第1回定例会 予算特別委員会意見開陳 2013.3.21 そね文子

予算特別委員会の最終日にあたり、生活者ネット・みどりの未来の意見を申し述べます。 

今回の予算特別委員会では、2013年度各会計予算案の他に16本の関連議案が同時に付託されました。限られた時間内で十分に質疑ができませんでしたので、以下、時間の制約により述べられなかったことを中心に申し上げます。

東日本大震災から2年がたちましたが、東京電力福島第一原発事故の収束は遠く、故郷を奪われたままの人たちが16万人もいる中で、昨年12月に誕生した安倍政権は、原発の再稼動や新増設に舵を切ろうとしています。憲法改定、生活保護の切り下げに加え、TPP参加交渉入りでは、食の安全や国民皆保険制度を廃止して外国の生命保険会社との契約に導こうとするのではないかという強い懸念があります。さらに地方自治体にとっては入札の際の要領などを、高度の正確さを要求される英語で用意せねばならないことになります。安倍政権は「命を大事にしない」方向へ向かっていると言わざるをえません。いま、政治が向かうべきは人の命や暮らしを第一に考え、被災地の一刻も早い復興と、持続可能な社会への転換を実現することだと考えます。 

アベノミクスによる経済効果を評価する声もありますが、円安による灯油や石油製品、輸入食品など、生活必需品の価格上昇、さらに4月からは電力十社と大手都市ガス4社も一斉値上げ、小麦も9.7%の引き上げになるなど暮らしの現場はこれから影響が大きくなっていくものと思われます。とくに低所得者層の家計が直撃されることを危惧します。政府は各企業に賃金アップを要請していますが、それが非正規雇用にまで適用されない限り格差は広がるばかりで、国民全体の幸福にはつながるものではありません。

当区の財政状況を見ますと基金残高が年々減少してきており、来年度予算案ではその傾向がさらに顕著になっています。財政の健全化と持続可能な財政経営の確保が謳われ、余剰金の積立、繰り上げ償還による公債費の軽減など、5つのルールが示されていますが、これらのルールが厳格に遵守されるよう議会として監視を強めていきたいと思います。

今予算審議では、生活保護世帯の子どもに対する法外援護について議論が交わされましたが、自分の環境を選べない子どもにとって、親の貧困は機会の不平等を否応なく子どもにもたらし、そこから抜け出す機会がすでに奪われているのが今の日本の現状です。当区が来年度「次世代に夢と希望を拓く予算」として、塾代を助成しようとなさるのは、貧困の現場を知ってこそのことであり、貧困の連鎖を断ち切るために有効な施策と期待しています。発達障がいの子どもの支援拡充などとも併せ、困難な状況に置かれた子どもたちに寄り添った取組みを評価したいと思います。

なお、日本はOECD諸国の中で、所得の再分配機能が働いていない特殊な国であることを、人口問題研究所の阿部彩さんは、2008年、岩波新書『子どもの貧困』の中で、私たちに教えてくれました。若干説明させていただきますと、もともとの収入が示す子どもの相対的貧困率と、その収入から税や社会保険料を引いて給付を加え手元に残った金額を比べると、再分配後の貧困率の方がむしろ高い、再分配により貧困の度合いがより進むという、ありえない事実があるのです。その原因は、少ない収入であっても高い社会保険料を納めねばならない、また子どもへの給付が非常に少ないという、日本の税と社会保険の制度にあります。いびつな再分配の状況は、最近は若干改善されているものの、十分とはいえません。そのような状況にあって、再度の政権交代により子ども手当の復活が望めないいま、子どもの貧困の連鎖を止めるための施策を、自治体が積極的に用意することは、まさに住民の福祉の向上という役目を果たすものと考えます。

さて、今年も保育園の入園希望者は増加し、多くの保護者から保育園増設を求める声が上がりました。それを受けて、区は臨時的措置を決定し、迅速に対応されたことを評価します。ただし、今後も保育園の需要はさらに増加することが予測されます。土地の確保が課題となっていますが、来年までに廃園が決定している私立幼稚園3園の土地や建物を利用させていただくことも検討を進めていただきたいと考えます。今後とも、可能な限り区内の資源を生かして、保育園の整備を進めることを求めます。

南伊豆健康学園跡地に特別養護老人ホームを建設する構想については、遠く離れた土地に区が終の住まいをもつことの意味を、広範な視野と多角的な視点からとらえ、課題を整理して検討する必要があると思います。国の研究チームには福祉や医療・介護だけでなく都市計画、地方自治の専門家が参加しているとのことであり、報告が待たれます。ただ、それが区の事業にどう結びつくにせよ、この計画は、ひとつの施設建設をどうするかというだけでない、当該地域におけるまちづくりに寄与する、という視点をもつことが必要であると考えます。 

高齢化が進行する社会は、年を重ねることが怖くない、楽しく年を取れる社会にしていかなくてはなりません。

施設再編整備が大きな課題となっていますが、昨年10月の区民アンケートによれば、「将来にわたって優先的に維持すべき区立施設は何か」という設問で、第1位が保育園、図書館は僅差の2位で、この2者が断トツの高さでした。杉並区民にとって図書館への評価がそれほどに高いことを、区はしっかりと受け止め、これから増え続ける高齢者の知的娯楽と好奇心を満足させるためにも、図書館の充実に努めていただきたいと思います。

