第1回定例会一般質問と答弁 2025 2 18 奥田雅子

Q1. 認知症をめぐる考え方や区の施策のあり方を、従来の「問題が生じてからの後追い対処や部分的な施策」ではなく、今後は「認知症になる前の元気な段階から住民や当事者の視点にたった統合的な施策」に大きく舵を切りかえるべき時期にきていると考える。そのような住民・当事者目線にたった統合的な施策への転換を着実に進めている自治体が全国でも増えており(例えば、世田谷区、静岡県富士宮市、藤枝市、神奈川県大和市、和歌山県御坊市、鳥取県鳥取市など)、そうした転換が、基本法で推進されている中で、杉並区として認知症施策の抜本的な改革を、どのように進めようとしているか、方針とその改革の具体策を伺う。

A1.区長)昨年12月に開催した区民等を対象とする「認知症共生講座」に参加して、認知症施策の第一人者である粟田主一氏のお話を伺い、改めて「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の意義と認知症の人と共つくる共生社会づくりの重要性を痛感した。今後の認知症施策を本人参画により進めること、認知症になる前から総合的な施策を進めることなど、奥田議員の基本的な考えは私も全く同感だ。

Q2. 認知症サポーター養成講座やステップアップ講座の受講から、実際に地域の中で活動していけるように、活動を組織化するためのしっかりとしたしくみや体制づくりが不可欠であり、またそれを継続的に推進する適切な人材、たとえば認知症地域支援推進員を区として適切な数を確保することが重要だと考える。国の基本計画でもそれらが明示されているが、区としての考えや計画はどうなっているのかを伺う。

A2.高齢者担当部長)区では認知症サポーターなどの活動を推進したり、活動を組織化したりするための核となる人材として、所管課の保健師3名を認知症地域支援推進員に位置付け配置している。この3名を要役として各ケア24に1名ずつ配置した地域包括ケア推進員が地域の方々に認知症サポーター養成講座等の受講を促すほか、受講修了者などをチームオレンジとして組織化し、組織化した後の活動支援を行っているところだ。

こうした3名の認知症地域支援推進員と20名の地域包括ケア推進員による体制は適切なものと考えているが、引き続き各地域での認知症施策の取組がより充実したものとなるよう、今後情報共有と意見交換等を密にしていきたい。

Q3.区でも、チームオレンジの数を増やすことのみではなく、その目的やしくみ自体をしっかりと検討することが不可欠であり、これからチームを立ち上げるところにとっても、また、既に立ち上げている地域にとっても、全国各地の先行地域と交流をはかり、知見やしくみを、しっかり学ぶことも必要だと考えるが、区の見解を伺う。

A3.高齢者担当部長)チームオレンジについては、単に設置数を増やすのではなく、その目的を共有の上、活動内容等をしっかり検討する必要があるという指摘は区としても大切にすべきことと考える。また、他自治体の先行事例に学び、必要に応じて実践に移すなどの努力が欠かせないものと考える。

Q4. チームオレンジの場に認知症本人が参加してくることも社会参加ではあるが、もう一歩踏み込んで、本人が望むことやりたいことをかなえる、例えば、やってみたい仕事をマッチングする等、チームオレンジに様々な地域資源が集うことで叶えられるのではないかと考える。地域の中ではたらくと周りの人の理解も広がるし、ささやかであっても認知症本人にとっては社会参加していることへの自信にもつながっていくのではないかと思うが、いかがか。

A4. 高齢者担当部長)区内のチームオレンジはそれぞれ認知症の人の参画を得て活動しており、それらの当事者がやりたいことを叶えていく活動の意義は大変大きいと考えるので、これらの指摘を各チームオレンジのメンバー等と共有し、今後の活動への反映を図っていく。

Q5. 杉並区ではオレンジカフェや本人交流会はどのように位置づいているのか、様々な取組について対象や内容のわかりやすい発信が求められていると思うが、区の考えを伺う。

A5. 高齢者担当部長)現在、区内の認知症カフェではお話いただいた小平市や千葉市のような取組は行われていないと承知しておりますので、カフェを主催している団体に、区から情報提供するとともに、そうした取組みの意義や今後の実施可能性等を意見交換していきたい。

Q6. ヘルプカ-ドについて、ケア24高井戸と善福寺が試験的にカードの配布および活用を行い、全ケア24職員対象にヘルプカ-ドの活用に関する説明会を行ったと聞いているが、いまだに普及していないのはなぜか。自治体によっては行政が積極的にカードを作成し、配布、啓発に努めようとしており、以前区でも独自のカードを作るようなことを言っていたと思うが、その計画はあるか確認する。

A6. 高齢者担当部長)ヘルプカードについて、区内では従前からのケア24高井戸とケア24善福寺に加え、令和6年度からケア24堀ノ内とケア24和田でも活用を開始したが、ご指摘の通り広く普及していないので、今後改めてケア24センター長会で活用を促していく。なお、区としては令和7年度に改訂を予定する認知症あんしんガイドブック、いわゆる認知症ケアパスの冊子に、切り取って使えるヘルプカードを掲載していくことを検討しているところだ。

