第2回定例会一般質問  2012.6.8 そね文子

私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、子宮頸がん予防ワクチンの接種の課題と今後のあり方について、質問します。



 今回この問題を採りあげることにしたきっかけは、中学1年の娘を持つ友人達が、子宮頸がんの予防接種について、受けさせるべきかどうか悩んでいたことです。子宮頸がんについて、また予防接種について、調べていくにつれさまざまな課題のあることがわかり、その解決策として、今後のあり方について考えたいと思います。



 最初に、子宮頸がんという病気について触れておきます。


いま日本における死亡原因の第1位はガンで、3人に1人はガンで亡くなる時代です。2009年度にガンで亡くなった人の数は344千人、このうち子宮頸がんは2500人で、全体の0.7%ほどですが、女性だけに限ってみれば、ガンで亡くなった137,753人の中では1.8%をしめています。最近の傾向では20代から40代前半の罹患率が上昇しており、その年代のガンの死亡率のトップとなっています。



 長いこと子宮頸がんは、子宮体がんとまとめて子宮がんという言葉が使われ、この2つを分けて考えることはされてきませんでした。子宮頸がんという言葉が聞かれるようになったのは2010年春以降のことです。子宮頸がんはウィルスが原因で発症するがんで、予防接種で防げるがんとして子宮体がんとは分けて考える必要が出てきたのです。日本でその予防ワクチンの製造販売が承認されたのが2009年秋のことでした。



 子宮頸がんは子宮頸部にウィルスが長期感染して起こるとされています。このウィルスはヒトパピローマウィルス(HPVとします)というごくありふれたウィルスで200種類ぐらいが確認されていますが、がんの原因となるのはその中の15種類ほどとされています。このウィルスは性交渉によって感染し、性体験のある女性の80%が感染したことがあるといわれますが、そのほとんどがなんの自覚症状も無いまま、がんに進行することなく自身の免疫によって自然に治っています。HPVに感染した人の中でも子宮頸がんになる人は0.1から0.15%しかいません。ウィルス感染してからがんの前段階である前がん病変になるまで数年、その後子宮頸がんになるまでには十数年の時間がかかります。



 子宮頸がんワクチンは、15種類のウィルスの中でもとくにがんになる確率が高い16型と18型の感染を防ぐとされるワクチンです。


これまでのワクチンは、病原となるウィルスの力を弱めたものを体内にいれることで弱い感染を起こし、体の中にその免疫を持たせるものでした。これに対して子宮頸がんワクチンは、遺伝子組み換え技術をつかってウィルスの抜け殻を作り、それを子宮頸部に付着させておくことによって、ウィルスの感染を防ぐ、まったく新しいタイプのワクチンです。



 2010年の春には女優の仁科明子さんはじめ著名な芸能人や医療従事者が中心となって子宮頸がんワクチンの公費助成を呼びかけるキャンペーンが始まり、同じ年の10月にはワクチンの助成に国の予算が付くことが決まりました。さらに先日、523日には、厚労省が子宮頸がん、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌に対し2013年度から定期接種にする方針を固めた、との報道がありました。これまで2012年度までの時限措置として公的助成が決まっていたのを、2013年度からは継続的に国が補助して行くということです。わずか2年ほどの間に、子宮頸がんワクチンを巡って大きな動きがつくられてきたことになります。



 前置きが長くなりましたが、そこで質問いたします。


 どんな予防接種も、予防接種法という法律にもとづいて実施されています。質問の1点目です。この予防接種法とはどういう法律で、今回の法改正で子宮頸がんはどのように位置づけられたのでしょうか。また、今回の国の法改正は区の政策にどのように影響するのかお示しください。



 杉並区が独自の事業としていち早く子宮頸がんワクチン接種を決めたのは、国の助成が始まる前のことです。20107月からのスタートとして予算計上しましたが、当時の導入の理由と経緯はなんだったのか、質問の2点目としてうかがいます。


