第2回定例会一般質問 2018.5.30奥田雅子

いのち・平和クラブの一員として、通告に基づき

1.待機児童ゼロの実現と今後の課題について

2.居住を支援する取り組みについて 質問いたします。

まず、最初に待機児童ゼロの実現と今後の課題について質問してまいります。

杉並区では2016年4月に保育園待機児童が前年の42人を大きく超える136人までに激増しました。このままでは2017年4月には500人を超える待機児童が発生すると予測されたため「すぎなみ保育緊急事態宣言」を発出し、以来この2年間で認可保育所37園、3325名の定員の拡充が図られました。昨年度は29人が待機児童となってしまいましたが、今年は待機児童ゼロを達成できたことについては評価する声を多くの区民から聞いています。そこで、この間の杉並区の保育行政を振り返り、改めて、待機児童ゼロに至った経緯と今後の課題について伺ってまいります。

Q1.今年春の入所希望者は4,080人で、1月の一次選考では1,067人が決まら 

なかったと聞いています。その後の待機児童ゼロに至るまでの担当課職員 

の取り組みと経過について説明ください。

一般的に待機児童問題は、1990年代バブル崩壊後に両親ともに働く世帯が急増したことから顕在化して来たと言われています。杉並区では前区長時代に少子化に向かう背景からこの問題を一時的な傾向ととらえて対応してきたと思われます。認証保育所や区独自の保育室などの認可外保育所で対応し、認可保育所の整備をあまり積極的に取り組んでこなかったと認識しています。

Q2.2010年度以降、区は認可保育所を核とした保育施設整備に取り組むように

  舵を切っていますが、そうした政策転換をしたのはなぜか。その背景につ

  いてお聞きします。

2010年度に認可保育所の整備に舵を切った当初は、その増設のカーブは緩やかなものでした。一方で待機児童数の推移をみると2013年に285人となり、その翌年には7園508人の定員増を確保したものの2014年も116人の待機児童を発生させています。その後も認可保育所を増やし続けてきましたが、事業者からの提案による整備が計画通りできなかったこともあり待機児童はゼロになることはありませんでした。そこで、2016年の「すぎなみ保育緊急事態宣言」について改めて伺いますが、

Q3.認可保育所を開設するのに2年は必要と言われて来た理由について確認します。また、2016年度「すぎなみ保育緊急事態宣言」を発し、用地を事業者が確保する持ち込み型から、区有地などを使い確実にスピード感をもって保育所整備をすすめる緊急対策に踏み切ったわけですが、これによってこれまでの進め方と何がどのように変わったのか、お聞きします。

また、

Q4.2010年度以降、認可保育所整備を進めてきた結果、認可保育所数、定員数ともに倍増していますが、認可保育所整備率および入所内定率はどのように改善されたのかお聞きします。 

緊急事態宣言に基づき対策に取り組んできたことによって認可保育所の整備が一気に進んだ訳ですが、そのプロセスにおいては課題も生じました。活用した区有地の中には公園も含まれており、とりわけ、東原公園については子どもたちの遊び場の代替地確保を我が会派としても強く求めてきました。しかし、いまだ恒久的な代替地が整備されていない状況であり、一日も早く対応がなされることを改めて求めておきます。

さて、区では第一次選考で入所できなかった方々一人ひとりの事情を聞き取り、入所可能な保育園を紹介するなど、丁寧な対応ですすめてきたことは聞いています。しかし、認可保育所を希望しても全員が認可保育所に入れない現実は依然として存在しています。区も待機児童ゼロが継続できるよう保育の質も十分に確保しながら、引き続き必要な施設整備に取り組んでいくと明言しています。そこで確認ですが、

Q5.区では認可保育所に入れなかった子どもを実際には区の保育室や認証保育所などの認可外保育所で受け入れてきていますが、一部でそれを「隠れ待機児童」と称して「待機児童ゼロが実態と異なる」という主張がされています。区の認可外保育所への入所実態とここ数年の推移をお示しください。

認可保育所が充足していくにつれて、認可外の定員割れが起こり始めていることは、先の予算特別委員会などでも議論になっていました。今後もその傾向はさらにすすんでいくと推察します。認可外では施設種別によって違いがあるため一概には言えませんが、区の財政負担が増える仕組みになっています。認証保育所の認可化や100%区の持ち出しとなっている保育室の縮小はすすめるべきと考えます。しかし、認可外については、認証保育所や区の保育室とともにこれまで待機児童対策に重要な役割を果たしてきた家庭福祉員や家庭福祉員グループ、グループ保育室など多様な保育形態もふくまれます。これらの小規模な保育の良さをわかってあえて選択する方々もいます。保護者の多様なニーズに応え、選べることも重要だと考えます。

