第3回定例会一般質問  2020.9.11 奥田雅子

いのち・平和クラブの一員として

  1. 災害時の授乳支援について 2.ハラスメントを許さない職場、地域の実現に向けて  一般質問します。

先ず、 災害時の授乳支援について

乳児の栄養については母乳育児や人工乳との混合、人工乳のみと母親の希望や事情、考え方により人それぞれであり、その選択が尊重されることは大事ではありますが、子どもを主体として見た場合、栄養の確保、免疫力の獲得、情緒の安定、さらに災害時における状況などの視点からどのような栄養法を選択するのかは妊娠期から知識として持っておくことが重要だと考えます。乳幼児栄養については現在、広い視野から国内外でも一定のガイドラインが作られており、国際的な規準としては、ミルクのマーケティングについて、WHOがすでに1981年に採択した「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」があります。乳児用ミルクや哺乳びんの宣伝や販売促進、妊娠中の女性や母親、その家族にむやみやたらと試供品の提供をしてはならないことや保健医療システムは製品の販売促進に利用されてはならないなど、偏った情報とならないように製品を宣伝することを規制し、政府や企業、保健医療システムが守る規準として定められています。日本はこのWHOの国際規準に賛成していますが、国内法制化をしていないため、国際規準の内容を正しく理解していない人が少なくないと言われています。

一方、災害対策の観点では、国連機関や緊急援助活動に取り組むNGOや専門家から構成されるIFE(災害時の乳幼児栄養)コアグループが2017年に発行した『災害時における乳幼児栄養:災害救援スタッフと管理者のための活動の手引き』第3版の日本語訳が2019年3月1日に発行されています。このような世界の動きを受けて、日本国内ではNPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会と母と子の育児支援ネットワークが共同で2019年3月11日に災害時の乳幼児栄養支援に関して「国際ガイドラインに沿った防災対策を」という声明を出しています。

そして、今年5月に内閣府男女共同参画局から災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~(以下、内閣府ガイドライン)が発行されました。その中にも今回取り上げたい、妊産婦や母子に対する目配りや栄養支援によって災害関連死を予防することなどについて明記されています。

このように、この間、災害時における乳幼児の栄養支援に注目が集まっている中で、杉並区ではどのような対策が進められているのかを確認していきたいと思います。

私は先日、乳幼児の栄養のあり方についてのセミナーを受講する機会がありましたが、講師の母と子の育児支援ネットワーク代表の本郷寛子さんによれば、災害時のように極度なストレスがかかると母乳が止まるというのは間違いで、一時的に母乳の出が悪くなることはあっても、吸わせ続けることで再開するようにお母さんの体はできているのだといいます。授乳回数を減らしたり、人工乳の量を増やすと、その分、母乳の生産が減ってしまうということです。母乳にふくまれる免疫物質は災害時に心配な感染症から赤ちゃんを守ってもくれることや調乳の衛生管理や手間もないため、母乳育児をしている場合はできるだけ継続できるように、その気持ちを尊重し・寄り添い・励ますサポートが必要で、安心して授乳できる環境を用意することがとても重要となってきます。そうすることで、人工乳がどうしても必要な人に継続的に十分な量が行き渡ることにもなります。

杉並区の震災救援所管理標準マニュアルには女性の視点が盛り込まれるようになり、救援所での妊産婦への対応も体制が整ってきたことは、昨年の一般質問でも確認しています。しかしながら、赤ちゃんのいるお母さんの現在の栄養法を聞き取ったり、不安な気持ちを聞いたり、母乳の分泌を増やしたい意志があるのかどうかなどの希望に耳を傾け、お母さんに必要な支援につなげていくこと、そのためのアセスメントを丁寧に行うことの意義が救援所運営連絡会メンバーに十分理解されているかといえば、いまだ不十分だと考えます。1昨年の第1回定例会一般質問でも、災害時における授乳支援について取り上げました。その時は日本栄養士会災害支援チームが災害時の乳児の命を守ることを目的にした「災害時における乳幼児の栄養支援の手引き」を紹介し、区は有益だとの認識を示されましたが、その後、区の施策において何か検討がされたのか。救援所では授乳スペースは必須となったか伺います。また、授乳を支援するという観点から、この間の国内外の動きを参考にしながら、震災救援所運営連絡会メンバーの研修や訓練、マニュアルの見直しなどが必要だと考えますが、乳幼児栄養支援の実現に向けて、区はどのように取り組んでいくのか見解を伺います。

①昨年の第1回定例会一般質問でも、災害時における授乳支援について取り上げました。その時は日本栄養士会災害支援チームが災害時の乳児の命を守ることを目的にした「災害時における乳幼児の栄養支援の手引き」を紹介し、区は有益だとの認識を示されましたが、その後、区の施策において何か検討がされたのか。救援所では授乳スペースは必須となったか伺います。

