決算特別委員会意見開陳 2013.10.9.市橋あや子

区議会生活者ネットワークといたしまして、決算特別委員会に付託された2012年度杉並区一般会計歳入歳出および各特別会計歳入歳出決算について意見を申し上げます。

 当該年度は、2011年の東京電力福島第一原発事故を受け、国として原発政策をどうするのかが注目されるなか、国策として原発を推進させてきた自民党へと政権が交代し、国民的議論の結果として出された「原発ゼロ」政策が後ろに追いやられたまま、現在に至っています。

 国の経済状況を見てみますと、復興需要および円安・株高の進行を背景に景気に明るさが見えたものの、製造業の設備投資には依然として慎重な姿勢がうかがえるなど、景気の先行きは不透明な状況にありました。このような状況下では、短期的には、来年度から始まる消費税の段階的引き上げ、公共事業の息切れ、具体性のない成長戦略などからくる景気減速が懸念されます。長期的にも、進行する少子高齢化のなか、国が約1000兆円の負債を抱え、財政再建など到底対応できる状況にありません。

 当区にあっては、杉並区基本構想・総合計画がスタートした年でした。東日本大震災の教訓と、首都直下地震が予測されていることもあり、基本構想の重点は「安全・安心」「少子高齢化」「まちづくり」をキーワードに予算配分がされました。

 そのようななかで、地域エネルギービジョンの策定、全小中学校への学校司書配置、在宅療養支援体制の充実、待機児対策の迅速な追加対応など、意欲的に取り組んでこられたことに敬意を表します。

 財政においては、特別区民税が6年ぶりに増加した一方、収入未済額は2年連続で減少しているものの依然として100億円を超えています。

持続可能な財政運営を行っていくためのルールの1つ、経常収支比率について80%以内を目指すとしたものが、82.8%と、前年度を0.1ポイント上回りほぼ横ばいとなりました。東電総合グランド跡地の取得、高井戸第二小学校や大宮前体育館の改築経費など、区民生活にとって必要な投資と扶助費の増によるものではありますが、これからも健全な財政運営のための不断の努力が強く求められます。

 さて2012年度決算について、限られた時間ではありましたが質疑を通して、また、いただいた資料をもとに施策の執行状況について調査を行った結果、一般会計並びにすべての会計決算案に対して認定すべきものと判断しました。

 そのうえで以下、決算審査の締めくくりに当たり、時間の制約により述べられなかったことや、再確認をお願いしたいことなど、何点か絞って述べさせていただきます。

 

区立施設再編計画について申し上げます。

少子高齢社会への対応、老朽化した施設の改修費用の増加などの財政問題から、今後7つの地域のなかで「なくす」「まとめる」方向で区立施設再編の素案が提示されました。その中の「児童館廃止」という言葉が、「老朽化した建物自体をなくす」意味であって、「児童館の機能・役割をなくす」ことではないこと、また、子育て中のお母さんたちの仲間づくりの場「ゆうキッズ」もなくなったり減ったりするのではなく、今後、41の小学校内、(仮称)子どもセンター9館、学童クラブ専用館になる10館程度で展開され、開館時間も終日館が設定されることが後になるにつれて説明され、今後「ゆうキッズ」の場が増えることを理解するまで時間を要しました。委員会で理解されにくかったことを参考に、住民への素案の説明は丁寧に具体的に行っていただくことを要望します。

 今回、保護者の方の「安全」を求める声が多いために学童クラブを学校内に設置する方向に施策が動いているという現状には考えさせられるところがありました。子どもの最善の利益を考えた場合、放課後の居場所は学校の外にあることが望ましいと考えてきた者にとって、複雑なものがあるのは事実です。果たして地域は「安全」ではなくなっているのでしょうか。地域は「安心」して子育てできるところでなくてはなりません。あふれるように情報が発信される現在、保護者の方たちは「不審者」情報を手に入れることができても、このまちはいいまち、楽しいまち、という情報を入手できているのでしょうか。

地域には高齢者と子どもしかいない、なにかあったらどうするのか、そうだ!学校に居れば安心だ。そして手にする情報は不審者が出た時に送られてくる不審者情報メール。仕事を持ちながら子育てに入るお母さんにとって、未知の世界である地域が「怖いところ」「安心できないところ」、という状況がつくられてしまっているのです。それを克服する地域づくりを目指していただきたい。要望します。

 

同時に示された使用料の見直しについては理解するものです。ただし、登録団体の減額制度廃止については激変緩和措置を要望します。

 在宅医療推進事業について伺いました。

病院から在宅療養生活にスムーズに移行するためのしくみですが、1年間の相談が約450件。病院から自宅に帰って療養生活を送られている方が相当数いらっしゃいますので、この数はもっと増えていいはずです。周知に力を入れていただくよう要望します。また、この事業は、いま区が取り組んでおられる「住み慣れたまちでさいごまで自分らしく暮らせるまち」を目指した「地域包括ケアシステム」のなかでも重要な役割を持つものです。医療と介護のより一層の連携に期待します。

