第2回定例会一般質問   2011.6.15 小松久子

 <新基本構想について><新しい公共支援事業について>

 

私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、新基本構想について、新しい公共支援事業について、以上2点、質問いたします。

 

杉並区の10年後のビジョンを描く新基本構想策定に向けたスケジュールが進行中です。基本構想審議会では、現在3つの部会と、学識経験者による調整部会での議論が併行されているかと思います。基本構想は、杉並区における行政計画の最上位に位置するものですから、策定途上にあるいま、その進捗状況を確認したいと考え、以下、質問いたします。

 

生活者ネットワークは基本構想づくりに関して、かねてよりそのプロセスに思い切った市民参加を、と求め、具体的な提案もしてまいりました。そのひとつが、今年2月の第1回定例会一般質問で「サイレント・マジョリティ―の声を引き出す有効な手法」として提案した市民討議会「プラーヌンクスツェレ」です。

 

このたび64日、区が、まさにこの手法を採用して「10年後の杉並を考える意見交換会」を開催されたことは、提案した者として区の挑戦を評価したいと思います。

 

そこで、質問の1点目として、あらためてこの意見交換会開催の目的と、この手法を使った経緯をおうかがいします。

 

先の議会質問でも述べましたが、市民討議会の特徴は、無作為抽出した市民に呼びかけて参加者を募り、当日は小グループに分かれて議論する、実際に参加した人には時間と労力への対価として報酬を支払う、などというものですが、当区ではどのように実施されたのでしょうか。64日の会での参加者の人数や属性、年代などの状況、実施の概要は実際どうだったのか、うかがいます。

 

私も、基本構想審議会委員の一人として、また市民討議会の実践に強く関心を寄せる者として、期待をもって、短時間でしたが傍聴いたしました。まず感じたのは、参加者の中に一見して若い世代の方が多い、ということでした。また45人のグループに分かれての議論が、その日初対面同士とは思えないほど闊達に、しかも楽しそうに盛り上がっていたこと、さらに各グループの議論のまとめを報告発表する段階で、いずれも立派にプレゼンテーションがされていたことなどに感心いたしました。

 

また同時に、議論を引き出すための情報提供として区が行った区政の概要説明については、わずか15分という短時間だっただけに難しさも感じました。15分間で何をどう語るかで、次に続く議論を実質的には誘導することになるため、ほかの説明だったらどのような議論が展開されたのか、研究の余地があると感じました。区にとっても、貴重な経験になったといえるのではないでしょうか。

 

主催者である区は、実施なさってみて、どのような感想をおもちになったでしょうか。まだ報告をまとめられている途中かと思いますが、現段階で、成果と課題は何だとお思いでしょうか。また参加者からはどのような意見が出されているか、併せておたずねします。

 

そして、この日各グループからまとめとして出された意見が今後、基本構想にどのように生かされるのか、参加者の多くが関心をもって見ているはずです。区のお考えをうかがいます。

 

市民討議会「プラーヌンクスツェレ」は、すでにこれまで北海道から鹿児島まで全国各地で実践されており、都内でも八王子、立川、三鷹などの各市や千代田、新宿、港、墨田区などで実施されました。一度開催した後テーマを変えて3回以上実施する自治体は全国で17に上っています。杉並の場合は今回、基本構想に向けた意見聴取の位置づけだったと思いますが、他自治体の例を見ますと、とり上げられるテーマはいろいろです。千代田区、墨田区、江東区、葛飾区などでは「学校選択に関して」というテーマで実施され、また三鷹市の市民討議会は「東京外かく環状中央ジャンクション」のテーマで開かれるなど、さまざまな政策課題がとりあげられています。自治体によっては、これまで一般的に行われてきたアンケート調査を補完しうるものとしても、採用されているように思います。

 

市民参加の手法としてこれまで一般的に採用されてきた公募区民と違って、無作為抽出の人たちはテーマに対して利害関係をもたないこと、その日に初対面同士であることが、自由な話し合いの空気を生むのだと思います。プラーヌンクスツェレは合意形成しやすいと言われるのもなるほどと思いました。