②また、授乳を支援するという観点から、この間の国内外の動きを参考にしながら、震災救援所運営連絡会メンバーの研修や訓練、マニュアルの見直しなどが必要だと考えますが、乳幼児栄養支援の実現に向けて、区はどのように取り組んでいくのか見解を伺います。

③授乳中のお母さんは母乳をつくるためにはいつもより1日に350㎉多くエネルギーが必要とされています。母親が元気でいるためには食事が大事です。ビタミンやミネラルの摂取も重要で、妊婦の場合、流早産のリスク、胎児の成長に必要な神経系の発達にも影響が出る場合があり、食品からの摂取が困難な場合は過剰にならない範囲で栄養機能食品等の利用も必要とあります。災害時の妊産婦の栄養摂取については区はどのように考えているか確認します。

④災害時の乳幼児親子の支援には助産師との連携が欠かせません。そのため、平時からの地域の助産師との連携がとても重要と考えますが区ではどのような連携があるか。また、災害対策の母子支援の検討をする際、助産師や保健師からの情報提供や意見聴取の機会を設けることは可能か伺います。

⓹この間、液体ミルクの活用についても取り上げてきましたが、国内でも生産が可能となり、災害時における活用も前進したと考えます。備蓄の仕方については、今後検討との答弁を得ていました。杉並区では液体ミルクの活用についてどのようにしていくのか確認します。

⑥また、粉ミルクや液体ミルクの備蓄の消費期限が近づいたものを保育園やパパママ学級などで一律配布することは、WHOの国際規準に照らせば違反となると思います。区はどのような対応をしているのか伺います。

⑦内閣府ガイドラインの第3部便利帳のページには授乳アセスメントシートやリーフレット、関連情報が紹介されています。液体ミルクの注意点チェックリストや災害時の赤ちゃんの栄養として、ミルク編と母乳編が両面になっているリーフレット、紙コップでの授乳方法や「どうする?災害時の赤ちゃんの栄養(漫画編)」など平時にも災害時にも役立つツールが具体的に紹介されており、積極的に活用をしていくべきと考えます。また、母と子の育児ネットワークが今年7月に立ち上げた無料の災害時の乳幼児の栄養・授乳支援オンライン相談があります。お母さん対象と支援者対象の2種類があり、赤ちゃんを持つお母さんからのLINEによる相談と乳幼児の栄養・授乳支援に関するオンライン相談となっています。このようなしくみも積極的に活用していくべきと考えます。これらについて子育て中のお母さんの意見を聞くなどして、災害時に必要となるだろう情報や対応について区としてもまとめて準備が必要ではないか。区では妊娠中の方、乳幼児がいる家族向けに知っておきたい!「災害への備え」という冊子を作成していますが、今申し上げたツール類を冊子に反映し、1冊にすべてが収まっているというものにして普及させてはどうか、区の見解をお聞きします。

⑧新型コロナウイルスという新たな感染症の問題もある中で、震災救援所のみならず自宅避難なども視野に入れた対策が求められています。弱い立場にある乳幼児親子の支援のあり方について、議論を深めてほしいと考えます。内閣府のガイドラインのはじめにには、地域防災計画や避難所運営マニュアル等の作成や見直し、庁内の防災・危機管理担当部局と男女共同参画担当部局、福祉部局等との連携、地域防災リーダーの育成等において、女性の視点からの取組みを進め、地域の災害対応力を強化するようにと記載されています。防災はあらゆる区民の事情に対応していかなくてはならない分野だと思いますが、杉並区では防災分野における庁内横断的な連携をどのようにイメージし、取り組んでいくのか最後に確認し、次のテーマに移ります。

次に、ハラスメントを許さない職場、地域の実現に向けて

東京・生活者ネットワークではこれまでもジェンダー問題を政策の柱に据え、学習会や調査活動、政策提言などに取り組んできました。2018年にはジェンダー問題プロジェクトを立ち上げ「東京に暮らす女性たち」のおかれた実態調査を行ったことに続き、昨年2019年には「女性が暮らしやすいまち~安全安心プロジェクト」を立ち上げ、セクシャル・ハラスメント、ドメスティックバイオレンス、性暴力の3つのテーマで調査・研究を行いました。学習会や視察、当事者や支援者からの聞き取りなどを重ねた上で調査項目を作成し、防止対策、相談支援、被害者支援、予防教育、研修などの自治体施策の調査を今年2月に行いました。全32問にわたるアンケートに23区25市から回答を得、杉並区も回答を寄せてくださり、感謝申し上げます。

