第3回定例会一般質問 2016.11.18 そね文子
いのち平和クラブの一員として、①石けん利用をすすめ、水環境を守る取り組みについて、②使用済み油の回収による資源循環とエネルギーを地産する取り組みについて質問いたします。
まず、石けんの利用がなぜ水環境を守ることになるのか、述べたいと思います。杉並区内には3つの河川、妙正寺川、善福寺川、神田川が流れ、それは中野区で神田川に合流し、やがて隅田川に合流して海に注いでいます。
区内の下水道は合流式のため雨が降って雨水が下水道に流れ込むと、その下水は簡単に、区内の3つの河川に流れ込むようになっています。流れ込んだ下水は処理されることなく川を汚染し、そのまま海に流れ込んでいるのが実態です。
海まで流れ着いた汚水は海底に蓄積したり、海の生物に取り込まれたりし、それが巡り巡って食物連鎖に組み込まれた私たち人間の口に入ることになります。
川や海の生物の生息環境を守ることは、食の安全、人間の健康を守ることにつながるため、家庭排水の中に環境負荷のかかるものを流さないということが大変重要と考えます。
環境や生物・人体に悪影響を及ぼす物質を含む合成洗剤などはなるべく避けたいという考えから、生活者ネットワークは議会で学校施設や区立施設で環境負荷の少ない無添加の石けんの使用を求めてきました。また区内で活動する消費者団体は区施設での洗剤を石けんに切り替えるよう求め、毎年予算要望の際に区長に説明していると聞いています。
石けんは固形、液体、粉末などのタイプがありますが、どれも天然の動植物の油脂にアルカリと水を加えて加熱してつくられたもので、紀元前3000年から使われてきた長い歴史の中で、安全性が確認されています。一方、合成洗剤の歴史は浅く、第2次世界大戦後に急速に普及しました。これは石油から複雑な工程を経て作られ、合成界面活性剤、蛍光増白剤や再汚染防止剤などが配合されています。そして問題なのは、水中での分解がされにくく、環境ホルモン作用、発がん促進作用、皮膚障害・味覚機能の低下・髪へのダメージなどの懸念があり、安全性が確認されていません。合成界面活性剤は水中に存在する個体に吸着する性質があり、魚のエラに吸着すると窒息死させることがわかっています。その点、石けんは、水でうすまると界面活性力を失い、分解されて二酸化炭素と水になり安全なのです。
1970年代後半に琵琶湖をはじめとした全国各地で、生活排水による水質汚濁が問題となり、漁業協同組合や生協、市民団体などが連携して合成洗剤の使用を止め、せっけん利用をすすめ、人体への影響、河川や海などの自然環境を守ろうという「石けん運動」が展開され現在に至っています。生活者ネットワークはそこに参加している全国の団体と連携して活動してきました。このせっけん運動では杉並区でも区長からも毎年メッセージをいただいています。
1-1 そこで、まず初めに区はこの石けん運動についてどのように評価しているか、見解をうかがいます。
杉並区には基本構想に定める区の将来像「支えあいともにつくる安全で活力あるみどりの住宅都市 杉並」の実現に向けた環境分野の計画である環境基本計画があります。この計画は杉並区環境基本条例に基づき、地域の環境を総合的かつ計画的に保全し、地球環境の保全に貢献していくための計画でもあります。
1-2 環境基本計画の「化学物質等の適正管理と水質汚濁を防ぐ取組」の環境配慮行動指針には区民の取り組みとして「洗剤は環境対応タイプを選び、その使用は必要最低限にします」という1文が入っています。区はこれをどのような取り組みによって実現しようとしているかうかがいます。
江戸川区では「洗剤・洗浄剤についてより安全性が高く環境にやさしい石けんの使用を目的とする」とうたわれた石けん使用指針が定められています。杉並区でも石けんを優先的に使うことを促す取組みが求められます。環境基本計画改定の際にはぜひ「石けん」と明記していただきたいと要望します。
1-3 ほとんどの区立施設では食器を洗うための合成洗剤や手洗い用に洗浄剤が備えられています。具体的には区庁舎を始め、小中学校、区立保育園や保育室、子供園、地域区民センター、ゆうゆう館、児童館などがあげられます。まずはそれらの施設で、食器洗い用の洗剤や手洗い用を有害な化学物質を含まないものにすることに取り組んでいただきたいと思います。そこでの洗剤や手洗い用の洗剤の使用が現在どのようになっているのか、また今後どのようにしていくのかについても伺います。
