第4回定例会 一般質問

                                   08.11.22 小松久子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、学校給食ついて、飼い主のいないネコとの共生について、以上2点質問いたします。

 

[学校給食について]

杉並区の学校給食は、おいしいと子どもたちの評判もよく、すべて手作りで自校調理方式、安全対策、食育への積極的な取組み、アレルギーへの対応など、充実した内容といってよいと思います。今後もさらに努力されるよう期待を込めて、以下、質問いたします。

 

学校給食のよって立つ法律である学校給食法が今年2月に改正されました。1954年の制定以来、実に54年ぶりの大幅な改定であり、すでに施行されている食育基本法にそって、学校給食のありかたや位置づけを大きく変えたものと認識しています。これについて、まず区の見解をおうかがいします。

 

食育基本法は各自治体での食育推進計画の策定を義務づけており、当区でも2009年度に健康推進課がまとめる形で策定予定と聞いていますが、質問の2番目として、その作業の進捗状況と策定のスケジュールについてうかがいます。

 

学校給食における食育は、当区では法改正される前からすでに、食育基本法にもとづき積極的に取り組んでこられたと認識しています。どのような取組みがされてきたのか、また、そのような取組みを区はどのように総括されているのでしょうか。おたずねします。

 

学校給食は、小中学校の9年間という限られた期間だけ、しかも昼食だけの食事ですが、成長期の子どもにとっては重要な意味があります。特に、家庭における食のありようが変化し、栄養のバランスを始め質の低下がいわれる昨今、学校給食に期待されるものや教育的役割は大きいものがあります。いかがお考えか、うかがいます。

 

食の総体に対する信頼が崩壊したといわれ、学校給食においてさえ、事故米の混入事件をきっかけに食材の安全性を疑わざるを得ない事態が生じています。そこで、食の安全という観点からおたずねします。区内の学校給食において、食材の安全に関わる問題が生じていないでしょうか。お答えください。

 

また、食材とその納入事業者を決めるのはだれが、どのように決めるのか、選定規準はあるのでしょうか。区が一括して納入業者と契約しているのか、あるいは学校ごとに選び方が違うのか。また民間委託された学校の場合はどうかなど、おもな食材についてお示しください。

 

食の安全ということでは、食材だけでなく、子どもの口に入る瞬間まで、異物の混入などの事故を未然に防ぐための危機管理対策が求められます。当然マニュアルが作成されていると思いますが、アルバイトを含めて調理場で働くすべての作業員にマニュアルが徹底されていなければなりません。安全管理マニュアルの徹底をどのようにされているのか、うかがいます。

 

さらに、調理員を対象とする衛生研修や、調理研修は実施されているでしょうか。バラエティーに富んだメニューを可能にするには調理技術のレベルアップが求められます。民間委託はいま小中35校で実施されていますが、委託校ではいかがでしょうか。うかがいます。

 

委託が実施されている学校では、学校関係者と委託会社、それに保護者をふくめての情報の共有、情報交換がとくに重要です。当区では各委託校で学校給食運営委員会が設置されています。設置の目的とメンバー構成、開催状況をおうかがいします。

 

少なからぬ区民が若干の不安を抱きつつ受け入れてきた民間委託ですが、委託後の給食が子どもや保護者などの当事者からおおむね高い評価を受けていることには、安どしています。委託になれば質が低下するのではないか、問題がおきるのではないか、などの不安がしずまったベースには、学校給食運営委員会という、保護者の意見を届けるしくみが設けられるなど、区の努力があったものと思います。また学校ごとに給食をつくる「自校調理方式」であったからこそ、それができたとも考えます。今後も自校調理方式を貫いていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。おたずねします。

 

安全な給食のために、衛生面をはじめとして厳しい管理が重要なのはいうまでもありません。と同時に、現場の調理員たちが不安やストレスなしに働ける場になっているかどうかも、安全にかかわる問題です。給食調理室という限られた空間で働く人たちの身分の差がコミュニケーションをとりにくくさせ、それがミスにつながる可能性がある、とある専門家は問題提起しています。賃金をはじめ雇用条件、労働条件が違いすぎることはコミュニケーションを妨げる要因になりえます。民間委託がそのような問題をはらんでいることは認識しておかなければなりません。

