第4回定例会一般質問 2013.11.21 市橋あや子
私は、区議会生活者ネットワークの一員としまして「地域包括ケアシステム」について質問します。
今年7月31日に厚労省が、2010年の「全国市町村別平均寿命(生命表)」を発表し、都内で平均寿命が最も長い自治体は杉並区、との報道がありました。一方で、「健康寿命」という言葉もよく耳にするようになりました。健康寿命とは、自立して生活できている年齢の指標です。都民の健康寿命は男性が69.99歳、女性が72.88歳で、平均寿命までには男性9.83年、女性13.51年の「不健康な期間」があるといいます。人生の最期まで健康でありたい、「ピンピンコロリ」でありたい、と誰もが望むことです。疾病予防や健康増進、介護予防などによって、平均寿命と健康寿命の差を短縮できれば個人の生活の質の低下を防ぐことができるとして、国、都、区がさまざま施策の展開を図っているところです。
国立社会保障・人口問題研究所によれば、65歳以上の人口は2042年の約3900万人でピークを迎えると推計されています。そして2020年には高齢者の中で75歳以上が半数を超え、特に団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれています。こうしたなか、厚労省は、「2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的の下で、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制、いわゆる「地域包括ケアシステム」の構築を推進する」として、各自治体に地域包括ケアシステム構築の努力義務が課せられました。
当区においても、現在3か所のモデル地域を設定して、ケアシステムの構築に向けた検討・試行が行われています。現在、試行期間中ではありますが、「地域包括ケアシステム」の構築に向けて提案も含め、「健康長寿モニター事業」「介護保険法の改正」「地域包括ケアシステムのあり方検討」「地域の支え合い機能」の観点で質問します。
はじめに、「健康長寿モニター事業」について2点お訊ねします。
当区では、介護保険事業計画の改定前の基礎調査として行っている「高齢者実態調査」、2009年の「ひとり暮らし高齢者実態調査」、「健康長寿モニター事業調査」など、高齢者に対して多くの調査が行われています。昨年度から始まっている「健康長寿モニター事業調査」は、高齢者施策構築の基礎資料を得るために80歳の区民にモニターとしてご協力をいただき、健康状態や生活習慣などについて尋ねる5年間の追跡調査として始められたと聞いています。
今年7月に「初年度報告書」が出され、興味深く拝見しました。まずは、お元気な方が多い、というのが率直な感想です。また、市民活動に参加している率が高いのは、「長寿応援ポイント」がきっかけになっていることも考えられます。しかし、外出を億劫に感じている人が約4割それも女性に多いこと、外出が1週間に1日~2日以下の人が3割弱、1週間のうちでご近所と話をしない人が約3割、近所に挨拶する人がほしいという人が8割強いらっしゃるなどの数値に、外出や話をすることが少ない高齢者を家に閉じこもらせないしくみの必要性を感じたところでもあります。
そこでお訊ねします。
1点目。「健康長寿モニター事業」の調査のねらいは何か。また、初年度調査で見えてきたものは何か、伺います。
2点目。この調査は5年間の追跡調査としていますが、毎年の調査結果を今後の施策展開にどのようにつなげていくおつもりか、伺います。
次に、介護保険法改正を控えて当区の状況について4点伺います。
当区の高齢化率も今年4月1日現在で20%を超えました。21%以上の超高齢社会は目前に迫っています。介護保険制度がスタートして13年が経ち、来年の介護保険法改正に向け、要支援者への予防給付を市区町村の地域支援事業へ全面移管させるのではないかと懸念されていましたが、どうやら通所・訪問介護だけが移管される状況になっています。しかし、これらは重要な事業であるだけに裁量を任される区の責任は重大です。要支援者に向けたサービスについて4点伺います。
1点目。要支援者が要介護認定者全体に占める割合の全国平均は約22%、同じく介護保険給付費全体に占める割合は6%、そして要支援者の約4割は独居、ひとり暮らしと言われています。当区のおのおのの実態はどうなっているでしょうか。お伺いします。
2点目。今回の法改正で区に移管が想定される予防訪問介護ですが、なかでも「生活支援サービス」は介護の重度化防止に有効であり、長期的な視点では給付抑制につながります。これらは在宅生活の維持に不可欠なサービスとしてその重要性を指摘するところですが、区の見解を伺います。
3点目。自治体に移行することで区民が心配するのは、サービスの質の低下です。今後は自治体の裁量によって、ボランティアやNPO事業者を入れながらサービスの提供が行われるわけで、自治体間格差を懸念する声も出ています。利用者が自己負担を変えず、移行前と同じサービスを利用できるようにすべきと考えますがいかがでしょうか。区の見解を伺います。
4点目。そのためには、見守りや話し相手などの誰にでもできるボランタリーな活動と、公費に基づく有資格者が行う事業との区別を明確にし、介護に携わる人にスキルアップ研修を行うなど、良質なNPO事業者の支援が必要と考えますが、区の見解を伺います。以上のような調査の結果や介護保険制度改定の状況などを照らし合わせて考えると、ひとり暮らしや高齢者のみの世帯になっても、また認知症になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることができるよう、介護・医療・住まい・生活支援・予防が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」づくりが急務です。厚労省は、システムの構築に向け、日常生活圏域のニーズ調査を実施し、地域の課題やニーズを的確に把握することを取組の1つにあげています。そこで、当区で行われている「地域包括ケアシステムのあり方の検討」について3点伺います。
