◎平成27年 第1回定例会 一般質問 2015年2月27日 小松久子

●若者の自立支援について

若者をめぐる就職就労環境が依然として厳しい状況にあります。労働者の3人に1人は非正規雇用ですが、女性が増えていること、若者の多いことが傾向としてあります。非正規労働者は、正社員と比べ賃金水準が低く、雇用が不安定であり、能力開発の機会が乏しい、セーフティネットが不十分、などの課題があります。正社員を希望する意欲ある若者に、働く機会を企業が提供していくことが求められています。自立支援という観点からも、生活の基盤である雇用の確保を、都はしっかりと進めてもらいたいと思います。

 知事は、「若者が持てる能力を存分に発揮できるよう」就業支援の促進に取り組むとしていますが、なかでも、非正規で働く若者への支援をどのように進めていくのか、見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q1

A1(知事)

○  皆が明るい気持ちで生活できるようにするためには、安定した職業という生活基盤を築くことが第一。

○  正社員として働くことを希望しながら、非正規雇用となっている若者が、持てる力を存分に発揮できるよう支援していくことが重要。

○  そのため、若者応援企業に対する都独自の採用奨励金の創設や、セミナーと企業実習を組み合わせた就業支援プログラムなどにより、若者の正規雇用化に取り組む。

○  先日締結した雇用対策協定を活用し、国の機関であるハローワークとも連携しながら、積極的な非正規雇用対策を展開。

 また一方、大学を卒業し就職しても、3人に1人は3年以内に辞めてしまうという現状があります。就職後3年以内の離職率は中卒者で65%、高卒者では40%にのぼります。離職する理由は、個人によってさまざまですが、職に就いた若者が誇りを持って働き経験を積み、社会に参画していくには、就職後、職場で孤立することなく働き続けられるような、定着に向けた支援が必要です。

 若者の定着支援に向けた都の取り組みを伺います。・・・・・・・・・・Q2

A2(産業労働局長)

○  都は、しごとセンターにおいて、中小企業の入社3年以内の若手社員を対象に、社会人基礎力やキャリア形成を支援するためのプログラムを実施するなど若者の職場定着を支援。

○  また、中小企業団体等から、採用力の強化や採用後の職場定着などに関する提案を募り、その実現に必要な経費を助成。

 都は、2008年9月のリーマンショック以降、大学を卒業しても就職できないという厳しい就職環境に対応するため、若者向けの支援をさまざま実施してきました。

 その中で、正社員としての就職を希望する若者に対して、「若年者緊急就職サポート事業」や「重点産業分野就業支援プログラム」など、正社員を条件に派遣する、紹介予定派遣制度を活用した事業を展開し、3年間で3700人を超える若者が企業に派遣されたと聞いています。

 来年度の予算案では、これらの事業を終了するとしていますが、紹介予定派遣制度を活用した事業の成果と今後の取り組みを伺います。・・・・・・・Q3

A3(産業労働局長)

○  都はこれまで、若者を取り巻く厳しい雇用情勢に対応するため、20代の若者を対象に、研修と企業への派遣就労を通じて就職に結びつけるプログラムを実施し、半数を超える若者が派遣先で正社員となるなど成果。

○  来年度は、新卒者の就職内定率が向上している一方で就職氷河期世代が厳しい状況に置かれていることを踏まえ、紹介予定派遣制度を活用した就業支援事業は、非正規雇用期間が長い30代から40代を対象とする事業として再構築。引き続き効果的な実施に努めていく。

今年1月、都は2010年施行の子ども・若者育成支援推進法に基づき、(仮称)東京都子ども・若者計画の策定に向けた検討を行いました。この「子ども・若者育成支援推進法」は基本理念として、「一人一人の子ども・若者が、健やかに成長し、社会とのかかわりを自覚しつつ、自立した個人としての自己を確立し、他者とともに次代の社会を担うことができるようになることをめざす」とうたっています。そして施策を推進するにあたっては、実態等の把握や、子ども・若者の意見聴取等を行い、自治体は、福祉や医療、雇用など必要な情報の提供や助言を行う「子ども・若者総合相談センター」の機能を整備することとされています。

 そこで、子ども・若者計画に盛り込まれる施策の推進にあたり、子どもや若者からの意見はどのように反映されるのか。また、身近な地域で利用できる「子ども・若者総合相談センター」としての機能を担う体制の整備について伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q4

