしょう。米国が軍事介入すると社会機能が致命的に破壊され、医療も教育もインフラも失われることは、イラクとアフガニスタンで実証されたばかりです。

 アルキメデスの時代、すでにシリア王国は一流の都市国家でした。エジプトやローマとしのぎをけずっていたのです。12世紀には十字軍がダマスカスを包囲しますが、ついには敗走しました。ダマスカスは7世紀ウマイヤ王朝の首都で当時の先進国でした。中世欧州勢力が深刻に反省して十字軍の侵攻を断念した歴史を思い起こすと、米国が中東で武力介入を強行することは賢明ではありません。

 古代中世の都市文明の祖先のひとつであるシリアを、はるかに後輩にあたる米国は、敬意と対話で向き合ってほしいと思います。米国が軍事介入して幸せになった国はありません。いかなる理由でも軍事行動をとってはいけない、という忠告に耳を傾けてほしいと考えます。

                                                                                                    (杉並ネット会員 野口鎮夫)