Q6.こうした考えのもと、認可外保育所をひとくくりで考えるのではなく、それぞれの特性を見極めながら残していく保育所として支援していくことが必要だと考えますが、区の見解をお聞きします。

先程の他の議員への区長答弁でも、区は今回の待機児童ゼロは通過点であり、ゴールではない、保育の質の確保と車の両輪として進めていくとありました。本来、親が働いていてもいなくても、子どもの最善の利益のために必要なら保育所にいつでも入れる状況が望ましいあり方だと思います。いつでもどこでも希望通りに入園でき、保護者が指数行政に振り回されなくて済む状況を早くつくっていただきたいと願うところです。

今年度は第1希望がかなったという声をあちこちで聞き、働きながら子育てする家庭の負担軽減に着実につながっていることは大変喜ばしいことです。

同時に保育の質の確保に向けては不断の努力が必要です。区も様々な手法や工夫をもって質の向上に取り組んでおられることと思いますが、改めて、子ども一人ひとりの豊かな育ちを応援する保育の質の確保にはこだわりすぎるほどこだわっていただきたいと思います。子どもの育ちも子育て家庭も応援し、安全安心な保育行政にこれからも取り組んでいただくよう要望し、次の質問に移ります。

 

2つ目の項目として

居住を支援する取り組みについて質問してまいります。

2007年に制定された「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」いわゆる「住宅セーフティネット法」は、その目的を高齢者や障がい者、子育て世帯、低額所得者などの住宅の確保に特に配慮を要する「住宅確保要配慮者」の住まいの安定確保を図ることでした。その後、住宅セーフティネット機能のさらなる強化が求められ、一方で空き家等の有効活用が課題となっていることを背景に2017年に大幅な法改正がされました。その背景には何があるのか。国交省によれば、高齢単身者の増加や若年層の収入減少、家が狭いことを理由に若年夫婦が理想の子ども数を持たないこと、ひとり親世帯の収入が夫婦子どものいる世帯の半分以下となっていること、家賃滞納や孤独死、子どもの事故・騒音等への不安から家主による入居拒否がおきていること、などの課題があるとしています。そして、“民間の空家や空き室を活用して住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度”や“登録住宅の改修や入居者への経済的支援”、そして“住宅確保要配慮者の居住支援”から成り立つ「新たな住宅セーフティネット制度」が創設されました。このような国の動きの中、杉並区においても「住宅確保要配慮者」に必要な支援を協議・実施する組織としてセーフティネット法に位置付けられている居住支援協議会が2016年11月に設立され、1年半が経過しました。当区における居住支援協議会の目的は3つの柱が掲げられています。ひとつには“民間賃貸住宅への円滑な入居支援策の検討と拡充”、2つ目に“空き家等の利活用によるモデル事業の実施”、3つ目に“セミナーの開催”です。

人口減少社会のもと新たな公営住宅を建設していくことは困難な状況にあります。それに代わるものとして既にあるストックの活用や空き家問題の出口策として「住宅確保要配慮者」の住まいの安定確保につなげていく仕組みが法改正により国や東京都にできたことから、杉並区においてもその推進役を担う居住支援協議会に期待するところです。空家の問題や住宅確保要配慮者の課題などについてはこれまでも議会で何度か取り上げておりますが、この間の成果や課題を明らかにし、もっと良いものにしてほしい立場から質問してまいります。

まず、最初に

Q1.居住支援協議会が設立されて1年半となりますが、これまでの具体的取組み内容や成果、課題についてお示しください。

住宅は市場を通じて整備・質の向上が図られることを基本としつつ、少子高齢社会、格差社会が進行する中、市場からこぼれ落ちてしまう者へのセーフティネットの整備を福祉政策との連携によって拡充していくことが必要となっています。そのため、市場ストックの情報を多く持つ宅建業界や不動産業界との連携は欠かせません。住宅確保要配慮者が物件探しをする際に、まちの不動産屋さんに行っても、区の相談窓口に行っても同様の福祉的情報が得られることが重要だと考えます。そこで確認ですが、

Q2.住宅確保要配慮者の入居を拒まないアパートあっせん事業に協力する店舗数を拡充していくことを区は今年度の方針に掲げていますが現時点でどこまで進んでいるのかお聞きします。