多くの区民が使う区立施設は環境配慮行動を啓発する場にしていただきたいと考えます。ここで1例を紹介したいと思います。小金井市では環境行動指針で「洗剤は極力石けんを使用するとともに、合成洗剤は必要以上に使わないように努める」ことを定めていますが、その内容がこのようなわかりやすいポスターにされて市立施設の給湯室に貼られています。このポスターはせっけん運動をすすめる市民から提案があって市と一緒に作成し、市民が協力して継続的に施設に貼られているということです。ぜひ、このような事例も今後、参考にしていただきたいと思います。
また石けんの原料についても述べたいと思います。先に述べたように石けんの原料は油ですが、飲食店等から回収された使用済み油を精製しリサイクルして石けんが作られています。環境のことを考えて作られた、できるだけ環境負荷の少ないものを選んで買うグリーン購入という考え方があり、区でもグリーン購入法に基づいた物品の調達方針が立てられていますが、石けんの購入にもこの考え方を適用してほしいと思います。区の施設では率先してそのような商品を購入いただきたいと考えますが、区の見解を伺います。
東京都では、化学物質による子どもへの影響を防ぐために独自のガイドラインを策定し、子どもたちが安心して生活できる社会の実現を目指しており、化学物質が人に与える影響は、大人より成長期の子どもにおいて大きいとの考えが示されています。予防原則に則り、有害な化学物質が含まれているものはできるだけとらないようにすることは重要なことです。このような観点から、学校の手洗い場、家庭科室での石けんの利用を望みますが教育委員会の見解をうかがいます。
2015年3月の予算特別委員会で学校での手洗い用の洗浄剤使用について調査を行っていただいたところ、PRTR法に規定されている有害化学物質が入った合成洗剤がすべての学校で使われていました。PRTR法とは人の健康や生態系に有害なおそれがあるなどの性状を有する化学物質の規制を目的としてつくられ、環境や人の健康に影響を及ぼすとして国が有害であると指定した化学物質について、事業者がその排出量を1年ごとに集約し公表することを義務づけるという法律です。なぜその有害化学物質が入った合成洗剤が使われるにいたったかを聞いたところ、国立衛生研究所の講師から、ネットに入れた固形石けん、また石けん台の固形石けんは微生物の繁殖の可能性があるという指摘があって、教育委員会から液体に変えるよう通知が出され、それを契機に合成洗剤に変わったと思われる。今回は抽出調査だったので、今後、全校調査を行い検証する必要があるという答弁をいただいています。
その後の調査の結果はどうであったのか、どのように検証が行われ、それに対してどのように対応されたのかを伺います。
東京都の教育委員会が、都内全自治体における公立学校給食の実施状況等について毎年調査を実施しています。この調査の中に食器具類の洗浄剤等使用状況の項目があります。厨房において合成洗剤か石けんか、またはその併用かが調査項目として取り入れられています。子どもたちの口に入る可能性から見ても、水環境に与える負荷の点からも、また、厨房で作業に当たる調理員の健康を守る意味でも、石けん使用が望ましいことは先ほど来述べてきたとおりです。2015年度の報告書には、杉並区内の小中学校すべて合成洗剤使用となっています。二十三区の港区、大田区、世田谷区、中野区では小中学校の一〇〇%で石けんが使用されています。以前、世田谷区に給食調理室で石けんが導入された経緯を聞きに行きました。そこでは、調理員の手荒れや健康影響への不安から石けんを望む声があり、数回の試行と説明会をへて導入がなされたということでした。職員の手荒れは石けんが導入された後に改善が見られたということです。杉並区でも給食で使う食器の洗浄に石けんの使用を望みますが教育委員会の見解を伺います。
この項の最後です。杉並区では学校給食で出た使用済みの油は回収業者が処理していますが、この油は家畜の飼料や燃料などのほか、石けんにもリサイクルされています。このような作られ方をした石けんを使うことで初めてリサイクルの循環が完成されます。廃食油が石けんに生まれ変わることを学ぶことも環境教育として重要と考えますが、教育委員会の見解をうかがいます。
次に、大きな項目の2つ目、廃食油の回収についてうかがいます。
日本国内で消費される食用油は年間約200万トンで、このうち廃棄されているのは約40万トン。飲食店や食品関係企業などからまとまって廃棄される業務用の廃食油と各家庭から少量ずつ捨てられている廃食油の量はほぼ半々の20万トンずつと推計されています。飲食店などからの20万トンは専門の回収業者にゆだねられ、約80%が回収されていますが、家庭から出る残り半分の廃食用油の回収率は極めて低く、そのほとんどが生活排水と一緒に下水に流されたり、紙に含ませて捨てられています。河川に流される油は水質汚濁や配管のつまりの原因となっています。環境省が出している「生活排水読本」には、小さじ一杯、5ミリリットルの油が垂れ流されたとき、これを魚が住める水質に戻すには風呂おけ5杯分1500リットルの水が必要だと書かれています。
