菅首相の言う「自助・共助・公助そして絆」に懸念あり

秋を告げる花 シュウメイギク

菅義偉政権が発足しました。

安倍政権における官房長官時の発言や態度で垣間見えた人柄や考え方が、首相になったからと言って変わるはずもなく、言いたいことはたくさんありますが、ここでは菅さんが基本姿勢として述べている「自助・共助・公助そして絆」ということについて指摘したいと思います。

私自身も戦後生まれで、5歳と違わない年代です。私たちの育った環境はベビーブーマー達に囲まれて(私はそれよりちょっと年上ですが)、とにかく競争・競争でした。所得倍増から東京オリンピック、そしてバブルと常に経済が右肩上がりの社会でした。ですから社会的セーフティネットなどという考え方すらなく、自分で駆け上がるしかなかったのです。そしてそれができた時代でした。

しかし、サッチャー(英国)、レーガン(米国)、中曽根に見る新自由主義、そして小泉政権・竹中平蔵の路線で拍車が付き、ついに格差拡大の社会に突入したのです。その中にあってもヨーロッパ諸国ではやり直しができるような土壌がつくられていました。他方の日本では失業してもやり直しができる教育制度や就職しても必要があれば大学へ戻れる制度等々、全くそのセーフティネットがありませんでした。落ちるところまで落ちて初めて生活保護というセーフティネットがあるという状況です。日本の格差は拡大するばかりです。

「努力した者が報われるべきだ」ということは良いでしょう。しかし、「俺は努力して競争に勝ってきた」という新自由主義的な考えだけではいまや立ち行かなくなった日本になってしまったとの自覚を持つべきです。首相が「自助」を強調するとき、その自覚はあるのだろうかと懸念します。  (杉並・生活者ネットワーク代表 藤田愛子)