第2回定例会 予算特別委員会 まとめの意見 2026.3.18 そね文子 

シスターフッド杉並を代表して、2026年度杉並区一般会計予算並びに各特別会計予算及び関連諸議案について意見を述べます。
私たちの暮らしは、世界のありようと深くかかわっています。まずは、現在の世界情勢から見ていきます。ロシアによるウクライナ侵攻から4年、パレスチナ・イスラエル間の紛争激化から1年半が経過しました。今年に入り米国とイスラエルによるイラン攻撃が強行されるなど、中東情勢はかつてない混迷を極めています。自らの利益のために「気に入らない国」を武力で抑え込む米国の無法ぶりは、国際秩序を破壊する暴挙です。この大国の暴走は原油価格の再高騰を招き、エネルギー不安と構造的な物価高の原因となっています。

国内に目を向ければ、先の衆議院選挙における自民党の大勝により、政治の均衡は著しく崩れました。圧倒的な議席数を背景に、政府は国民が望まない憲法改正への動きを加速させ、防衛費を過去最大規模の9兆円超へと跳ね上げました。米国にどこまでもついていく政府に対し、私たちは不戦を誓った平和憲法を何としても守り抜かなければなりません。さらに、甚大な犠牲を出した福島第一原発事故の教訓を忘れ、老朽原発の稼働の延長や新増設といった「原発回帰」へ突き進む姿勢は、地震列島に暮らす私たちの命を軽んじる許されない行為です。

円安とインフレの波が止まらず、実質賃金が低下し続けるなか、格差は拡大の一途をたどり、若者が将来に希望を持てない社会が少子化を加速度的に進めています。今、政治が最優先で取り組むべきは、軍拡でも改憲でもなく、人々の暮らしを足元から支える徹底した物価高騰対策と社会保障の拡充です。

こうした先の見えない不安定な社会状況の中、私たちシスターフッド杉並は、住民に最も近い基礎自治体の役割である「区民福祉」をいかに守るかという視点で予算審議に臨みました。生活困窮や孤立から区民を守り、次世代が希望を持てる予算となっているか。そして「住民自治」の視点が貫かれているか。私たちは、平和と暮らしを守る立場から本予算を精査しました。基本構想に基づく総合計画、実行計画により編成された2026年度予算に対し、区政経営計画書の主要事業の概要に沿って主な課題について、予算特別委員会での質疑ならびに時間の制約で尽くせなかった論点も含め以下意見を述べます。

まず初めに財政についてです。

一般会計は2,535億2,800万円で、前年度比79億2,500万円、3.2%の増となりました。円安による輸入資材の高騰に加え、本来は夏休み期間中に集中して進めるべき学校改築も、酷暑に伴う作業制限や中断の頻発により、工事費の増大や工期の遅延が常態化していることは大きな課題です。ふるさと納税制度や国による税源偏在是正措置の影響による大幅な減収も歳入における課題となっています。
こうした中、当該年度は2023年度に改定した第二次実行計画の最終年であり、総合計画の前半最後の年にもあたります。児童相談所の開設と関連事業、教育分野での学びの多様化学校整備に向けた取り組みなど、新たな施策に期待するところです。あわせて、いのちを守るための気候危機対策、重層的、包括的な支援体制の強化、防災・減災対策、そして水害対策としてのグリーンインフラの推進は喫緊の課題に対応する施策として評価するものです。また再整理された財政健全化と持続可能な財政運営を確保するための基本的な考え方に基づき、現在の金利状況と基金積み立ての状況を鑑み、区債発行を一部見送り施設整備基金を取り崩すなど、臨機応変に対応した点も評価できます。今後も大規模災害や経済事情の著しい変動等による減収へ備え、老朽化が進んでいる区役所本庁舎の建て替えも見据え、引き続き健全な財政運営の実現に取り組むよう求めるものです。

次に、区民生活についてです。

・区が区民に配布した杉並区防災・防犯カタログには災害時に役立つ情報、特殊詐欺被害防止など、重要な情報が掲載されています。それを埋もれさることなく、地域の集まりなどを活用した出前講座の実施や、解説動画の配信など、様々な手法を講じて今後も活かしていくことを求めます。

・酷暑を「命を脅かす災害」と捉えた網羅的な暑さ対策の拡充が図られていることを確認しました。特に震災救援所における電源の分散化など、停電時でも空調が稼働できる仕組みづくりは、危機管理の観点から極めて重要です。この点について発災時の安全確保に直結する備えとして、実効性のある整備を引き続き求めます。

多文化共生施策の充実と、その重要性についても確認しました。外国籍住民を単なる「支援対象」ととらえるのではなく、共に地域を創る「担い手」として包摂し、主体的に巻き込んでいく更なる工夫を求めます。「待ったなし」の時代にあって、誰もが孤立することなく、安心感を持って暮らせる地域秩序の維持に向け、今後も区の主体的な取り組みを求めます。

