予算特別委員会 意見開陳 2008 3/13

区議会生活者ネットワーク 小松久子

 

 

私は、区議会生活者ネットワークとして、予算特別委員会に付託された2008年度杉並区一般会計予算案、各特別会計予算案、関連諸議案、ならびに副区長定数の改正条例案と関連する補正予算案について、いずれも賛成の立場から意見を申し述べます。

 

2007年は、小泉、安倍から福田政権へと引き継がれた改革路線により産み出された格差社会が深刻さを増すなかで、耐震設計、年金問題、薬害肝炎問題、食や建築建材などの相次ぐ偽装が発覚し、国民のくらしを無視した問題が数えきれないほど噴出した年でした。
生活設計の見通しが立たない将来への不安は募るばかりで、7月の参議院選挙では、いまの政治を変えたいという民意が多数であることが示されました。



原油の高騰や米国におけるトウモロコシなど穀物系のバイオエネルギーへの転換が、 食品や生活必需品の値上げに跳ね返る事態も起きており、
日々の生活に及ぼす影響は計りしれません。 2008年は、年頭から日本の株価が大きく下落しました。サブプライムローンに発した世界金融市場の混乱、石油価格の高騰、ドル安に伴う円高が原因だといわれます。

 

そのような状況にあって、当区においては財政健全化に向け区債残高を着実に減らすなど、手堅く取り組んでこられたこと、また財政情報のわかりやすい公表に努め、改善を重ねておられることは、一定の評価に値するものと考えます。

 

今般提案された一般会計当初予算は、区民所得の減や税制改正等による減収は見込まれるものの、納税義務者数の増加により区税収入が増えるという見込みのうえに算定され、1,500億円の大台を超えた昨年度よりさらに32億円多い予算規模となっています。審査の結果、昨年11月に改定された実施計画にもとづき、おおむね適切な予算配分がなされているものと判断しています。

 

特別会計では、後期高齢者医療制度がこの4月1日より開始されることに伴い、大きな組み換えがされています。医療制度改革によって創設された後期高齢者医療制度は、増え続ける高齢者医療費の抑制が目的で導入されたものであり、検討された当初から指摘されてきた、さまざまな課題が山積したままでの出発となりました。なかでももっとも危惧されるのは、これが高齢者の生活を圧迫することになるのではないか、という点です。おかしなたとえになりますが、もしいまのお年寄りたちが若くて元気なら、一致団結してデモ隊を組み、厚労省前で座り込みをしても不思議ではない、それほど過酷な制度だと思います。

 

しかし国全体で医療崩壊が言われるいま、将来の医療制度を見据えて、この新たな制度に積極的な意味を見出す以外に方策が見つかりません。そして後期高齢者医療広域連合の議会に議席をもつ杉並区は、高齢者の生活実態をとらえ、よりよい制度に向けて強く働きかける義務があります。私たちも、実際に運用されていくなかで、今後改善のための提案をしていきたいと思っております。

 

さて、今回2人目の副区長設置が提案されました。みどり、水辺、景観、福祉、防災などの課題を考えた時に、その重要性は認識しておりますが、本来は現有の組織体制で解決すべきと考えます。また先日の質問では、分権一括法にのっとり対峙すべき、との正論を述べました。しかし、区長が「新たな課題がこれから出てくるのに対し、機敏に迅速に責任をもった全権として副区長を置く」と答弁されたこと、現実に課題が目の前にあるときに、時期を逃さず国や都と渡り合っていく人が必要なことは理解します。生活者ネットとしても、まちづくりは重要な政策項目でもあり、その役割を明確にしてくださることを条件に、議案に賛同するものです。

 

以下、委員会の審査で言及できなかった諸問題や再度強調しておきたい事柄について、項目を絞って意見を申し述べます。

 

