チキンカレーから世界に思いをはせる

近藤惠津子さんが実践する「食」の授業

日本の食料自給率が40%と低いことに対し、政府は「45%に」という数値目標を掲げて方策を打っているのですが、ここ数年でかえって39%へと下げてしまいました。自給率アップはいまの日本ではCO2削減と同じく難しい課題なのかもしれません。なぜか。

それは、個人の日常生活とあまりに深くかかわっているためにかえって問題として実感できない、1回注射すれば治るような特効薬などなく地道に生活を変えていくしか方法がないからではないか。10月6日、「CSまちデザイン」の近藤惠津子さんの授業「私の食が世界・地球をつくる」に参加してそう思いました。

近藤さんの授業体験はこれが2度目。1度目のときも、豊富な数値データを示して私たちの食のありように鋭く問題を提起してきた近藤さんですが、今回も、食卓から世界情勢・地球環境までを見据えようとする姿勢は変わりません。

とっかかりはたとえば「チキンカレー」。使われる食材すべてを拾い出し、個々の食材の国内自給率、輸入国はどこか、その国と日本との距離、などが示されることで、チキンカレー全体のフードマイレージが引き出されます。たとえば自給率67%の鶏肉は、輸入している33%のうちの、輸入量1位の国はインフルエンザの流行以来中国からブラジルになり、2位米国、3位チリ。これら上位3国のフードマイレージを計算すると960トン・キロメートルで、・・・という具合。

近藤さんがそうやって計算したところ、チキンカレーの食材をすべて輸入量1位の国からの輸入品とした場合には、すべて国産の食材を使った場合の22倍のフードマイレージになった、というから驚きました。

日本が世界中で1番フードマイレージの高い国であるということは、運搬するのにCO2を大量に排出させている国だということです。土地、水、労働力、石油、窒素などの不平等な分配を世界中で起こしているのは日本だけではありませんが、日本がその多くを負っているのは事実です。

日本の国は農業の衰退をくい止めるため有効策を講じ、消費者は国産品を食材で買うようにして食べものを捨てない。そうすることが世界中の人口65億人のうち8億人以上が飢餓状態にある現実を少しでも改善に近づける、と気づかせてくれました。こういう授業こそ、いま本当に必要な「食育」ですよね。
                           区議会議員 小松 久子