 

さて、給食におけるキーパーソンは栄養士です。区の標準メニューはありますがそこに工夫を加え、栄養のバランスが規定に合うよう食材を決めるのは栄養士ですし、調理方法の指導、味付けの段階で調味料のさじ加減を決めるのも栄養士です。またこれからは学校全体の食育を推進する役割が求められます。全校の半分に栄養士を設置するという都の規定により当区では66校中33校、済美養護学校と南伊豆健康学園をあわせて35校に都採用の栄養士が配置されていますが、それ以外の学校には区の嘱託としてすべて栄養士が配置され、大いに評価するところです。

 

一方、栄養士と同様に食育の推進役を担うはずの、家庭科の教諭が都の方針で減らされていることには、腑に落ちないものがあります。ただ、ここでは指摘するだけにとどめておきます。

 

次に給食費についてです。今年、当区では給食費の値上げがされました。食料品価格が軒並み高騰するなかで食材の質を落とさないためには、やむをえないことであり、納得できることと考えます。食品価格の変動は今に限ったことではないと思いますが、どのような経緯で、いくら上がったのか、うかがいます。今後の状況しだいでは給食費の改定が再び必要になる場合も考えられますが、当面はできるだけ据え置きに務めていただきたいと考えます。いかがでしょうか、うかがいます。

 

つづいて、米飯給食についておたずねします。昨年まで、杉並区の米飯給食は週に2日ないし3日と聞いておりましたが、今年度から週4日になったとのこと、たいへん歓迎しております。私は、栄養のバランス面、安全、食文化、食習慣、フードマイレージなどなど、あとで述べる農業振興の意味でも、米飯給食がすすめられるべきと考えてきました。そもそも、パンと米飯を比較しますと、パンは原料の小麦粉がほとんど輸入品であるだけでなく、多くは添加物が入れられているのに対し、ご飯はコメと水だけの無添加食品です。従来パン食が普通であったことのほうが、不自然なのです。

 

そこで質問です。米飯給食を増やした理由は何でしょうか。子どもたちや保護者、調理員からの反響はいかがか、あわせておうかがいします。

 

杉並では、国産食材の日や農協の協力で地元野菜デーももうけておられます。農業について考えさせる、すぐれた取組みだと思います。食の安全という面からも、顔の見える生産者であること、生産履歴をたどれるトレーサビリティーは重要なポイントです。

 

5年前、私がこの議会で初めて質問に立ったときに選んだテーマのひとつは「都市農業」でした。杉並の農業支援のしくみを求め、学校給食に区内産の野菜の導入をすすめる、という趣旨でしたが、「区内農産物の導入が進まないのは、これまで両者の間での情報共有が少なかったことが大きな理由だった。子どもたちが食べ物や自然環境の大切さを学ぶ上で大きな効果が期待できるので、こうした取り組みが進むよう、学校と農家とを結びつけるための工夫をしてまいりたい。」と当時の区民生活部長が答弁されました。

 

その当時、市民グループの調査によれば区内産野菜が納入されていたのは17の小学校でしたが、今年の場合、教育委員会にうかがうと、小学校27校、中学校17校、養護学校1校の合計45校が給食に地元の野菜をと希望し、単発だが希望校には供給されるとのことでした。この5年間で、学務課と産業経済課が学校と農業者を結びつけてこられた成果だと感謝いたします。

 

ところで118日・9日に区庁舎で開催された、区内農業者のおまつり「農業祭」で、区が「杉並と交流関係にある北塩原村でとれたコメを学校給食で食べる」ことを検討中とうかがいました。この杉並区で農地をいま以上に増やすことはまず困難ですが、食育としても環境を考える上でも、これからは、国内農業をどのように守っていくのかを考えることを重視すべきです。先の決算特別委員会でも質問したことですが、地方都市の農業支援のしくみをつくれないものか、と思います。交流のある都市との交流のありかたをこのような視点で見直されてはいかがでしょうか。

 