A4(青少年・治安対策本部長)

○  子ども・若者計画に盛り込まれる施策の推進にあたっての青少年の意見の反映については、計画に基づく支援を行う際に、対象となる青少年の意見を把握し、子ども・若者支援協議会にフィードバックすることで、青少年の意見を施策に反映していく。

○  身近な地域において利用できる「子ども・若者総合相談センター」としての機能を担う体制の整備については、区市町村における青少年に係る相談窓口の活用と、関係機関・団体等との連携の強化により、相談対応や情報提供等を行う体制を整備していく。

 都議会生活者ネットワークはこれまで、高校の中途退学者や、進路未決定のまま卒業した若者が、高校を離れた途端に社会とのつながりが切れてしまい、就労も就学もできずに無業状態、いわゆるニートの状態に陥っていることに対し、支援すべきと求めてきました。都は2012年、「都立高校中途退学者等追跡調査」を実施しその実態把握につとめていますが、生活者ネットワークも昨年、若者の就職就労環境の調査を独自に行ないました。また、働くことに悩みを抱える若者に対してキャリア・コンサルタントなどによる専門的な相談事業を行なう「若者サポートステーション」への聞き取り調査を行っています。その結果わかったことは、一度、意思と異なる方向に進んだり失敗したりすると、抜け出せない実態があること、自己肯定感を失うと相談機関に向かう最初の一歩を踏み出すのも難しいという現実です。

 やり直しのできる社会(リカレント社会)の実現とともに、高校卒業後だけでなく中退でも、孤立させない途切れのない支援が必要です。そのため、若者支援は高校に在学中からはじめることが重要です。

 都教育委員会は中途退学者等を支援するモデル事業を実施していると聞いていますが、これまでの成果と今後の取り組みについて伺います。・・・・・Q5

A1(教育長)

○  都立高校10校においてNPOと連携し、在学中に進路を決定するための支援や中途退学者等への支援をめざしたモデル事業を実施。

○  NPOスタッフが教員と連携し、個別面談等により、地域の若者支援機関の利用を促すなど、進路が決まらない生徒を就職や進学等につなぐ。

○  これまで支援が届かなかった中途退学者に対し、就労や再就学につなげる取り組みを新たに都立高校で試行。

●化学物質対策について

 有害な化学物質は、人の健康に悪影響を及ぼすため、使用量を減らし、適正な管理で環境中への排出量を抑制することが重要です。

 都は、環境確保条例で、事業者自らが化学物質の移動や排出量を把握し適正に管理することを求め、この制度によって、届出された化学物質の年間排出量は、2002年度から10年で6割削減、大気中の有害大気汚染物質の濃度もだんだん低減しています。

都の化学物質適正管理制度は、国のPRTR制度よりも小さい事業者も対象としていますが、対象物質の種類は少なく、都内では対象外の化学物質も数多く使用されています。さらに、化学物質を取り扱う事業所と住宅などの生活空間が近接、または混在している地域があり、こうした地域では、化学物質の影響が他の地域と異なることが考えられます。

 このような特徴に着目し、現在対象外の物質で、有害性や排出量が多いものについても対策を進めていくべきと考えますが、見解を伺います。・・・・Q6

A6(環境局長)

○  化学物質の環境への排出量を削減するため、都は化学物質適正管理制度を設けており、同制度に基づき事業者は、自ら作業工程の見直しやより有害性の低い化学物質への代替を図るなど取り組みを進めてきた。

○  しかし、同制度の対象外の化学物質も数多く使用されており、また、事業所と住宅が混在している地域もあることから、来年度は、有害性が高く排出量が多いと考えられる化学物質を選定し、事業所周辺大気における化学物質の濃度を把握していく。

○  この調査にあたっては、学識経験者等による検討会を設置し、調査対象とする化学物質、環境調査の方法、対策手法などについて助言を得ながら進めていく。

 化学物質は、事業者だけでなく家庭でもさまざまなものが使用されています。中毒症状やシックハウスなど、化学物質が直接健康被害を起こす場合もありますが、使っている化学物質が揮発して、大気汚染物質である光化学オキシダントやPM2.5の原因にもなります。家庭などで都民が使う製品から排出されている揮発性有機化合物、いわゆるVOCは、都内の総排出量の16%を占めており、日常生活で出るVOCを削減していく必要があります。