先日の会派の一般質問では、食の安全への取り組みとして、前向きなご答弁をいただいたところです。加えて、学校給食に疑わしい冷凍食品が使われていないのはもちろんのこと、ごく一部の冷凍野菜以外すべて、国産の食材により手作りされていることが、問題発覚後直ちにホームページ上で公表されたことは、区民にとって頼もしい限りです。安全面だけでなく食育の観点からも、学校給食の食材には、今後も国産食材の使用を徹底していただくことを求めます。

 

また私の一般質問でとりあげた自治基本条例を引き合いにしつつ、自治とは何か、市民参加とは何か、という命題について質問いたしました。アンケートや意見提出、公募委員という従来の手法は、公平・公正な市民参加と呼ぶには限界を感じています。「プラーヌンクスツェレ」というドイツ発の手法に言及しましたが、自治を高めるための市民参加のあり方について、さまざまな方面から再度考察すべき時期に来ていると感じています。ご検討くださるようお願いいたします。

 

委員会での議論において、「五つ星の区役所サービス」というキーワードが幾度となく飛び交いました。そのなかのご答弁にあった、「区役所はサービス業」という文言が印象に残っています。「区役所はサービス業」というのは、一面、確かにそのとおりかもしれません。けれども区民がサービスをただ受けるだけお客様扱いされるだけの存在でないことは、申し上げておきたいと思います。

 

過剰なサービスは不要です。サービスは本当に必要な人に提供されるべきです。不本意な社会保障制度を補うための施策、障がい者が地域で就労し自立して生活できるようなしくみ、働くお母さんが安心して子どもを預けられるように保育施設の拡充、このような施策を充実させずして土日開庁はいりません。3年間で見直されることが適当と考えます。  

 

環境問題に関連して、申し上げます。

 

まず、ごみ問題です。23区が一斉に廃プラスチック焼却に突入する2008年度は、清掃行政のみならず住民すべてにとって、転換の年となります。先日、区長がパネリストの一人として出席された、市民団体による廃プラの焼却を考える集会に参加しました。区内で開かれたこともあって、当区の環境清掃事業、清掃工場関係者も多数おられるなか、会場の参加者から廃プラ焼却への懸念、疑問に加えて、容器包装プラの資源化に取り組む杉並の姿勢を評価する意見が口々に語られました。

 

多大な経費を投じて全区展開する廃プラの資源化です。職員定数が減るなかで、収集・運搬作業の人員体制はとれるのでしょうか。無理な職員配置が作業の停滞や事故につながることのないよう、十全の配慮をお願いいたします。

 

ところで世田谷清掃工場のガス化溶融炉は、昨年7月に完成していながら、試運転の段階で不調をきたし、いまだ本格稼動にいたっていません。焼却に頼ることはやはり誤りであると思わずにいられません。焼却主義からの脱却をめざすべきだといま改めて確信しています。

 

地球温暖化防止に向け、当区では地域省エネルギービジョンを策定し、家庭での省エネ作戦として、再生可能エネルギーの利用を呼びかけています。住宅用太陽光発電機器設置助成を行っており、区はさらに増設をめざしておられますが、設置する側には経済的課題もあり設置を断念する人も多いと聞いています。

 

そんなおり、去る2月、東京都が「太陽エネルギー利用拡大会議」における検討の最終取りまとめを発表し、太陽エネルギーを家庭部門対策の主要な柱として位置づけました。太陽エネルギーといえば、すぐに太陽光発電パネルを思い浮かべますが、ここでは太陽光発電と並んで太陽熱利用が謳われています。太陽光発電と太陽熱利用機器とでは、CO2削減率は2対10という大差で太陽熱利用の方に軍配が上がっています。このことはあまり知られていませんが、コストが3分の1以下ですみますし、太陽光発電機器の設置を断念した人に、ぜひ太陽熱利用を勧めていかれるよう求めます。

 

つづいてレジ袋有料化に向けてひとこと。本条例は、本来レジ袋の使用が減っていくことが目的ですから、レジ袋が有料になって収益金が出るということはやがてはなくなるべきことでしょうが、現実すぐにはそうならないことが考えられます。そう仮定しての話ですが、条例では、収益が出た場合には地域の環境活動への寄付が示唆されています。収益金の有効な使いみちを事業者自らが選択できるよう、環境団体などの情報を伝えるなどし、しくみづくりを望みます。