次に、空家等の利活用によるモデル事業についてですが、2017年度モデル事業では2件の応募に対し、審査会では1件が採択されたということでした。

Q3.そこで改めて、昨年度採用されたモデル事業で行った事業内容や完成状況について伺います。また、今年度もモデル事業を募集していくのか確認します。

今回のモデル事業への入居者募集の案内情報のあり方については、2つの課題があると考えています。1つは入居を希望する人に届いたのかということ。もう1つはモデル事業の取組みを通して居住支援協議会のことを広く区民に知ってもらうチャンスとして活かせたかということです。前者で言えば、モデル事業完成から区のホームページに掲載されるまでに2か月近くの時間を要し、かつ掲載の表示や募集ニュースにたどり着くまでのわかりにくさは課題だと感じました。

初めてのモデル事業の成果事例でもあり、もっとアピールしてもよいことだと思いますので、ぜひ、今からでも情報発信していただくよう要望しておきます。

このように広報活動について、全般的に居住支援協議会に関する情報発信の仕方に改善の余地があると感じています。例えば、ホームページやパンフレットなどの活用をはじめ、セミナーなどの開催、関係する機関とのネットワークなど様々な切り口から発信していくことが有効だと考えています。現在、区のホームページには居住支援協議会について説明するページはあるものの、その活動状況がリアルタイムで発信されていません。居住支援協議会は区の付属機関ではなく任意団体として発足しているため、独自のホームページ開設の検討が必要ではないでしょうか。また、居住支援協議会パンフレットや事業内容のチラシ類などのツールの活用についても関連する様々な区の相談窓口やまちの不動産屋さん、地域でサロン活動をしている拠点などで配布するなど、効果的な活用方法の検討も必要です。セミナーの開催についても対象や内容を明確にしながら区民にわかりやすく、参加しやすい工夫も必要です。居住支援協議会の機能を広く区民に知ってもらうことは、困っている人に情報を届けることだけでなく、いざという時に頼りになる仕組みがあるよということを知ってもらうことであり、それが区民の安心につながることだと考えます。そのため情報発信はとても重要なことだと思っています。そこで、広報全般に関してお聞きします。

Q4.特に住宅確保要配慮者や空き家の所有者、空き家を活用したい事業者にどうしたら伝わるかを意識しつつ、区民全体に居住支援協議会のことを周知していくことについて区の見解を伺います。

次に、居住支援協議会のあり方についてお聞きします。

杉並区の居住支援協議会は学識経験者や東京都宅地建物取引業協会・杉並支部、全日本不動産協会中野・杉並支部、東京都不動産鑑定士協会、杉並区社会福祉協議会、NPO法人、そして区の保健福祉部局および都市整備部局で構成されており、区が事務局を担っています。そこで伺います。

Q5.居住支援は住まいさえ斡旋できればよいものではないと考えています。特に住宅確保要配慮者にとっては入居前後の支援が必要であり、既に居住支援の実績を持つ居住支援法人などとの連携が鍵になると思います。また、空き家等の利活用においては互助・共助を工夫した多様な安心居住などの事例研究や法制上の問題点の解決なども踏まえ、検討することが大切だと考えますが、区の見解を伺います。また、

Q6.住宅確保要配慮者は居住以外にも複合的な課題を抱えているケースが多く、これらの課題を包括的に解決するためには福祉事務所やくらしのサポートステーション、在宅医療・生活支援センター、ケア24、男女平等推進センターなどの関係部署との連携を構築することが不可欠と考えますが、区の見解を伺います。

居住支援協議会は住まいにかかわる人たちが分野を超えて一堂に会する場とし

て重要な役割を担いうるしくみであり、大きな意味があると感じています。今後、より良いしくみにしていくために、運営や事務局のあり方、構成メンバーなどの見直しも柔軟に検討していくことも必要ではないかと考えています。暮らしの現場に関わり、多様な視点を持つメンバーの存在は重要だと考えます。協議会での議論を通して新たな発見や発想が生まれ、それぞれが持ち合わせる専門性を共有しながら、多様な住まい方が提案されていくことに期待しています。高齢独居になっても、ひとり親になっても、障がいをもっても住まいに困らない地域づくりをすすめ、ハード・ソフトの両面からの支援策の拡充が求められています。

居住は衣食住の1つであり生活そのもので人権にも関わることです。だからこそ自力でできない人のために支援するのは行政の重要課題であると考えています。

Q7.最後に今後の居住支援に関する区の展望について伺って私の質問を終わります。