 消費者が揮発性有機化合物の少ない製品を使うようすすめる取り組みについて伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q7

A7(環境局長)

○  光化学オキシダントやPM2.5の原因であるVOCの排出削減のためには、暮らしの中でも多く使われているVOCを減らすことが重要である。

○  このため、都民が水性塗料や可燃性ガスを使わないスプレーなど低VOC製品を選べるよう、商品の見分け方をわかりやすく取りまとめたリーフレットを作成して、周知している。また、光化学スモッグが発生しやすい夏には、事業者にVOC排出削減を依頼するだけでなく、都民にも広報東京都などで削減の協力をお願いしている。

○  引き続き、日常生活から排出されるVOCの削減について、さまざまな機会をとらえて都民に普及啓発をしていく。

 先日、国がPM2.5の排出抑制策のあり方について中間まとめを公表しました。その中で、自動車からの蒸発ガスであるガソリンベーパーについて対策を検討すべきとしています。給油等で排出されるVOCは都内総排出量の14%にのぼり、自動車やガソリンスタンドの対策が求められます。

 アメリカでは、自動車の対策が進んでいます。給油や走行中の蒸発ガスを回収し、車の燃料として再利用できる回収装置の装着を義務づけているのです。これはORVR車というクルマですが、日本の自動車メーカーも、アメリカ向けの輸出車はORVR車としているにもかかわらず、国内向けには販売されていません。

 VOCの発生を抑制するため、日本でもアメリカと同様にORVR車へ転換させていくことが重要と考えますが、見解を伺います。・・・・・・・・・・Q8

A8(環境局長)

○  都は、条例に基づき2001年度から、ガソリンスタンドの設置者に対して、タンクローリー車から貯留槽に移す際に発生するガソリンベーパーについて、回収設備の設置を義務づけている。

○  一方、ガソリンベーパーは、自動車への給油時、走行時や駐車時においても大気中に放出されている。こうした場面でのガソリンベーパーを回収できるORVR車は、技術的に直ちに対応可能であり、ORVR車への転換はVOC削減に有効な対策である。

○  そのため、昨年11月に、九都県市が連携し、自動車の保安基準を定めている国に対して、ORVR車の早期義務づけを要請している。

●水循環について

今年は、1999年に策定された「水循環マスタープラン」の目標年となっており、水循環の推進に関する条例の制定が、この中に盛り込まれています。折しも、昨年、国は水循環基本法を制定・施行しました。この法律では、河川水だけでなく地下水も含めて、「水が国民共有の財産であり公共性の高いものである」としており、この理念を活かした条例が必要だと考えています。地下水は水循環で大きな役割を果たすからです。

水循環マスタープランの最終年として、これまで実施してきた施策について評価・検証し、次につなげていく必要があります。このマスタープランには、東京に降った雨と、河川や下水道への流入、利用、蒸発、地下浸透など、トータルな水収支をはじめ、地下水についても記載されています。

都民にとって身近な水辺である湧水は、比較的浅い地層の地下水が湧き出すもので、水循環の健全性をはかるバロメータの1つでもあると考えます。東京の湧水の現状と保全に向けた都の取り組みについて伺います。・・・・・・Q9

A9(環境局長)

○  都市化の進展による人工被覆率の増大に伴い雨水の地下浸透が減少すること等により、枯渇が認められる湧水がある一方、降雨量が増えると、一度涸れた湧水の復活や水量の増加も確認。

○  湧水は、豊かな自然環境を創出し、都民が、直接触れることができる身近な水辺であることから、地域の自治体が中心となって保全を図ることが重要。

○  このため、都は、区市町村に対して、地域の実情に合わせた取り組みを促すため、先駆的な湧水保全策の情報を共有し、活用するための研修会を開催するなど、技術的な支援を行うほか、広く湧水の魅力を紹介するマップを作成し、都民の普及啓発に努力。

○  今後とも、区市町村と連携し、都民に身近な地域の財産である湧水の保全に向けて、着実に取り組む。

マスタープランには、地下水涵養量を増大するための施策が示されています。都では、環境確保条例に雨水の地下浸透の促進を入れ、雨水浸透ますの設置など雨水浸透施策を推進していますが、その意義と期待される効果について伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q10

A10(環境局長)