杉並区地域エネルギービジョン策定に向けた中間まとめの報告があり、昨年の予算特別委員会で私たち会派から提案した市民出資型ファンドが採り入れられました。太陽光発電の助成を受けられるのは一部の区民ですが、自分にあった出資をすることで再生可能エネルギーを促進し、利益も得られ、多くの区民が参加しやすい仕組みと捉えられて採用したとの報告をうれしく思いました。原発依存のエネルギー政策から脱却するため、省エネルギーを基本に再生可能エネルギーの普及と拡大、地産地消をすすめることに会派として主張してきた立場からこれには大いに期待しています。

今委員会では、女性の視点、女性の社会参画、男女平等などが多く議論されました。子宮頸がんワクチンについても、ジェンダーバイアスの視点から見ると、これまで採り上げてきた多くの問題点とまた違った意味で、根の深い問題があることを指摘しなければなりません。

昨年6月議会の一般質問で私が述べたように、子宮頸がんを引き起こすとされるヒトパピローマウィルスはどこにでも存在するありふれたもので、男性にもあり、男女間で感染しますから、根絶するためには本来、男女両方に打たなければなりません。ワクチンの開発者であるドイツのツアハウゼン氏のように、若い男性は女性よりも性的に活発なのだから男性に打ったほうが予防効果は高いかもしれない、という意見もあるのにもかかわらず、女性だけに接種して、女性だけが副反応に苦しまなければならないのがいまの状況です。

子宮頸がんワクチンは他の予防接種に比べて副反応の出現率が高く、導入されたときに11万人に3人と予測されていましたが実際は15.4人と5倍以上に上ります。厚生労働省には昨年末までに984件の副反被害の報告が寄せられていますが、必要とされる追跡調査は行われず被害者は放置されているのが現状です。質疑を通して、来年度、法定接種になっても副反応が出た時の救済制度が未整備であることが明らかになりました。現在定期接種1類については数100万人が予防接種をうけていますが、副反応の報告は義務とされておらず、何人の副反応があるのかもわからない。救済制度に申請したのは74名で認定されたのは57名。大変少ないと思いますが、それをどう評価するかの材料さえないのが現状です。

委員会でも多くの問題点を指摘しましたが、子宮頸がんワクチン接種事業はぜひ見直すべきと、改めて申し上げます。

継続する場合は副反応の出現率が高いこと、区内で重篤な副反応被害が出たこと、救済制度が充分ではないことをワクチン接種対象者と保護者に情報提供することと併せて、接種者への後追い調査、接種後に異常があった場合や接種に不安をもつ人のための相談体制の整備を求めます。

今回、子宮頸がんワクチンの問題がこれほど大きくメディアで報道されたのは、重い副反応症状を抱えたお嬢さんが区内にいらっしゃったことがわかったからですが、区にとってはすでによくご存じのことでした。区は当事者に対しては親身に対応された一方で、議会に対しては極めて不誠実な態度をとり続けてこられました。答弁は訂正し謝罪していただきましたが、私が指摘するまで情報は区のごく一部でしか共有されてこなかったことが、私たちの調査により明らかになりました。ワクチン接種が法定化されようとする重要な時期であるだけに、区の猛省を求めるものです。今後は副反応の報告を薬剤によるもの、針刺しによるものの区別なく、また重篤、非重篤に関わらず、保健福祉委員会で報告することを求めます。

以上、委員会での質疑を通し、また、資料をもとに調査・検討した結果、一般会計ならびにすべての特別会計予算案、および本委員会に付託されたすべての条例案について、小松久子、市橋綾子、そね文子、は賛成すべきと判断いたします。

なお、奥山たえこ、すぐろ奈緒は、一般会計及び特別会計予算議案のすべてに反対し、その他の議案には賛成とします。

反対の主な理由として、3点挙げられています。1点目は荻外荘の買入れについてです。地元の要望があったとのことですが、ささやかな生産緑地の購入さえほとんど行っていない現状において、国からの助成があるにせよ、31億円という大きな買い物の必然性が見出せないこと。限られた予算の配分で優先すべきは、不燃化が急がれる高円寺・阿佐谷の木造密集地域における土地の確保と高齢者、障害者施設や保育園のための土地の確保と考えることです。

 近衛文麿という人物の戦争責任も考慮すべきであり、かつて日本がアメリカ合衆国と戦争したことを知らない世代がいる現在、今後予定しているまちづくり懇談会には、教育委員会の参加が必要としています。

 2点目、子宮頸がんワクチン接種については、再度検証を行い、安全性が確認されるまでは接種を中止すべきとしています。

 3点目は男女共同参画についてです。5年ぶりに男女共同参画行動計画が改訂されましたが、そのスタートとなる1年目の予算額は、昨年の3分の1まで減額されています。男女平等推進センターの利用者はわずか2.5%、75%の区民が存在すら知らないという状況にあって、本気で事業の活性化をめざすには、不十分としています。

 さて、国会で、昨年621日に超党派の議員の提案で「原発事故子ども・被災者支援法」が成立しましたが、この具体策がまだ定まっていない状況です。被曝が心配される地域の子どもが、そこから移住する費用が補償され、またその地域に留まる子どもには医療・就学・食の安全・放射線量の低減・保養が補償されるよう、当区議会として国に求める意見書提出は議運理事会では結果的に採用されませんでしたが、各会派がそれぞれ独自に取り組む意欲を表明されたので、私たちもあきらめず求めて行きたいと思います。

 私どもは、これからも脱原発、いのちと暮らしが大切にされる、環境・福祉が優先される持続可能な社会、そして次代をになう子どもの権利が保障される社会の実現を目指して行くことを申し上げ意見とします。