・杉並産農産物の学校給食への利用につなげるために区とJA、学校、農業者が連携した新たな仕組みができたことを歓迎し、今後の継続的な供給体制の構築に期待します。

・ジェンダー平等施策について、仮称ジェンダー平等条例の検討や生理用品の無料配布の拡充は、区民の尊厳や健康を支える取り組みとして評価します。ジェンダーという概念については区民の理解に差があることも事実であり、今後は日常生活の具体例を通じた丁寧な説明や啓発を進めることを求めます。

・平和マップについてです。表紙に掲載された半裸の女性像に関し、他の議員からも指摘がありましたが、区からは「平和を象徴する像である」との説明がありました。しかし、平和を伝えるために女性の身体をあえてそのような形で用いる必然性はあるのでしょうか。結果として、女性の身体が象徴的に利用され、鑑賞の対象として客体化されてしまう懸念については、慎重に考える必要があります。公的な広報物は、区民に対して発信するメッセージそのものです。だからこそ、意図せず特定の性別の身体を象徴的に用いることが適切かどうか、多角的な検討が必要です。今後、あらゆる公的な広報物の作成にあたっては、ジェンダー視点によるチェックを行う仕組みを構築することを求めます。

区民センターなどの貸し部屋について、利用率が高まることは、地域の活動が活発になることで、区民のコミュニティー形成が促進されるとの答弁を得ました。高齢化、単身化が進行中である杉並区にあって重要な機能です。利用率の推移では、2011年度から2017年度までに20%ほど下がっていることがわかりました。登録団体の半額割引制度を廃止したことが影響していると考えます。原因を究明し、対応するよう求めます。

第3に、保健福祉についてです。

・高齢者の見守り体制に、新たに見守りキーホルダーがケア24を中心に全区的に取り組まれることを評価します。元気なうちからケア24とつながることで高齢期を安心して過ごせる杉並区にしていこうという気運を地域住民にも持ってもらうよう、見守りキーホルダーの取組の周知徹底を求めます。

・認知症施策の推進において、この間提案してきた杉並版「希望をかなえるヘルプカード」の実現を評価します。今後は認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らし続けるためのツールとして活用が広がることを期待します。

・介護保険事業者支援については、この間、特に訪問介護事業所の報酬単価切り下げに対する区独自の支援策を要望してきましたが、今般、介護職員・介護支援専門員居住支援手当や介護人材採用活動経費の補助が予算化されたことを評価します。引き続き国に対しては訪問介護事業所の報酬単価引き上げの意見を上げていただくよう要望します。

・障がい者の移動支援については課題の解決に向けて、対象者や外出の幅が広がるとともに、ガイドヘルパーの処遇も大幅に改善されることとなったことを評価します。

・コロナ後遺症について、苦しむ区民への支援体制の充実が重要です。相談体制の整備や医療機関との連携、情報発信の強化、就労困難となった場合の生活支援など、引き続き実態把握と支援の充実を求めます。

区民センターの水屋の利用率はかなり低くなっています。生け花の道具の用意はされていません。ゆうゆう館の茶室も同様で、利用率ゼロも珍しくありません。機能継承施設であるコミュニティふらっとには和室がすでにほとんど設置されていません。老人福祉法第13条にいう「老人福祉の増進のための事業」として、あらたなニーズにこたえる施策の検討を求めておきます。

生活保護の相談件数が前年比、8%増となったことは、窓口に向かうことのハードルが低くなった現れだと感謝します。ケースワーカーの勤務の状況については、家庭訪問計画の進捗状況から、困難事例の存在が推測されます。適切な人員確保に引き続き取り組むよう求めます。

第4に、子ども・家庭支援についてです。

・子どもの権利に関する条例が昨年4月に施行され、救済窓口や子どもの意見聴取のしくみが充実することを期待します。また、今年の秋には区立児童相談所の開設、社会的養護自立支援拠点事業がスタートします。子どもの最善の利益を保障し、[杉並の子どもは杉並で守る]とする区長の決意とともに、地域でも子どもを守る気運を私たちも広げていきたいと考えています。

第5に、環境施策についてです。

・杉並産エネルギーの創出について確認しました。脱炭素の視点だけでなく、エネルギー費用の域外流出を防ぐため、太陽光発電の導入加速と住宅の断熱化を進める必要性を問いました。特に2030年の目標達成に向け、数値に基づく進捗管理を求めるとともに、補助金を学校等の公共施設改修に最大限活用するよう財源確保を求めます。 あわせて区営住宅の断熱効果の検証をし全区的な住宅レベルの向上に繋げることを求めます。国の対策を待つのではなく、杉並の力でエネルギーの自給自足、脱炭素化を全庁的に加速することを求めます。