○  都市部での自然の地下水涵養能力が低下している中、地下水を保全するためには、揚水規制の実施とともに、地下に雨水を浸透させる施策の実施が有効。

○  雨水浸透施策が適切に実施されることで、湧水地点の保全が図られ、それを水源とする河川流量の回復等が図られるほか、地表付近の地下水が蒸発することで、地温が低下し、ヒートアイランド現象緩和にも効果。

○  また、降雨時の河川の急激な増水を緩和する治水機能など、多くの効果を期待。

○  都は、「東京都雨水浸透指針」を定め、区市町村と連携し、都民・事業者の協力を得て、雨水浸透ますの設置、浸透性舗装や緑地の確保等の雨水浸透施策を推進していく。

水循環基本法では、国や自治体が、水の貯留・涵養機能の維持・向上を図るため、森林や河川、農地、都市施設の整備など必要な施策を講ずるものとしています。このため、都は、地下水の公共性を踏まえて、マスタープランの見直しにあたっては、雨水浸透に配慮した都市づくりの方向を示すべきと考えますが、見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q11

A11(都市整備局長)

○  都は、これまでも、民間開発などの機会をとらえ、緑地の確保や雨水浸透施設の設置を促進するとともに、透水性舗装の普及などに取り組んできた。

○  近年、東京においては、時間50ミリを超える豪雨が増加する傾向にあり、降雨状況に変化が生じている。

○  今後、水循環のマスタープランの改定にあたっては、こうした点も踏まえ、雨水浸透についても適切に対応していく。

●人権について

昨年末に発表された東京都の「長期ビジョン」において、東京がめざす「世界一の都市」を「生活習慣・文化・価値観などの多様性や人権が尊重され、だれもが幸せを実感できる都市、だれもがそこに住み続けたいと思う都市」と定義されました。

また、知事は施政方針において、「東京都は、平和の祭典であるオリンピック・パラリンピックの開催都市として、大きな責任を有しております。これからも平和で基本的人権が尊重される社会を守る姿勢を貫いてまいります」と発言されました。

知事はこれまでも、議会や定例会見等において、人権について発言されていますが、「基本的人権が尊重される社会」について、知事の見解を伺います。・Q12

A12(知事)

○  そこで暮らし、訪れる人々が、幸せを実感する、これが、私がめざす都市の姿であり、そのためには、基本的人権が尊重されることが前提。

○  オリンピック憲章の理念を広く社会に浸透。基本的人権が尊重される社会を世界に示す。

○  パラリンピック成功のためにも、ひとを思いやる気持ちを一歩進める。

○  現在都は、「人権施策推進指針」の見直しを行っており、新たな指針に基づき、人権意識をさらに高める。

都が昨年7月、人権施策推進指針の見直しに向けて有識者懇談会を設置し、半年間の議論を経てまとめられた提言が、このほど公表されました。提言では、新たに取り上げるべき人権課題として、インターネットによる人権侵害やハラスメント、路上生活者などと並んで、性同一性障害者と性的指向が加えられました。今日的な人権課題があまねく捉えられていると評価するものです。なかでも、性的指向をふくむLGBT、性的マイノリティーの問題は、いま取り組むべき重要な課題と考えます。有識者懇談会において、性的マイノリティーに関してどのような議論が交わされたのか伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・Q13

A13(総務局長)

○  有識者懇談会では、人権課題の現状を把握するため、関係団体、各分野の専門家等へのヒアリングを実施。

○  性的マイノリティに関しては、周囲から理解されない状況があることの報告を受け、現在制定されている法律の枠組みや医学的見地についての議論を経て、提言がまとめられた。

 質問の最後に、当事者が置かれている深刻な状況として、就学前の幼児期に自分の性への違和感に気づくケースもあること、そのことで自分のアイデンティティーについて悩み苦しむ子どもが現実にいることを述べておきたいと思います。LGBTの人は、そのことを家族にさえ言えないため、相対的に自己肯定感が低く、自殺の比率が一般の6倍にものぼることから、学校教育においてLGBTについての気づきや理解を深める取組みが必要、と当事者は訴えています。

このような実態を受けて、LGBTの若者の生きづらさの解消や自殺予防に取り組む市民活動団体が調査活動を行なっていますが、都教育庁はそのような活動と連携し、この問題を教育課題として取組むべきです。このことを申し上げ、質問を終わります。