 

当区でも、今後、ある課題について区民意見を聴取する場合に、この手法が使えるのではないでしょうか。区はその意向があるかどうか、おうかがいします。

 

ただ問題は、そこで出された意見をどのように生かすかということです。市民討議会を実施した自治体では、どこも「議論の結果を政策決定にどう反映させるのか」という課題に直面するようです。当区はいかがでしょうか、お考えをうかがいます。

 

市民討議会だけではありません。昨年秋に実施した区民アンケートの結果や、このたび募集し68日に締め切られた団体意見、審議会での議論など、さまざまな意見が寄せられています。これらをどのように生かしていくお考えでしょうか。

 

区民の基本構想に寄せる意見は多様であり、それらをすべて反映させることは不可能です。ただ、今後策定する分野ごとの計画に落とし込むことは可能であり、そうすべきです。いかがか、おたずねします。

 

この項の質問の最後に、子ども・若者の意見聴取についてうかがいます。若者の意見ということでは、審議会の中で報告された「転入者・転出者に向けたアンケート」が、回答者947人中、30代以下が約8割、40代以下では9割以上という結果になり、それに相当するとみなすことが可能です。

 

しかし一方、18歳未満の子どもの意見については、2月議会の質問でうかがったとき「今後、検討していく」とのご答弁でしたが、具体策が示されていません。子どもは地域に欠かせない構成メンバーなのであり、子どもの意見表明は子どもの権利条約に保障された主要な権利のひとつです。

 

ただ、子どもの率直な意見を引き出すには相応の工夫が必要です。大人の側から子どもの中に入っていくことが重要で、しかもその大人は子どもが信頼する、子どもの目線に立てる人でなければなりません。新基本構想の策定にあたって、ぜひ区にはトライしていただきたいと思います。

どのように実施されるお考えでしょうか。

 

うかがって、次の項目「新しい公共支援事業について」、質問いたします。

 

このたび内閣府が推進する「新しい公共支援事業」のための基金が東京都に設置され、2年間の時限事業費として都に57,400万円交付されました。都ではこの事業を行うにあたり基本方針の検討やモデル事業の選定などを行う運営委員会を設置し、5月に第1回会議を開催、自治体担当者に向けた説明会も開催されました。 

 

内閣府の「新しい公共支援事業の実施に関するガイドライン」によれば、「新しい公共」とは「人々の支え合いと活気のある社会」をつくるため、「市民団体、企業、政府等がそれぞれの役割を持って当事者として参加し、協働する場」とされ、また「従来は官が独占してきた領域を公(おおやけ)に開いたり、官だけでは実施できなかった領域を官民協働で担ったりするなど、市民、NPO、企業等などが公的な財やサービスの提供に関わっていくという考え方」とも記されています。

 

この考え方が、新しい公共支援事業のベースになっています。従来の、補助金をばらまくだけの施策と異なり、NPO等と行政がともに地域の課題を解決していこうとする姿勢が明確に示されています。その意味で、これまでになかった施策に期待を寄せる立場から、以下、質問いたします。

 

東京都は、支援事業の内容として、1.NPO等の活動基盤整備のための支援事業、2.寄附募集支援事業、3.融資利用の円滑化のための支援事業、4.新しい公共の場づくりのためのモデル事業、以上4つのタイプの事業を実施するとし、このうち4番目のモデル事業には、基金の半分にあたる28,700万円をあてる意向を示しています。

 

区は、モデル事業をすすめる上で、現場を抱える自治体として都につなぐ業務を担うことになります。杉並区はこれまで協働をすすめてきた区です。その立場から、この事業をどのようにとらえておられるでしょうか。また、実際どのように進めていかれるのでしょうか。2年の時限事業といい、いますでに6月ですから、関心のありそうなNPOや企業などに早く情報提供しなければ企画や準備にも時間がかかるでしょうし、実際に活動できる期間がさらに短くなってしまい、成果が出せないうちに交付金が打ち切られてしまうことになりかねません。手続きが急がれます。