・「みどりの基本計画」改定については代表質問、一般質問で計画の内容と区の意気込みを問いました。区内のみどりが減少している事実を受け止め、「地域みんなで守る財産」とみなし、公共と民有双方でみどりを守り活かし将来世代に引き継いでいく区の積極的な姿勢を確認できました。

第6に、都市整備についてです。

グリーンインフラ杉並区民会議、事前復興まちづくり、西荻デザイン会議という3つの都市整備事業を通じ、対話を基軸とした区政の実践が進んでいること、国の方向性とも一致していることを確認しました。区民の安心・安全に関わる施策には、平時からの信頼関係の構築や、区民の理解・協力といった、定量的に捉えにくい要素が、施策の実効性を大きく左右するとの答弁がありました。職員がイキイキと主体的に働く様子も定量的に捉えにくい要素の一つですが、当会派では、数々の会議体を傍聴し随所でそれを確認しています。今後も全庁一丸となって住民参加型の取組を進めて頂きたいと思います。

・居住支援協議会が設立されて10年、住宅確保要配慮者に対して単なる入居支援に終わらせることなく、入居の前・中・後の居住支援を充実させ、多様な主体が役割分担をしながら取り組みを強化するために居住支援協議会の運営見直しに期待します。どんな状況にあっても安心できる住まいの確保の実現に向けて進めるよう求めます。

西荻窪の補助132号線道路は、事業認可が下りて以来少しづつ土地の買入れが進んでいます。一方、建設反対の声もいまだにあります。答弁では、乱暴な土地取得はしないと明言いただきました。長い目で取り組むようお願いします。

第7に、教育についてです。

・包括的性教育の取り組みや性的マイノリティの子どもへの配慮など、子どもたちの人権と尊厳を守る教育の推進が重要です。加えて、学校管理職における女性比率の課題など、教育行政におけるジェンダー視点の主流化についても今後の取り組みを期待します。

・通常学級支援員・特別支援学級介助員を増員するとともに、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの配置を拡充することは重要です。しかし通常学級に在籍する知的障がい児童・生徒は学習支援教員の支援が受けられないという制度は、誰一人取り残さないという杉並の教育にてらして改善が必要です。それに対し教育長から前向きな答弁がありました。改善のための予算措置を行い、該当する知的障がいの児童・生徒と保護者に学習支援教員のことを知らせ、支援が受けられるよう対応を求めます。

・帰国・外国人児童生徒への支援として、一般質問で求めた対話を通じて学習言語の定着度を測るDLAが導入されたことを評価します。外国人児童・生徒への80時間の取り出し授業で不十分な場合、追加の40時間の授業を確実に受けられる予算面の措置を求めます。

・教員の負担軽減のためにエデュケーション・アシスタントの増員、区費時間講師の臨時的増員による小学校中学年の学級担任教員の負担軽減が図られたことを評価します。今後も、多様化する子どもに教員が余裕を持って対応できるよう、取り組みを進めていただくことを求めます。

最後に対話の区政についてです。

都市整備の質疑の中で、これからの自治体経営において、対話の積み重ねをどのように位置付けるか、というやり取りがありました。区長からは、杉並区が進めている区民参加型の対話の取組はコストではなく、将来の対立や停滞を未然に防ぐための公共的基盤への投資であるとの発言がありました。こうした行政と区民との信頼関係は社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)という重要な無形資産であり、この信頼関係を構築することの意義が明確に示されました。「対話は決めないためのものではなく、よりよく決めるためのものである」という区の姿勢に当会派としても賛同するものです。今後も区民同士、区民と行政との対話を進めながら、施策をさらに向上させることを求めます。

以上申し上げ、議案第28号、2026年度一般会計予算について賛成いたします。各特別事業会計予算については、奥山たえこは反対、それ以外は賛成といたします。

次に、予算関連議案について意見を述べます。

議案第22号は、選挙公営のうちポスターとビラの作成費の単価を引き上げるものです。2023年の区議会選挙では、ポスターの作成単価が、1112円から86円までと、12倍もの開きがあります。これは候補者が作成業者を自由に選定できる一方で、選挙管理委員会がその内訳を把握せず、請求通りに支払っていることにあります。その点から、引き上げには疑問も残りますが、候補者に適正な支出を求めることで、適正化は図りえると判断し本議案には賛成します。その他の議案にも賛成いたします。

今回の予算特別委員会において、委員側から理事者に対する権力勾配を利用した言動が散見されました。言うまでもなく、厳正な質疑をする委員の権利は保証されるべきです。しかし大きな声を出したり相手の尊厳を傷つけるような激しいことばを浴びせることは、職員の萎縮や昇任意欲を損ねるだけでなく、結果として区民に対する説明の質にも影響しかねません。議会審議がお互いに敬意をもって行われることを強く望みます。 結びに当たり、資料作成に御尽力いただいた職員の皆様に感謝を申し上げ、シスターフッド杉並の意見開陳といたします。
ありがとうございました。