A7. 医療と介護の現場においても新たな認知症観を浸透させていくことが重要だと考える。特に医療現場においては病状を見るだけでなく、その人がこれからどのように地域の中で暮らしていけばよいのかを具体的にアドバイスできるように地域資源情報なども伝えておくことが必要であり、それによって介護現場とも連携が図れるのではないかと思うが、区の見解を伺う。

A7. 高齢者担当部長)医療と介護の連携についても、新しい認知症観を浸透させていくことが重要との指摘は区としても同様の認識だ。議員からは具体的な医療機関へのアプローチ方法のご提案があり、それも参考に今後の具体的な取組を関係部門と共に考えていきたい。

Q8.2025年度予算に認知症あんしんガイドブックの改定予算がつき、2025年度末に4000部発行とあるが、認知症本人や家族、支援者などに、単に意見を聴くだけではなく、現在のケアパスの良いところ、改善した方が良いことなどを本人の視点で一緒に考えながら作成してほしいと思う。区はこのガイドブックの改定作業をどのように行っていこうとしているのか、伺う。

A8. 高齢者担当部長)令和7年度の改訂に当たっては、国立長寿医療センターや他自治体の手引きなどを参考にしつつ、認知症介護研究・研修東京センターの専門的な助言も踏まえて、具体的な進め方やスケジュールを定め、より一層本人参画の視点を重視した改訂作業をすすめて行く考えだ。

Q9. 4000部のケアパスはどのような活用を考えているのか伺う。

A9. 高齢者担当部長)認知症ケアパスはケア24のほか、ゆうゆう館、図書館、銭湯、区民センターなど、多くの区民が利用する施設に配布しており、改訂後も可能な限り幅広く配布していく。

Q10.認知症普及啓発月間では区内図書館や区民センター、コミュニティふらっと、ゆうゆう館などでもチラシやリ-フ、ヘルプカ-ドを配布する等、同時多発的にコーナ-をつくって発信するチャンスにしてはどうかと考えるが、いかがか。

A10.高齢者担当部長)9月の認知症普及啓発月間を中心に実施する普及啓発の取組について、より一層多くの区民に認知症に関する正しい知識と認知症の人に関する正しい理解を深めてもらう観点から、可能な限り情報発信する機会と場を増やしていくように努力していく。

Q11. 高齢者施策推進計画取組方針4からは、地域包括ケアシステムと認知症施策をどのように一体的に推進していくのかが今一つ見えてこない。この一体的に推進するということを、区はどのように捉えているのか伺う。

A11. 高齢者担当部長)地域包括ケアシステムと認知症施策を一体的に推進することをどのように捉えているかとのお尋ねですが、区においても地域包括ケアシステムの構築に当たり、今後の認知症高齢者の増加を見据えた認知症高齢者の地域生活支援を大切にすべき視点の一つに位置付けています。このことに加え、認知症介護研究・研修東京センターから頂いた助言も踏まえ高齢者施策推進計画における4つ目の取組方針として「地域包括ケアシステムの推進・強化と認知症施策の推進」を掲げ、両者を一体的に推進することとした。こうした取組方針の下、生活支援体制整備事業の第2層協議体においても、各協議体の実情に応じてチームオレンジの活動状況や認知症本人ミーティングの事例を共有するなどしている。

Q12. 今後、この取組方針4を具体化するための「共生を共に作るアクションプラン」がやはり必要ではないかと考える。当事者を含めた様々な立場の人が参画してワ-クショップ等を通じてアクションプランをつくり、共生に向けたアクションをまちぐるみで活発に進めている自治体を参考にしつつ、地域特性に応じた計画作りを進めることが求められているのではないだろうか。杉並区の住民、専門職等の豊富な人材とともに、住民・当事者参画型の認知症施策のアクションプランづくりを進めるべき時期に来ていると考えるが、区としての考えや予定を伺う。

A12. 区長)当区が昨年策定した高齢者施策推進計画もその策定プロセスの中で、認知症の人の意見を聞く機会を設けており、また今般改定した健康医療計画においては、新たに盛り込んだライフコースアプローチの視点に立って、若い時期からの健康づくりに力を入れることとしたところだが、議員から問題提起されたように、認知症に関する総合的な施策展開を図ると言う意味で、計画自体やそれに基づく施策についても見直すべき点は様々あるのではないかと考える。こうした中、国は昨年12月に認知症基本法に基づく認知症施策推進基本計画を策定し同様に東京都も現在計画策定を進めているので、議員が紹介された他自治体のアクションプラン等と合わせて参考にするとともに粟田主一氏がセンター長を務める認知症介護研究・研修東京センターの専門的な助言も得ながら、次期高齢者施策推進計画の策定作業を行う令和8年度に向けて当区としての計画や施策のあり方を充分検討するよう所管に指示していく。