 

東久留米市で先日、都の担当者を招いて事業説明会が開かれ、私も参加してきましたが、市内で活動するNPOの方から活発に質疑が出されていました。当区での今後のスケジュールはどうされるのか。併せてうかがいます。

 

ところで「新しい公共」という概念はさほど新しいものではなく、1990年代からすでに議論が重ねられ、実践もされてきていました。ただ、国がリードする形で具体化への歩みが始まったのは、鳩山前首相が所信表明演説で述べたことからでした。内閣府に「新しい公共円」卓会議が設置され、杉並区では昨年、「新しい公共」を公約に掲げた田中区長の誕生により、議会でさかんにこの言葉をめぐって質疑応答が交わされました。

 

区長の公約には「杉並版『新しい公共』の発想で区民のみなさまとの協働計画を策定」とあります。私も以前、議会質問で「新しい公共」の理念についてうかがいましたが、そのとき、区の「新しい公共」と円卓会議の「新しい公共」は同様のもの、と答弁されました。であるとすれば、杉並版「新しい公共」とは何でしょうか。杉並版「事業仕分け」は昨年実施されたのでわかりましたが、杉並版「新しい公共」の発想とはどんな発想なのか、語られなかったように思います。また協働計画とはどのようなことか。さらに、策定のスケジュールについても、うかがいます。

 

さて、「新しい公共支援事業」のほうに話を戻します。都の意向では、先ほど述べたように、提案されている4つの事業のうち「新しい公共の場づくりのためのモデル事業」がメインになるということです。そこで、この概要についておうかがいします。事例を挙げてご説明ください。

 

新しい公共支援事業は、官と民とが役割を分担し連携する必要があることから、区の「協働」に対する認識が問われるものになると考えます。自治基本条例に「協働」をうたい、協働の推進のためのガイドラインを策定するなど、杉並区が「協働」ということについて他自治体に先駆けて取り組んできたことは評価したいと思います。

 

しかし、この間の経過の中で、市民活動団体などから区の「協働」に対する認識に不満があったのは事実で、それは区の所管や職員の中でも協働ということに対する認識がさまざまであったこと、また、大企業への民間委託から小さな任意団体との協力関係までが十把ひとからげに「協働」の実績としてカウントされることへの違和感もそうでした。

 

新しい公共支援事業の実践を通して区とNPO等との対等な関係を築くことが望ましいと考えます。見解をうかがいます。

 

また、この事業を推進していくことは区政全体にわたる政策的な課題でもあり、政策経営部の企画課が所管するべきものと考えます。いかがか、おうかがいします。

 

昨日、私はすぎなみNPO支援センターが開催した「新しい公共を考える―分権時代の協働のまちづくり―」と題する講演会に参加してまいりました。行政とNPO・市民活動の協働がこれからの地域社会を活気づかせていくためのヒントを得られるような内容だったと思います。区の職員もかなり参加されていましたので、今後の行政運営に生かしていただけるのではと期待しています。

 

昨年秋の5千人から回答のあった区民アンケートで、「協働の地域社会づくり」についての問いに対し「参加したい」と答えた人が8割を超えました。今年、311日の大震災を経験した後では、もし同じ質問をしたなら「コミュニティの再生」や「地域の人同士のつながり」を願ってもっと多くの人が肯定的な回答を寄せるのではないでしょうか。

 

震災後の地域には、人との絆を編み直したいと考える人や、社会的な活動をもっと充実させたいと考えるNPO団体が確実に増えている、という実感があります。区民のこのような意思を生かすことは市民自治をすすめる原動力になるものです。「新しい公共」は区長の公約であり、また区にとっては「協働」の実践体験を積むためにも、積極的な取り組みが望まれます。見解をうかがって、私の質問を終わります。