第一回定例会一般質問 2.16 小松久子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、「平成22年度 予算の編成方針とその概要」について、スクールソーシャルワークについて、そして食品表示について、以上3つの項目について質問いたします。

 

最初に、このたび区長が示された「予算の編成方針とその概要」についてです。細目については特別委員会で触れることとし、ここでは区長のお考えを中心に、うかがいます。

 

一読してまず感じましたのは、「自治」の文言が見られないことと、「市民自治」の視点が見られないということです。住民がみずからまちづくりにかかわること、区政に参加することへの期待も展望も、全く語られていいません。区では昨年、自治基本条例が改正され、意見提出手続きを新たな条例として決めはしましたが、区が何か新しいことを始めようとするときにのみ、住民の意見を聴取しようというもので、住民からの自発的な提案を受け入れるというしくみではありません。

 

そのことと併せて考えてみますと、区長は、住民による発意を区政に生かしていきたいという意思がおありになるのか、「市民自治」を進めることへの積極性を疑わざるを得ません。そこで、根本的な理念を問う質問になりますが、区長は「市民自治」というものをどのようにお考えになるのか、いま一度、おうかがいしたいと思います。最初の質問です。

 

国会では、鳩山首相がその施政方針で「新しい公共」の概念を前面に打ち出しました。めざすべき日本のあり方として、市民やNPOなどがたすけ合う社会を築いていきたい、という趣旨だと理解しています。杉並区では従前より「新しい公共」の創造をうたい、その担い手としてNPOの活動支援に力を入れるとしてこられましたから、そのような当区においては、この政権交代がNPO支援をさらに推進させるチャンスだと考えるものです。

 

しかしそれにしては、区長の言葉で「新しい公共」への共感や、市民やNPO活動への支援が語られないのを、残念に思います。区長は、市民・NPOの活動や事業を今後の区政にどのように生かしていこうとお考えなのでしょうか。「新しい公共」の理念のもと、どのように連携、協働していかれるお考えなのか。2番目としてうかがいます。

 

都区制度のもとにある現在、特別区で杉並だけが減税のための基金積み立てを始めようとするのであれば、他区の理解を得る必要があります。区長は東京都と他の22区に対してこれから進めようとしている減税自治体構想について一定の説明をし、理解を求めるべきと考えますがいかがでしょうか。これが3点目です。

 

4点目。区長は対国、対東京都における自治の確立の必要を常日ごろより述べておられ、今回もそうですが、ご自身がそのために何か行動に出ようとなさっているようには見えません。都区問題を解決し真の地方分権を獲得するため、区長みずから都区のあり方や東京における自治のあり方について関係機関に積極的に働きかけ情報発信を行うなどし、リーダーシップを発揮すべきではないのでしょうか。うかがいます。

 

この項の最後、五つめの質問です。2010年度は山田区政の最後の年となります。予算編成方針を拝見しますと、行政に関しては、これまでの集大成として提示された施策を確実に実行なさるであろうことがよく分かります。しかし区長ご自身は、最終年度の活動として何をなさるのかと疑問がわきます。先ほど述べた、自治に関する取り組みの先陣を切ることや、みずからこの1年、地域に積極的に足を運び、区民の目線で、減税構想をはじめとし区政全般に対する区民の声を聞き取ることをされてはいかがかと思います。ご見解をうかがいます。

 

つづいて、スクールソーシャルワークについての質問です。

 

先月24日、江戸川区内で小学校1年生の少年が両親から虐待を受けて死亡するという、痛ましい事件がありました。学校は、昨年9月には家庭での暴行の事実を把握し家庭訪問までしていたにもかかわらず、日常的な虐待の可能性を疑うことをせず、子どもの死を防ぐことができませんでした。疑わなかったので児童相談所に通告もしなかったといわれ、学校関係者の虐待に対する認識不足が悲劇を招いたといえます。ある同級生の子は「体育がある日に学校をよく休んでいた、着替えのときに見られるのがいやだったのでは」といい、子どもなりにおかしいと感じていたふしがあるのに、担任が何も気づかなかったとすれば、対応の初期の段階での感度の低さは、責められても弁解の余地はないといわなければなりません。そしてそれが、結果として諸機関との連携不足を生じさせるということも、この事件の残した教訓といえるでしょう。

