子どもは「地域で育つ」「地域が引き受ける」ということ

杉並ネットお話サロンは9月29日、「里親さんにきく 里親のはなし」と題して、区内で長年にわたって里親活動を続けてこられた大和初美さんをゲストにお招きしました。

生活者ネットや他団体と連携して構成する「子どもにやさしいまちづくり」チームでは、杉並区の子どもの権利条例づくりに向けた学習などを重ねている 8/30

里親の制度は児童相談所(児相)の事業で、東京都が運営を担っています。3年後の2026年には区立児相の設置に伴い、杉並区の事業として運営されることになります。児相開設の準備が進むなか、杉並区では子どもの権利条例づくりに向けた動きがスタートしたところでもあり、里親についてのあれこれを当事者からお聴きしよう、と企画しました。

 

大和さんご夫妻には実子がひとりいますが、30年来、里子と生活を共にし、大和家にはいつも18歳未満の里子がいて、今もいます。里子は18歳になったら養育家庭を巣立つ決まりなので、ひとりが巣立っていくと大和家には次の里子がやってきて新しい生活が始まる、ということを繰り返してきました。

 

どの里子もやってきたのは小学生くらいのときで、乳児と違ってお互いになれるまでに苦労もあったと言います。でも「楽しい!」と力強く言い切る大和さんはすがすがしく、敬意をおぼえずにいられません。その養育方針は明快で、「自立させること」と言い、里子たちに何かしら資格を取るよう促し、自立して生活できるようサポートしてきました。

 

里親同士をつなぐリーダー的存在でもあり、経験の浅い里親にとっての「頼れる先輩」は、児相の側からも信頼のおけるベテランなのだと思います。区立児相のスタートを控えている杉並区にとっては、貴重な人材に違いありません。

 

10年以上前、私の区議時代に区内で里子の死亡事件が起きたとき、大和さんと知り合ったことが、里親制度に関心を寄せるようになった大きなきっかけです。その後、都議になってからは、都政の課題としてこの問題に取り組む中で、「(里親制度を擁する)児相は地域の自治体がやるべき」だと確信するようになりました。

 

子どもは地域で育つ。だから地域がその育ちを応援し見届けて、子育てを地域が引き受ける。それが本来のありようだと思います。大和さんが里親になろうと思ったのも、杉並に住む前の社宅住まいだったときに、隣近所同士が助け合って子育てする経験を通して、子どもは地域のいろいろな人の中で育つのがいい、と実感したからだそうです。

 

いま区内の養育家庭は15世帯、里子は17人だそうです。施設にいる子がひとりでも多く養育家庭に移ることができるように、見守っていきたいと思います。(杉並・生活者ネットワーク事務局長 小松久子)

 

東京都の里親制度についてはこちらをごらんください→https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/satooya/seido/hotfamily/satooya/index.files/kateiwohituyoutositeirukodomo2022.pdf