この間、セクハラや性暴力を許さない声が#MeToo運動として世界的にも広まり、国内でも官僚や首長によるセクハラ問題や性暴力被害に対する司法判断に抗議するフラワーデモなどによって、これまであまり表面化しなかった問題が見えるようになってきました。また、このコロナ禍でのDV被害の増加や子どもの虐待との関連など、女性への暴力について、個人の問題から社会の問題へと意識が変わりつつあります。とは言え、これまでの性差別や慣習としての性別役割分業の問題は根強いものがあり、2019年12月に発表された世界経済フォーラムによる日本のジェンダーギャップ指数は153か国中121位で前年の110位からさらに下げた結果がその実態を表しています。

今回の調査では、生活者ネットワークが施策に期待する値を100とし、点数化した結果、最高でも54点、平均で33.93点となり、まだまだ課題があると考えます。杉並区は点数としては7番目の40点。市区ランキングでは11位でした。調査から見えてきた課題について、今回は主にセクハラと学校におけるDV予防教育に対する取組みについて質問していきます。

①区はこの調査結果をどのように受け止めたか伺います。

②自治体のセクハラ対策は指針を作り職員に周知することが求められています。杉並区ではセクハラ等の防止等に関する規定や具体的なハラスメントの内容を示した取扱基準がありますが、それらを職員全体にどのように浸透させているのか伺います。

③職員の相談窓口では、セクハラ被害当事者の立場の視点がなければ相談しやすくはなりません。相談窓口や受付以降の調査・救済のいずれにも、誤ったジェンダー観やセクハラをコミュニケーションとしかとらえられず、矮小化するような価値観が入らない対応が必要です。客観的判断と同時に、相談しやすい窓口となるよう、ハラスメントについて人権意識を伴う専門性が求められると考えますが、区の見解と実際の取組みの工夫について確認します。

④セクハラ防止の研修について、対象や頻度、内容について伺います。調査では大田区、国立市、西東京市が首長などへの研修を行っていることがわかりました。職員を管理監督する立場から職員向けに行っている研修内容を把握する意味でも区長も研修に参加されることをぜひ検討していただきたいと思います。

⓹ここ3年間の職場内でのセクハラの相談件数についてお聞きします。

⑥当区はセクハラについて職員への実態調査を実施していないとの回答でした。一般的に、セクハラの相談ができずに我慢している人が圧倒的に多いという現実がある中で、セクハラのない、働きやすい職場環境づくりのためにも、周辺の人の証言も含めて実態調査が必要だと考えます。相談がないことイコールセクハラがないわけではないため、すでに実施している自治体の例などを参考にアンケート調査を行ってはいかがか。区の見解をお聞きします。

⑦雇用主として職員に向けた自治体や国家公務員のセクハラ対策はありますが、全ての人を対象とした禁止規定や救済策の根拠となる法律が日本にはありません。深刻な人権侵害となるセクハラについて自治体が対策していることを区民に示すことは、地域社会の意識を変える意味でも重要なことです。セクハラはいけないこととして区民に向けた啓発冊子の作成や配布、講座の開催や区民向け相談などが必要と思われますが、区では具体的にどのような施策を行っているか伺います。

⑧今年の6月のパワハラ防止法スタートと合わせて、男女雇用機会均等法のセクハラ防止対策も強化がされました。事業主はパワハラ対策が義務化とともに、セクハラやマタハラ対策の強化も求められています。中小企業には2022年4月1日以降の義務化まで、猶予期間があるものの、事業者に対して区が働きかけしているようなことはあるのか、お聞きします。

学校におけるDV予防教育について3点伺います。

⑨区はデートDV啓発のためのカードやミニリーフレットを作成しています。リーフはコンパクトにまとまっていてよくできていると思いましたが、このリーフやカードはどのように周知・配布しているのかお聞きします。

⑩デートDVの出前講座の実施は特に中学校での開催に期待したいところですが、この間は高校への出前講座がされていると認識しています。講座の内容、受講した生徒の反応はどうだったかお聞きします。

⑪デートDVはいけないことと生徒の意識の中にきちんと落とし込むことが重要です。今後は教育活動の中にも活かしてほしいが、教育委員会は生徒にどのように浸透していけばよいと考えるか、見解を伺います。

⑫杉並区男女共同参画行動計画の基本理念に「わたしらしく あなたらしく だれもがともに認め支えあいいきいきと輝けるまち すぎなみ」を掲げ、「杉並区男女共同参画都市宣言」に込められた理念を集約・発展させ、全ての人が性別にかかわらず等しく認められ、かけがえのない存在として互いに尊重しあい、自分らしさを発揮して存分に活躍することができる社会づくりを目指すとあります。まったく同感です。男女平等政策をすすめるためにはジェンダー主流化が重要なポイントだと考えますが、区の見解を最後に確認し、私の一般質問を終わります。