 

子どもが虐待を受ける事件は年々増え続け、昨年厚生労働省が発表した2008年度の児童相談所対応件数は42,662件、1990年度と比較すると、18年間で実に40倍にも上っています。2002年の児童虐待防止法施行により、虐待の定義が規定されたことで表面化し、数が増大した面はあるにせよ、この激増ぶりはすなわち、対策が遅れていることの証左にほかなりません。

 

今日は、子どもの虐待防止を願うオレンジリボン運動に賛同し、こうしてオレンジリボンをつけています。

 

さて、江戸川区の事件では、「虐待問題に対応可能な専門家が学校現場には必要」とのコメントが議会や外部の有識者からも出されました。私もその通りだと思いますし、今後それは具体的な動きを後押ししていくことと思います。また、ぜひそうならなければと考えています。これから質問するスクールソーシャルワークは、その具体策のひとつといえます。

 

学校でのいじめ、不登校や、家庭でのひきこもり、虐待、特別な支援を必要とする事例など、子どもに関わる課題への対応として福祉的なアプローチを必要とされるケースは数多くあります。

 

具体例を申しますと、仮にある不登校の中学生の少女がいたとします。これを本人の心の問題として心理療法的な相談対応にあたるのがカウンセラーですが、スクールソーシャルワーカーは違います。この少女は、実は学校でいじめにあっているかもしれない、家庭では家族間の不和があるか、保護者が経済的問題を抱え、その結果として貧困状態にあるかもしれない、あるいは薬物やアルコール依存にかかわっているか、家庭内暴力やドメスティックバイオレンスの被害者かもしれず、摂食障がい、うつ病などの健康上の問題か、発達障がいをもっているかもしれません。このようにさまざまな問題が少女の背景に隠れている可能性があります。

 

そのようなケースに対し、社会福祉的な視点と手法をもって、本人個人というより、その環境に働きかけることで解決を図ろうとするシステムが、スクールソーシャルワークです。

 

なお、システムとしてのスクールソーシャルワークと、その仕事を担う専門職のスクールソーシャルワーカー、というようにここでは定義し、使い分けてまいりたいと思いますのでご了解ください。

 

スクールソーシャルワークは、100年前米国で始まった活動にそのルーツがあるといわれますが、日本に導入されてまだ20年ほどしかたっておらず、方法論としては未確立です。ですが、学校における問題が多様かつ複雑化する中で、今後活用のニーズが必ず広がっていくものと考えます。

 

杉並区がスクールソーシャルワーカーを配置されるようになったことを、生活者ネットは高く評価しています。この取り組みが、子どもの育ちを支えるセーフティネット機能のひとつとしてさらに充実されることを願って、今回質問いたします。

 

当区のスクールソーシャルワークは2006年度より取り入れられていますが、2008年度からは、文部科学省が実施するスクールソーシャルワーカー活用事業の導入がされています。最初の質問は、この文科省の事業についてです。その概要と目的をまずうかがいます。

 

ふたつ目。当区が文科省より2年早くスクールソーシャルワーカーを導入された背景には、どのような課題があったのか。課題を受けて導入に至った経緯と、その目的について、おうかがいします。また、これまでの活動実績について、そしてこの活動に対する区の評価はいかがか、併せてお示しください。

 

次は資格についてです。スクールソーシャルワーカーは専門的な職種でありながら、国家資格というような、そのための資格というものはないと聞いています。当区のワーカーは現在4人ですが、どのような資格をもつ人たちでしょうか。おたずねします。

 

働き方についてもうかがいます。4点目です。当区のスクールソーシャルワーカーは済美教育センターの教育SAT(スクールアシストチーム)に位置付けられていますが、どのような働き方なのでしょうか。対応すべき事例が持ち込まれたのち、どのように動くのか、具体的にお示しください。学校や公的機関とのかかわり方やチームワークのとり方、また家庭や個人への介入のしかたはいかがでしょうか。勤務のしかた、待遇、権限など、日常的にどのような業務なのか、おたずねします。4人の分担についてもうかがいます。

