特別委員会 自治基本条例・意見提出手続き条例 意見

                                                                         09.12.7
小松 久子

 

区議会生活者ネットワークとして2議案に賛成の立場から、そして今後もさらに杉並区の「自治」が発展していくことを願って、以下、要望、感想をふくめ意見を述べます。

 

2000年の地方分権一括法制定いらい、「地方自治体の『自治』のありようを法的に定めることがわが区でも必要」と訴えていた生活者ネットワークにとって、2002年の杉並区自治基本条例の制定はまさに望んでいたことでした。当時まだ全国でも数例のみ、23区では最初の事例ということでしたが、その後の7年間に自治基本条例制定の動きは全国大小の自治体に広がり、現在に至っています。

 

この流れをつくったといわれる北海道ニセコ町の「ニセコ町まちづくり基本条例」のように、名称に「自治」の文言こそないものの明確に「自治」の理念をうたっているものを含めると、その数は現在180以上になります。いま「自治」という言葉も自治についての条例も珍しくなくなった状況にあって、杉並区が制定後初めての見直しということで、改めてこの条例についての議論を深める機会を持てたことは歓迎すべきものと受けとめております。

 

会派として、この条例改正に前向きにかかわっていこうという考えのもと、私は昨年の第1回定例会の一般質問でとりあげ、その後議会内に設置された見直し検討会にも委員として参加させていただきました。これらの折には、小平市での行政主導型でない、公募市民主体による条例づくりの例などをあげて、検討のプロセスの段階から市民参加の場を設置していただきたいこと、また条例のどの部分を改正するのかについても区民の意見を聞いていただきたいこと、などを主張してまいりました。

 

しかしこの間、市民参加といえるのは唯一、921日から1020日まで行われたパブリックコメントのみで、区が提示された4項目以外の部分は見直し対象から外されたかっこうでした。ほかならぬ「自治」を論じる条例について区民が制定にかかわるせっかくのチャンスだったのに、と思うと率直なところ残念です。

 

パブコメに応じて寄せられた意見が5件のみというのも、少ないことを嘆くより、区民に議論を促す仕掛けや区民意見をできるだけ引き出そうとする区の努力が十分とはいえなかったのでは、と思わずにいられません。

 

提案されている「意見提出手続き条例」には、第6条に「提出意見を考慮しなければならない」、また7条に「その結果を公表しなければならない」とあります。そのような内容の条例なのですから、今回は他の条例以上に、どのような意見が出されたのかは議案審査のうえで重要な参考資料となります。本日会議の初めに、出された区民意見の資料が席上配布されましたが、前もって情報提供していただきたかったと思います。

 

意見を寄せてこられた区民にとっては、パブコメに付された時点で条文は公表されていませんでしたから、限られた範囲においてのみ、意見を求められたことになります。とくに「意見提出手続き条例」は新設の条例ですから、この内容に関して議会は区民意見を参考にすることもなくこれから可否を決定することになり、この条例の性格からしてはたして適当か、疑問の残るところです。

 

先ほどの質疑で、自治基本条例に新たに加えることとされた災害対策と危機管理の項目について触れました。人権、環境権などの文言が自治条例の項目として検討されてもよかったのでは、とうかがいました。区民に問いを投げかければもっとさまざまな価値観や理念が提案され、議論を深めることができたろうと思います。

 

たとえば「平和」「自由」などの文言が前文に加えられてもよいのではないか。先ほどの質疑で「区民等」の定義として、「区内でボランティアや市民活動を担う人」もひろく入る、という考えが示されたことを歓迎いたしますが、であればそのように明記されてもよかったのでは、と思いますし、また国連の「子どもの権利条約」にもとづき「子どもの参画」をこの際明記すべきではないのか。さらに「地域自治」ということについて、この機会に区の考えを整理し条例に盛り込むべきだったのでは、など、いま思いつくだけでも挙げることができます。次回の改正に向けての課題としていただきたいと思います。

 

「協働」の定義に関連して先ほどもうかがいましたが、比較的新しい概念であるだけに、これまでにも何度もこの言葉について区の見解をただしてまいりました。そのときどきのご答弁のたびに、区は「協働」という言葉を場面によって別の意味で使っておられる、という感を強くしています。

 

昨年第1定の一般質問での「指定管理や民託も協働になりうる」とのご答弁には驚きましたが、であれば区の最高位に位置づく「自治基本条例」第2条に定めている定義、「地域社会の課題の解決を図るため、それぞれの自覚と責任の下に、その立場や特性を尊重し、協力して取り組むこと」という趣旨に照らし合わせて、指定管理や民間委託の実態を調査・検証する必要がありますし、それとともに「協働」の概念と実態を再精査し、その運用についての再構築が必要と考えます。

 

市民参加条例の制定については考えておられないようですが、パブコメに付される政策等は限定的であり、指定された範囲での意見提出だけでは区政への市民参画は不十分と考えます。

 

附属機関等への市民枠の設置は広がってはいますが、選任のしかたが不透明であることは改善されるべきです。以前、公募枠を超える応募者があった場合にはくじ引きを、と提案いたしました。かつてそのような例があったと聞いていますが、もっとも公平でわかりやすい選出方法だと思います。すべてにとは申しません。ご検討ください。

 

条例制定後の普及啓発について、ツールに工夫をと提案いたしました。他方、条例の使われ方、すなわち自治が根付いていっているか、広がり浸透しているかについて、検証することが今後は必要です。公募委員の数や提出意見の数といった量的な側面だけでなく、質を問うことが求められています。区にはぜひ研究を深めていただきたいと思いますし、議会サイドとしてもその力を磨いていかなければと思います。

 

議会に関する事項を定めた第6章については、検討委員会で議論を積み重ね合意した結果として条文が改正されていますが、ちょうど自治基本条例の中から意見提出手続きに関する部分を取り出して条例化がされるように、議会基本条例の制定が今後の課題であると考えます。議会改革検討調査部会における前向きな取り組みがなされるよう期待するところです。

 

以上、さまざま述べてまいりましたが、これら二つの条例は額に納めて飾っておくためのものではありません。「新しい公共」を実践するにあたってのテキストであり、使い慣れ、使いこなしてゆくなかで、民主主義における「自治」を育てていくための道具となるべき条例なのだと考えています。この改正を機に、杉並区における自治が深く根を張っていくよう、生活者ネットワークも力を尽くしていく決意であることを申し上げ、会派の意見といたします。