 さらに、子宮頸がん予防ワクチンにかかる今年度の区の予算はいくらか。3点目としてうかがっておきます。


 ワクチンの歴史を見てみると、種痘の発明で天然痘を根絶したような輝かしい成果もあれば、ワクチン接種には副作用がつきものでもありました。病気の予防のために健康な子どもに対して行った注射が原因で、重い病気にかかってしまう例が常にあったのです。最近、日本で起きた例としては、はしか、おたふく風邪、風疹の三種混合ワクチンMMRの接種が1989年から始まりましたが、接種後の発熱、頭痛、嘔吐などの多発が問題になり93年には中止されたことがあげられます。子宮頸がんについてもさまざまな副作用の報告がされ、とくに失神が重い症状として報告されています。


 そこで伺います。


子宮頸がんワクチン接種の副作用について、区はどのようにお考えか、見解をうかがいます。区で予防接種が始まってから、副作用の報告はあったのでしょうか。もしあったとすればそれはどんな副作用だったのでしょうか。併せてうかがいます。


 冒頭で述べた、私の友人が心配していたのも、突然出てきた新しい薬が本当にがんに効くのか、副作用はないのかということでした。


実際、日本消費者連盟の消費者レポートでは子宮頸がんワクチンには効果を増強するための免疫増強剤が添加されていて、この免疫増強剤に新しい成分が使われており、それによる副作用については、まったくわかっていないところを問題視する声が掲載されています。


このように、子宮頸がんワクチンについても、その効果や副反応に関して必ずしも肯定的な意見だけでないことを知っておくべきだと思います。



 WHO、世界保健機関は20094月にHPVワクチンに対する考え方を発表しました。



その中の一文を紹介します。

HPVワクチンは、子宮頸がんと他のHPV関連疾患を予防する全体戦略の中の一環として導入されなければならない。この戦略には、どうすればHPV感染を減らせるかについての教育や前がん病変やがんの診断と治療についての情報提供が含まれる。またHPVワクチンの導入が効果的な検診システムへの予算投入を変更したり、むしばんだりしてはならない。


HPVワクチンプログラムが導入されたらどこの何歳の誰が受けたかを記録し長期に渡って保存すべきだ。新しいワクチンを導入するときは安全性モニターをしなければならない。子宮頸がんに対するワクチンの効果を計るには何十年もかかるだろう。


 引用はここまでです。このようにWHOは子宮頸がん予防には検診、ワクチンの導入、どうすれば感染を減らせるかについての教育、新しいワクチンのモニタリングというトータルな戦略が必要だと述べています。このワクチンは接種されるようになってからまだ10年ほどしか時間がたっておらず、少なくともあと10年たたないと、本当に予防接種の効果があったかどうかは証明されないということです。


 そこで質問します。


区では、ワクチン接種対象者には子宮頸がんのこと、またワクチンについてどういう説明がされているのでしょうか。おうかがいします。



 WHOが示したように、予防接種を受ける当人が、子宮頸がんはどういう病気で、ワクチンはどういう効果が期待されるのか理解して受けるべきと考えます。子宮頸がんは性交渉によって感染しますから、それには性教育をきちんと受け、性感染症について知ることが不可欠です。杉並区で助成している接種の対象は現在中学校1年から高校2年生までとされ、学校で性教育が行われるのが中学3年時ということを考えると家庭での話し合いを助ける取り組みが必要だと考えます。


しかし、日本には性のことをタブーにしてきた文化があり、親子で性の話ができるという家族は多くありません。

友人達が3歳から小学1年生までの子どもとお母さんを対象に“親子で聴く性教育”楽しく知る心とからだ、という企画をしたことがありました。講師として招かれた助産師さんは子ども達にわかりやすく、体の大切な部分をきれいにしておくこと、赤ちゃんがどうやって生まれてくるか、人形を使ってわかりやすく教え、参加したお母さんは出産を思い返し幸せな気持ちになったそうです。性教育は何歳からでもその年齢にあったやり方でできるのだと知りました。