 

つづいて5点目。スクールソーシャルワーカーは、その任務の特色として大量の個人情報を抱えることになります。当然ながら秘匿義務がありましょうし、それは厳守されなければなりません。監督責任者としての教育委員会の方針をお聞かせ願います。

 

そして6点目は今日、一番お聞きしたい質問です。活動するなかで、学校の側に立つのか子どもの側に立つのか、学校側の立場で対処するのかそれとも子どもに寄り添うことを重視するのか、その立ち位置によってスクールソーシャルワーカーの対応は異なったものになります。迷う場面が必ず出てくると思います。そのときワーカーは「子どもの最善の利益」を優先すべきであり、そういう態度や判断を支える教育委員会であってほしいと考えます。区の見解をお示しください。

 

スクールソーシャルワーカーの取り組む課題には、複雑で深刻なものがあるに違いありません。あるケースには時間をかけた取り組みが求められ、同じ人が継続して担当することが必要なケースが必ず出てくるでしょう。そう考えると、現在の4人はとうてい十分な人数とはいえません。区はワーカーの登用を増やし、学校の問題に対して福祉的な取り組みとして対応に当たるべきと思います。区の見解はいかがでしょうか。おうかがいします。

 

そしてこの項の最後の質問です。人材育成と普及啓発について、まとめてうかがいます。

 

スクールソーシャルワーカーの質的向上と活動支援のため、ブラッシュアップ研修の実施が必要と考えます。ケーススタディを重ねること、対応の実績を積み上げることも重要ですし、ワーカーが動きやすいような環境づくりも求められます。区はどのように進めていかれるのでしょうか。

 

また、スクールカウンセラーとの違いや、スクールソーシャルワーカーの役割の重要性をひろく一般にも伝え、アピールするべきと思います。とくに、児童青少年委員をはじめとする、子どもにかかわる機関の関係者への啓発が求められます。教育委員会が昨年パンフレットを制作されていますが、そのためのツールのひとつとして有効に使うべきと考えます。区の見解をおうかがいし、前向きなご答弁を期待して、次の項目に移ります。

 

3番目の項目、食品表示についての質問です。

 

食品について私は、安全であることが特別なことではなく、当たり前でなければならないと考えています。ですが同時に、どんな食品を、何を基準に選ぶかは個人の自由な判断だと思います。健康上の制限がある場合を除いて、消費者個人が自分の意思で食べものを選ぶべきですし、消費者にはその権利が確保さなければなりません。消費者の食品を選ぶ権利、その前提となる正しい情報を知る権利、それを保障するのが食品の表示です。

 

日本の食品表示は、おもに、衛生の面で定める「食品衛生法」と品質面にかかわる「農林物資の規格及び品質表示の適正化に関する法律」という長い名称の、いわゆるJAS法という、2つの法律によって規定されています。食の工業化やグローバル化の進行に伴って食品を取り巻く環境が大きく変わるなかで、時に応じて改正を重ねてはきたものの、消費者にとってはまだ不十分といわなければなりません。その問題意識に立って、以下、質問いたします。

 

昨年9月、消費者庁が発足したことにより、食品表示に関することは、国においては厚生労働省から消費者庁に移管されました。生産者・事業者本意で定められてきた表示制度が、今後、消費者本位の制度に見直されることが期待されます。ところで、この移行に伴う区での変更はあるのでしょうか。食品表示にかかわる区の所管は保健所ということになっていますが、消費者センターとの連携もされているはずです。どのようにされているのか、確認になりますがこの項の始めにうかがっておきます。

 

食品表示に対する区民の関心は高まっています。区が昨年発行された「健康都市白書‘08」によれば、「食品衛生について家庭で心がけていること」という項目で「食品を購入するときには、食品表示をよく見ている」と答えた人が、2005年の73.4%から08年には76.5%に上がり、それを裏付けています。

 

ところが内閣府が昨年実施した国民生活モニター調査では、表示を「信頼できる」とした人が43%いたものの、「信頼できない」と答えた人が28%あり、ほかの調査項目の結果からも、現在の表示制度は不十分と考える人の多いことが明らかになっています。偽装表示が相次いでいることも、消費者の信頼感を低下させてしまっています。