 また、「地域包括ケアシステム」は住民同士のささえあいがあって成り立つものと認識しています。行政によるフォーマルな仕組みと、地域のさまざまな団体によるインフォーマルな活動や事業が連携してこそ、「高齢者が最後まで自分らしく暮らせるまち」の実現に近づくものと考えます。現在、3つのモデル地区を設定して取り組んでおられますが、各方面の多彩な地域の資源を活用して進められることを望みます。

 

区営住宅、空き家活用について伺いました。

少子高齢社会、人口減少社会では、街をコンパクトにしていくこと、そして増え続ける空き家の活用が求められています。東京都も空き家を改修して高齢者共同住宅にする際の補助金制度を始めました。各地でさまざまな取り組みが始まっていますが、市民が空き家を活用し多様な住まい方ができるよう、区が一歩踏み込んで支援をしていただくことを求めます。

 日本にいる留学生が部屋を借りる際、保証人制度に長年苦しめられてきましたが、今は一人暮らしの高齢者も同じ問題を抱えていることが質疑を通してわかりました。その人たちをターゲットに保証人を引き受ける会社が乱立し、契約更新ごとに数万円の利益を得ています。個人の責任を他人に負わせる保証人制度は国際都市にあって恥ずかしいことだと考えます。区が保証人に代わる証明書等を出すことで、不動産会社に保証人免除を促すなど、新たな仕組みを検討いただくようお願いします。

 エネルギー政策について申し上げます。

今年6月に杉並区地域エネルギービジョンが策定されました。東日本大震災直後の第2回定例区議会の一般質問以来、原発依存のエネルギー政策から脱却するため、区に「地域エネルギービジョン」の策定をもとめてきた者として、歓迎します。市民出資型ファンドの創設の検討も提案いたしましたが、今後、省エネルギーを基本に、区民出資によるエネルギー創出を具体化するなど再生可能エネルギーの普及と拡大に期待します。

 さて、当該年度の中学生環境サミットで、環境部長が生徒からの要望に答えて環境行動のチェックシートを区役所でも使うと約束しておられましたが実行してないとの答弁をいただきました。区役所で行われる各種懇談会や審議会でペットボトルが11本ずつ配られていることについては、新聞の投書欄などでも、率先して環境行動をすべき役所がまだそんなことをしているのかとの意見を見かけます。当区でも、ペットボトルのお茶をやめてマイボトルを呼びかける、またはポットをご用意いただいて、自分で湯呑に入れていただくなど、大人の責任として子どもからの提案に応えていただけるよう再度要望いたします。

 雨水流出抑制の質疑の中で、井荻小学校の子どもたちが取組んでいる善福寺川周辺の清掃活動を取り上げ、今後沿川学校でたとえば子ども川サミットができないか、という提案をしました。区としてその方向で考えているとのご答弁でしたが、その時にはつい大人がやりがちな「調査」から入らずに、遊びの中から楽しみながら川に親しむ、そしてきれいな川の存在も知るなど、「体感する」ところからの川との出合い、ふれあいになるよう是非ともお願いします。

 つぎに、井荻中学校で計画されていた、『はだしのゲン』の翻訳者アラン・グリースンさんの講演会が前日に中止になったことについて、この間の経過については了解しました。仕切り直しでの講演会開催を求める声に応えるよう、学校現場への支援をお願いいたします。

「はだしのゲン」については松江市教育委員会の対応を巡ってさまざまな報道がされてきましたが、私どもは、「はだしのゲン」は原爆が落とされた事実、戦争の悲惨さ、平和の大切さを教えるための有効な資料であり、子どもたちがふれることを制限することのないように望むものです。

 さて、「南関東におけるマグニチュード7程度の大地震の発生確率は、今後30年以内に70%程度」と言われている首都東京ですが、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地として決まりました。東日本大震災から2年半が経過した今も、被災地の復興は進んでいませんし、原発事故の収束どころか、発電所貯留タンクからの放射能汚染水漏れの問題も解決に至っていません。私どもは東京でのオリンピック開催には多くの問題があることから反対の立場をとってきました。人口減少社会で不要不急の大型公共工事に着手し、大型施設などが負の遺産となってはなりません。しかし招致決定の事実は受け入れ、協力すべきところはしていこうと考えています。2020年には多くの外国人がやってきます。今日本にいる外国人が住みよい環境を作ることが7年後に向けての環境整備につながると考えます。

 

そして、少なくとも2020年の開催前までに、被災地の復興の目途をつけること、持続可能エネルギー政策への転換、地震による火災危険度4および5を内在させている当区のような自治体をなくすことが最優先でなされるべきと考え、今後も防災対策に取り組んでまいります。

 最後に。

私どもは引き続き、原発依存のエネルギー政策から脱却し地球温暖化問題を解決するための活動に取り組むとともに、省エネルギーを基本に再生可能エネルギーの普及と拡大、地産地消をすすめ、行財政運営においても環境面からも持続可能な社会を目指し活動していくことを申し上げ、区議会生活者ネットワークの意見とします。