世田谷区は「区民健康村相互協力に関する協定」を群馬県川場村との間で締結していますが、その中に23区で唯一、農業協定を加えています。「健康村里山自然学校」という交流事業の中に「農業塾」が組み込まれ、「野菜づくり入門コース」「棚田オーナー」など、まさに私が決算特別委員会で指摘したことが世田谷区民向けに行われています。

 

今年6月に実施された区民意向調査の報告書によれば、区と他の都市との交流について6割は知らなかったと答え、それらの都市へ「行ったことはない」と答えた人が85%、交流事業に「参加したことがない」が96%にのぼりました。一方、交流事業への参加意向をたずねる問いに対しては、観光、文化、自然体験、農作業などの体験学習、土地の人との交流、の順に関心の高さが示される結果が出ています。

 

先の委員会の質問では「たとえば田畑のトラスト制度」と申しましたが、その土地の自然の特性や農・林・水産業の特徴を生かした企画はさまざま考えられます。風光明媚な景色を愛でるだけの観光ではない、自然環境に配慮した体験型観光、グリーンツーリズムを自治体が事業として展開するケースも全国に増えてきました。杉並区との交流関係の延長として先方にそのような事業を提案し、実現すれば、双方にとってより豊かな交流となることは間違いありません。杉並区にとっては、交流都市の農業を支援することが、区民の農業への関心を高め、環境配慮行動にもつながると思います。区のお考えをうかがって、次の項目、飼い主のいないネコとの共生について質問いたします。

 

[飼い主のいないネコとの共生について]

つい先ごろ、荒川区で、飼い主のいないネコへの餌やりに罰則規定を設ける内容の条例が提案されることが明らかになり、住民の間に賛否両論が巻き起こりました。荒川区はそれを受けて、動物愛護の精神を加筆し、罰則を課すにあたっては慎重に進める、という趣旨での修正を加えたうえで、近く議会に提案されるもようです。それに先立つ7月には、杉並区内でネコが虐殺される事件が相次いでおき、野良ネコの問題が社会問題として認知されるようになってきています。

 

ここで忘れてならないのは、およそすべての社会問題がそうであるように、問題の原因をつくっているのは人間だということです。ネコに責任はありません。だとすれば人間がその解決に務めなければならないこと。そして、動物愛護はもちろんのこと、動物の生きる権利を認めその生命が尊重される「動物福祉」が推進されるべきである、という視点から以下、質問いたします。

 

最初の質問は、昨年7月に出された「動物との共生プランへの提言」最終報告書についてです。報告書には、「人と動物が共生できる杉並を目指して」と副題がつけられ、ここで提案された具体策で事業化されているものもあります。まず、区はこの報告書をどのように評価しておられるか、おうかがいします。

 

この提言から具体化した事業に、動物適正飼養普及員制度があります。別名どうぶつ相談員制度といいますが、すぎなみ地域大学の講座修了者の中から今年23人が相談員として委嘱を受けたと聞いています。そこで、飼い主のいないネコの問題についてうかがう前に、どうぶつ相談員制度に関連して3点おたずねします。

 

1点目。制度をもうけた目的と相談員の役割、資格は何か、うかがいます。

 

2点目。相談員はおもに、イヌにかかわる活動を望む人とネコの活動に興味のある人に分かれ、それぞれに活動内容が異なるうえ、その人ごとに活動のレベルも異なります。相談員に効果的に活動していただくためには、各人の得意分野や個性を区が把握しておく必要があると思います。区はどのような対応をとっておられるのか、お聞かせください。

 

3点目です。地域大学の講座では、実地研修などは行われなかったと聞いていますが、地域でおきている問題に対処できるような技術研修が必要なのではないでしょうか。区として、相談員のスキルアップ研修をおこなうことが必要だと思います。また民間で行われているさまざまな研修の情報を提供していただきたいと思いますがいかがか、おうかがいします。

 