 

消費者に身近なところでの、適正に表示されているかどうかのチェックが必要です。適正な表示、消費者が知りたい情報が伝わる表示が求められています。

 

そこで質問です。区は、食品衛生監視指導計画において、食品添加物と並んで食品表示の適正化に向けた取り組みを定めており、先日パブコメに付された計画案では、基本方針の1項目で区内の食品製造施設への監視指導をいっそう強化、とあります。この監視指導活動はだれが、どのように行うのか。そして、もし問題が見つかった場合にはどのように対応するのかうかがいます。

 

区がどんなに指導しても、いまの法律の範囲では消費者の知る権利は保障されていないという現実があります。偽装表示が絶えないことも法の不備に一因があります。また表示を定める法律が複数にまたがっているため、消費者にとって大変わかりにくい仕組みになっています。

 

制度の不備を示す例としてよくあげられるのが、魚の例です。切り身として売られる魚には産地表示が義務づけられているのに、刺身の盛り合わせになると加工食品の扱いとなり表示が不要となる、という具合に、いまの制度は消費者の立場で設計されているとはいえません。

 

加工食品については、昨年、東京都消費生活条例が施行され、都内で販売される調理冷凍食品について原料原産地表示が義務付けられたことで、実質上は全国基準として通用しています。ただし、国内での製造に限られているほか、重量割合で上位3品目かつ5%以上の原材料しか充当しません。冷凍コロッケに入っている牛肉はおそらく該当しないでしょうし、製品として輸入された冷凍ギョーザの原材料は非該当です。

 

対象をすべての加工食品に広げ、原料の生産履歴、いわゆるトレーサビリティ―や原料・原産地の表示を義務化すべきです。また、遺伝子組み換え食品や飼料として使われる遺伝子組み換え穀物、クローン技術によって生産された家畜由来の食品の表示義務化も、多くの消費者が求めているところです。

 

先に引用した国民生活モニター調査では、遺伝子組み換え食品であるかどうかの表示を重要と考える人の割合が02年で62.9%、08年は73.3%となっており、遺伝子組み換え食品に関する注目度が高まっていることがわかります。

 

それは、遺伝子組み換え食品を「選択しない」ために表示を求めていると考えるべきです。そしてクローン食品についての消費者の関心は、おそらく遺伝子組み換え食品より高いと思われます。昨年、体細胞クローン技術で生産された牛を、内閣府の食品安全委員会が「食品として安全である」とする評価を出しましたが、その後受け付けられたパブリックコメントでは「安全性に不安がある」というものが8割以上だったといわれています。

 

専門家集団である食品安全委員会がいくらお墨付きを出しても、食べたくないと思えば消費者は買いません。買わないという選択を可能にするのは、ラベルに書かれている表示です。逆に、積極的に買いたいと思う人の選択を可能にするのもまた、表示です。消費者が自らの意思で買うか買わないかの選択ができるよう、国は食品表示の制度を見直し、加工食品のトレーサビリティ―と原料・原産地の表示、遺伝子組み換え食品と飼料用の遺伝子組み換え穀物、そしてクローン食品の表示を義務付けするべきと考えます。

 

区民の食の安全を守る立場にある区としては、どのようにお考えになるでしょうか。最後の質問として見解をうかがいます。

 

さて、自給率の向上と食の安全の追求が直結するものとして論じられますが、その間には消費者の選択が介在すること、それを可能にするのが表示だということが見落とされがちです。そのとき適正な表示が確保されなければ、国産品を選びたくても選ぶことができません。

 

ですから、表示制度の見直しと食品のトレーサビリティ―が確立されることは、日本の農業・畜産業などの第1次産業を守り食料自給率を高めるためにも不可欠なことなのです。自給率を高めることは一人ひとりの消費行動の結果と考えれば、身近な自治体である区は、区民に対して、食品を選択する主体としての自覚がもてるような教育や啓発に取り組んでいただきたいと思います。以上、要望し質問を終わります。