1点目。当区では、モデル地域を対象に実態調査を実施しておられますが、その調査状況とどういった内容の調査が行われたのかを伺います。
2点目。地域包括ケアシステムの構築には、生活支援・予防について、地域にあるさまざまなインフォーマルサービスを含む社会資源とのネットワーク化が重要と考えます。ネットワーク化をどのようにつくっていかれるのか、区のお考えを伺います。
3点目。区はモデル3地区での取り組みを経てこのケアシステムを区内全域に広げていくとしていますが、そのためには、その推進役としてのケア24の役割には大きいものがあります。当区の地域包括支援センター「ケア24」は20センターありますが、これらは15法人の運営委託で行われており、そのあり様も運営状況も15法人さまざまです。ケア24が担う役割はますます多様で、重要となってくるわけですが、そのような状況のなかで、3つのモデル地域の取組を、他の地域にどのように広げていかれるのでしょうか、伺います。
さて、ここまで地域包括ケアシステムの構築に向けた区の取り組みについて質問してきました。次に、市民が考える仮称ではありますが「地域支え合いセンター構想」を紹介させていただきます。
当区の地域包括ケアシステムはケア24が担当する地域の規模になっています。20か所、おおよそ中学校区に1か所です。厚労省でも「日常生活圏域」を中学校区人口2~4万人としていますが、高齢者や障がい者が実際に歩いて行ける距離と言えるでしょうか。とてもそうとは思えません。日常生活圏域は自治体で決められます。私どもは小学校区を「日常生活圏域」として考えてみました。
「ケア24」が中学校区に1つとするならば、小学校区に3~4か所の拠点―それは空き家・空き店舗などを活用したサロンであったり、子どもから高齢者まで集えるみんなの居場所であったり、またコミュニティカフェなど、地域で支え合うための拠点―があれば、公が提供するサービスにこれらのインフォーマルサービスが加わり、生活支援・介護予防は地域で支えられると考えます。
そこで、この支え合いの拠点として「(仮称)地域支え合いセンター」を考えたいと思います。センターと言いましても大きな箱モノのイメージではなく、コーディネート機能であり、拠点的な機能を重視するものです。「支え合い」の対象者は、地域に暮らす高齢者、障がい者、子どもと親など地域社会とのつながりや支援が必要な人々。どのような「機能」を持つかというと、高齢者や障がい者の居場所であり、見守りや話し相手、介護・子育て・障がい等の相談窓口、情報提供、地域資源のネットワーク化などがあげられます。ケア24と連携し、ある意味補完しながら、必要ならそこから新しい機能を生み出すそういう役割をも持つものです。
この「拠点」については、いま区が取り組んでいる施設再編整備計画で設置される地域コミュニティ施設も拠点になりうるでしょうし、空き家・空き店舗を活用することも考えられます。もしこれを、行政のしくみとして設置し、その運営を民間団体に委託するとして想定するなら、施設再編計画を策定しているいまだからこそ、検討も視野に入れられるのではないでしょうか。区から示されたこのたびの施設再編計画はハード面が中心であり、そこに地域住民の暮らしを重ね合わせて考えていく必要があることは、9月の全員協議会でも申し上げました。地域コミュニティ施設に「(仮称)地域支え合いセンター」の機能を付加していくことを強く要望いたします。
もう一つのパターンは、市民が自ら「場」をつくり、そこに「機能」をつくっていく、というもの。そのためには、空き家・空き店舗情報が欠かせません。現状では空き家や空き店舗情報がつながらないためにまだ多くはありませんが、空き家を利用した多世代が集う居場所づくりが始まっています。空き家・空き店舗の活用ができたらどんなに居場所づくりに弾みがつくことでしょう。
ケア24の勧めにより、認知症の初期の高齢者がそうした居場所につながり、生活に張りがでてきたり、市民同士の日常的な声かけやたすけあいが始まるというケースも聞いています。こうした空き家・空き店舗を利用した「市民型地域福祉事業」が少しずつ展開されてきています。そこで空き家について2点おたずねします。
1点目。今年度、当区は空き家調査を実施され、その報告は今会期中の都市環境委員会に出されると聞いています。どのような結果が得られたのでしょうか、お伺いします。
2点目。空き家・空き店舗活用は地域活性化、持続可能なまちづくりなど、地域のまちづくりの観点からも重要な課題です。ゴミ屋敷問題や防災・防犯からの視点だけではなく、京都市の「空き家条例」のように、空き家をまちづくりの資源としてとらえて有効活用をすすめることが必要ではないでしょうか、区のお考えを伺います。
最後に。
地域を、みんなで支えていくためには、行政のフォーマルな施策とともに、地域の福祉ニーズに沿った市民によるインフォーマルな活動や事業がますます必要になってくるでしょう。この度の地域包括ケアモデルの検討課題の一つに、「インフォーマルサービスを含めた生活支援」が挙げられていることからも、区におかれてもその重要性については認識されているものと理解するところです。市民による活動や事業には特に立ち上げ時にはある程度の資金が必要です。
当区に2000年度から2009年度まであった「地域福祉活動立ち上げ支援事業補助金」事業が今の時代にこそ必要だと考えます。10年間で、29団体が助成を受け33の活動をつくり、そのうち17団体が今も活発に活動し杉並の地域福祉事業を担っています。インフォーマルな生活支援サービスを立ち上げようとする市民活動団体への資金的支援を要望いたします。
以上、縷々述べてまいりました。冒頭でも申し上げましたように、いま区は地域包括ケアシステムの構築に向けて試行を行っておられます。そういう時だからこそ、当事者目線での提案をさせていただきました。
以上で、私からの質問を終わります。