数年前、地域行事で料理を作った際に出た廃食用油の処分を任される機会があり、可燃ごみにしたくないので回収拠点を探し数か所に電話をかけ、自転車で20分ほどかかる福祉作業所に持って行ったことがありました。こんなに大変な思いをして回収先を探さなければならない状況で、多くの方はどうしているのだろうと疑問に思いました。そこで、どのぐらいの需要があるのか確かめるため、区役所隣にある生活者ネットワークの事務所で廃食用油の回収拠点を始めることにしました。2014年4月にスタートし、2年2か月で約800リットルを回収しました。これは、1300万人が暮らす東京を、各家庭から使用済みの油が排出される油田に見立て、その油を回収して燃料にするプロジェクトに参加し、年会費を払って回収をお願いする形で取り組んだものです。
回収を始めてみると、未使用なまま10年以上経過し、捨てるに捨てられず押し入れに眠っていた贈答品の油を持ってくる人が多かったのには驚きました。近隣の方はもとより、自転車に乗って10数分かかるところをホームページで見つけたと言って持ってきてくださったり、電車を使って持って来られる方もいて、回収拠点の設置は区民に求められていることを確信しました。
23区では、渋谷区、葛飾区、豊島区、練馬区などが廃食油の回収を行っています。以前視察に行った練馬区では、区独自でプラントを備え、回収した油をバイオディーゼル燃料、通称BDFという軽油の代替になる燃料に精製し、その燃料で区の清掃車2台を走らせ、環境学習にも利用しているとの話を伺いました。豊島区では回収した油を無添加のリサイクルせっけんに加工し、区庁舎をはじめとする区立施設の手洗い用石けんとして利用し区内で循環させています。このように、使用済みの食用油は石けんや動物の飼料、燃料に生まれ変わるものなのです。この燃料はトラックを走らせたり、発電機を動かし電気を生みだします。ちなみに住民22万人の渋谷区は、区立施設18か所で拠点回収を行い、年間の回収量は2700リットル、回収にかかる費用は年間20万円弱ということです。葛飾区は、住民が約44万人、回収拠点は21か所、年間の回収量は7000リットルで年間の回収費用は21万円とのことです。さらに葛飾区では精製されたBDFを庁有車に使う取り組みも始め1年が経過したところです。車は100%BDFで走らせていますが、不具合はまったく起きていないということです。杉並区でも回収拠点を設ければ相当量の回収が見込めると考えます。
そこで質問です。杉並区には環境先進都市の実現を目指し、区民一人一人の環境配慮行動を推進し、環境情報や環境活動の場とするとして環境活動推進センターが設置されています。ここは、環境や省エネ、リサイクルに関する総合的な拠点とされています。杉並区でも、環境活動推進センターを第一に、お願いできる区立施設いくつかで使用済み油の回収を実験的にスタートしていただきたいと思いますが、区の考えを伺います。
また、葛飾区ではホームページで民間団体が行う廃油の回収拠点を紹介し、区民にそこにも廃油を出すよう促していました。先ほど生活者ネットワークの事務所が回収拠点になったことを述べましたが、区内には他にも民間団体が回収拠点となっているところがあります。このような区民の自発的な活動を杉並区でもホームページで広報し、廃油の回収を促進することを要望します。
最後の質問です。先ほどからリサイクルされたものを使うことの重要性について述べてきましたが、区が屋外のイベントで発電機を利用するときはBDFを使うことにも取り組んでいただきたいと思います。杉並フェスタなど、様々な屋外のイベントが行われていますが、発電機を使う際には一部であってもBDFを試していただきたいと思います。このBDFは大気汚染の原因となる硫黄酸化物はゼロ、呼吸器官障害の原因といわれる黒煙は軽油の半分以下、純地産地消の地球にやさしいクリーンなエネルギーです。イベントで油の回収を行い、BDFや石けんへのリサイクルのことをパネル展示し環境意識の啓発を行っていただきたいと思いますが、区の見解をうかがいます。
環境への配慮は緊急性の点で、ともすると後回しにされがちです。しかし、子どもや孫、その先に続く世代に対して今の大人が行わなければならない大変重要な課題です。杉並区環境条例には、区はすべての施策を環境の保全に配慮して行うとともに、区民及び事業者の理解と協力を得るよう努めなければならないと定められています。今回の提案や要望に対して、区には少しのことからでもまずは試しに始めてみるという姿勢をもって取り組んでいただくよう要望し、質問を終わります。