さて、ここから飼い主のいないネコの問題についてです。ネコに関して対応すべき問題といえば、野良ネコが増えて鳴き声がうるさいとか、フンや尿のにおいが環境を悪化させることなどですが、これを解決するには、ネコを捕獲して不妊・去勢の手術を施し、一代限りの命を全うさせて、時間をかけて数を減らしていくしかありません。それを実行する主体として、何人かのネコ好きな人たちが、餌場を決めてそこに集まってくるネコを責任持って管理し、フンの始末など世話する活動が「地域ネコ」の活動です。個人が飼い・個人がかわいがるのと違って、地域で飼う・地域でかわいがる、という考えかたであり、ベースとしてあるのは動物愛護の精神です。

 

ところが、一方では動物愛護のあまり無責任にエサを与えるだけのネコ好きの人が多いことも事実であり、実はそれが愛護のはきちがえとは気づかず、問題を大きくしてしまっています。このような問題について、区がどうぶつ相談員に期待する役割はどのようなことでしょうか。うかがいます。

 

相談員の中には、4月に委嘱を受けて半年過ぎても何をするのかが分からない、区は何を求めているのかが分からない、という声があります。せっかくつくったしくみが生かされていないのではないでしょうか。区として、適切な活動支援が必要だと思います。相談員の初心者の活動として、不妊・去勢手術費用の助成金申請がされたケースについて、現場に行って正当性を調査し、手術の終了後にきちんと世話・管理されているか、あらかじめ作成したチェック表をもとに現場調査を担当するなどの役割を担っていただいてはいかがかと思います。このような活動の経験を積むことが、初心者にとっては何よりの研修になると思います。見解をうかがいます。

 

いま述べたように、野良ネコを増やさないための不妊・去勢手術の費用を、獣医師会の協力で区は負担しておられます。今年度予算ではメス1匹24,000円で80匹分、オス112,000円で同じく80匹分で合計288万円となっています。この事業は助成ではなく全額負担ということですが、これでは少なすぎる、野良ネコは減っていかない、という指摘はよく聞かれます。同じ予算なら、1匹あたりの金額を減らして、手術費用の全額ではなく一部を負担することとし、それでたとえ世話する人に不足分の負担が生じるとしても、その分対象とするネコの数を増やすべき、という声にはなるほどと思います。区のお考えはいかがか、おたずねします。

 

手術の際には、獣医師会との契約で予防接種などのほか、個体識別用にマイクロチップの埋め込みと耳ピアスをつけることになっています。しかしマイクロチップは、動物愛護管理法で飼われているペットには装着が義務付けられているものの、野良ネコには必要なしという専門家が多くいます。それ自体が数千円かかるだけでなく、専用の読み取りリーダーがなければ意味がない、しかもその読み取り器械はあまりにも高価であるため日本で普及しておらず、実用的とはいえません。

 

また、不妊・去勢手術がすでにされていることを示して二重にメスを入れられるのを防ぐため、として装着される耳ピアスは、とれやすい、炎症をおこすことがあるなどといわれ、施術済みのマークなら、耳カットで十分です。耳カットは虐待にあたるという人もおられますが、いまはピアスより耳カットが主流になりつつあります。マイクロチップの使用はやめ、その分の費用を手術後の血液検査に使う、あるいはより多くのネコの手術費用にふりむけられることが望ましいと考えます。お考えをうかがいます。

 

地域ネコの活動をしている方たちから、手術費用の申請時期が以前は年2回だったものが1回だけになったと聞いています。ネコの繁殖期がおおまかにいって年2回であることを考えれば、2回であるほうが現実に即しているうえ、生まれて半年過ぎたころに手術をするのが適切なので、申請の機会は年2回あるほうがしくみとして使いやすいといいます。現場からの声として要望しておきます。

 

飼い主のいないネコの世話について、昨年「共生プラン」にもとづき「飼い主のいない猫の世話・杉並ルール」が策定され、普及啓発のためのチラシが制作されました。「人と動物との共生」という理念が伝わる内容となっていると思いますが、広めるには簡略化するなどの工夫も求められるところです。また、ペットショップやペットフード店に置かせてもらうなども有効と思います。いかがか、お考えをうかがいます。

 

今回、ネコに絞っておたずねしましたが、「動物との共生プランへの提言」はイヌも鳥も、他の動物にも当てはまるものです。動物好きの人も苦手な人も、動物の命を尊重しともに気持ちよく暮らせる杉並区でありたいと願って、私の質問を終わります。