区は、親子が性のことを話せるきっかけになる、また性教育とはどんなものなのか親が知るための勉強会や講演会を開催したり、そのようなことに取り組む活動団体を応援していただけるよう要望するもので

 

さて、先ほど述べたように、子宮頸がんのワクチンはがんを起こす割合の高い16型と18型に対応したものですが、この2つの型が原因でがんになる割合は日本では65%と言われ、残る35%の、16型と18型以外についてはがんの予防効果はありません。ということは、予防接種を受けても検診を受けることが不可欠なのです。



 子宮頸がんは非常に進行が遅くウィルスに感染してからガンに進行するのに十数年がかかりますから、定期的に検診を受けることにより早期発見され、完治する確立が非常に高く、その後出産もできるそうです。



 このように、子宮頸がんによる死亡リスクを減らすために1番重要なことは、検診の受診率を上げることだと考えます。


国における現在の受診率は2割といわれます。年代別に見ると、20代が3%、30代が10%となっていて、発症率が高い世代の受診率はさらに低いことがわかります。


ここで質問です。杉並区での受診者の年齢別内訳はどうなっているでしょうか、うかがいます。



 いま求められているのは若い世帯の受診率の向上ですが、区ではそのために妊産婦検診の時期に子宮頸がん検診を同時実施するなど様々な努力をされていることを評価しています。


日本のワクチン接種の対象年齢については、子宮頸がん征圧をめざす専門家会議が2008年に設立され、予防接種は性体験を持つ前にするのが最も効果的であるという理由で、11歳から14歳ぐらいまでの間に受けさせようと提言しています。しかし11歳はまだ性教育を受けていない年齢です。フランスで14歳から15歳に接種時期を設定しているのは、本人がワクチンを必要と理解できるような年齢になるまで待つという考え方です。日本の、子どもが理解するというよりは、お母さんに理解してもらって進めたらいいとする考え方とは大きな違いです。



 自分で考えるより、親の意思で決めてしまうようなやり方には、性の問題がきわめて個人的なことであるだけに、違和感をおぼえます。


 大人は子どもに対するとき、第一に個人として尊重すべきであり、正しく情報を知らせ、自分の体のことを自分で考え、自分で決めることができるように援助することが重要と考えます。自分の体に入れるものに対して、また病気を予防するために、人任せにせず自分で考える姿勢をもつことが将来自分を守ることにつながるのだと思います。HPVの感染に対しては自身の免疫力を強化しておくことも重要です。そして免疫力をあげることはすべての病気に対して予防効果があり、そのためにはバランスのとれた食事や生活習慣を身に付けることであり、予防接種や健診よりも優先される方法なのです。


 最後にひとつ、子宮頸がんワクチンの課題として、女性の負担がおおきいということを指摘したいと思います。HPVは男女間で感染します。このウィルスを根絶するためには男女両方に打たなければならないのです。今女性だけに接種しているのは男女両方に打つより費用が安く済むという理由です。このワクチンの開発者のハラルド・ツアハウゼン博士は20115月に来日し、参議院議員会館で講演した際に「若い男性は女性より性的に活発なのだから、男性に接種したほうが予防効果が高いかもしれない」と話したそうです。子宮頸がんを防ぐ効果があるかどうか見るためには女性にワクチンを接種する必要がありますが、効果を示すデータが集った後は女性に限る必要はないのです。今、女性は新しい薬の実験台になっているという見方もできます。ワクチン助成だけで終らせるのではなく、男女がお互いを尊重するための性教育、さらなる受診率の向上、免疫力を上げるためのバランスのよい食事や規則正しくストレスの少ない生活習慣の啓発など、知恵を出し合い取り組んで行くことをお願いして私の質問を終ります。