 

善福寺川「水鳥の棲む水辺」事業に期待するところです。水鳥の棲む水辺は、餌になる生き物がいること、ねぐらとなる木々があること、川、池、農地、住宅、公園、人と鳥が共存できる周辺地域のまちづくりが必要となってきます。一本の川、地点だけを見るのではなく、神田川水系全体を知り、その中の1つの河川として善福寺川、そしてその周辺をデザインしていくことが望まれます。これまでも述べておりますように、善福寺川は都市河川の特徴である合流式下水道問題を抱えています。生活者ネットワークの提案で東京都が2006年度予算に計上した、環八から上流域の一時雨水貯留管工事の早期着工が待たれます。区としても強力に促していただきたい。この下水問題解決なくして水鳥の棲む水辺は成しえないと考えます。

 

また、(現在行われている)地下水のボーリング調査の結果を待つものではありますが、湧水復活に向けて雨水浸透施設設置の推進、グリーンベルトの拡大、市民参加による生き物調査などを考えますと、庁内の横断的連携が必要で、やはり「水の総合計画」が必要になってくるものと考えます。杉並区民の宝である善福寺川を市民と共に「水鳥の棲む水辺」にしていきたいと期待するものです。

 

職員の健康診断に関連して一点、申し上げます。骨粗しょう症対策についてです。節目健診として30、40、50、55歳で骨密度測定を実施していますが、55歳の人で2人に1人は骨密度が低く、保健指導を受けています。30歳の人でも3人に1人、平均すると4人に1人が保健指導を受けていることになります。骨粗しょう症は予防が大事です。測定は5年、10年間隔になっていますから、保健指導を測定者全員が受けられないものでしょうか。ご検討ください。

 

昨年6月に始まった子育て応援券システムについて、「一時保育を予約しておいて簡単にキャンセルする、そのため本当に必要な人がサービスを受けられない」という声や、「金券」として安易に使われる、といって利用者のモラル観の欠如だと嘆く声も聞こえてきますが、私は、これで直ちに若い母親たちを非難することは避けたいと思います。

 

なぜなら、子育て応援券制度の本来の目的、「子どもの最善の利益」をうたったポリシーが事業者向け「ガイドライン」には定められていますが、利用者に向けて積極的に語られているようには見えないからです。いまのままでは単なる金券ととられてもやむをえないと思います。ガイドブックや子育てサイト上などで利用者向けにもポリシーを明示し、他の世代からも広く理解を得てあたたかく見守られるようなシステムに育てていくべきと思います。

 

また、地域の子育て力を高める意味から、小規模な応援券サービス提供事業者への支援をお願いしました。事務作業やクレーム対応など、会社組織や大規模な事業所にとっては取るに足らないことが、小さなNPOや個人にとっては大きな負担となり、ファミリーサポート事業者として自宅での託児を受けていた人が、応援券事業者から降りてしまったケースもあると聞きます。

 

バウチャーだからと市場原理に委ねて小規模事業者が淘汰されていくとすれば、地域の子育て力の芽をつぶしてしまうことになります。「すぎなみ地域大学」卒業生が事業を始めるなど、新しい市民力が育ちつつあるとき、区には小規模事業者に対しネットワーク化を呼びかける、またそのサポートをするなど、支援をしていただくことを重ねて要望いたします。

 

この問題は、行政サービス民間事業化提案制度における、大規模事業者と小規模NPOとの関係で起きている問題と本質的には同じものといえます。市場原理主義や表面的なニーズだけに着目していると、大事なものを失うことになりはしないか、という問題意識はつねにもち続けていきたいと思います。

 

以上、さまざま述べてまいりましたことは、当会派からの要望として、今後のご検討に生かしていただくことを願いまして、区議会生活者ネットワークの意見開陳を終わります。