学習会『世界の食糧事情と私たちの食卓』でTPP問題を読み解く
12月8日、農政ジャーナリストの榊田みどりさんを講師に行なわれた学習会『世界の食糧事情と私たちの食卓』に参加しました。主催は杉並区消費者グループ連絡会。11月末に映画『フード・インク』上映会にたくさんの人を集めたばかりです。
学習会では、今、選挙の争点としても注目されているものの、わかっているようでわからないTPPの問題を、実にわかりやすく解説して下さり、大変タイムリーな企画となりました。
前半は、穀物価格の高騰が意味するもの~2008年以降の世界各国と日本の動きから、現代の食糧事情を読み解いてくださいました。天候不順、政策上の問題、不況、人口増加が引き起こした需要と供給のアンバランスが私たちの食卓をじわじわと変えてしまうことを改めて知ると恐怖をおぼえます。国内自給がますます軽んじられ、他国の農地を奪い合っている現状。もはや『自給率』を問題にしないで『自主率』を上げる努力をする隣国。1円でも安い物を求めて産地も製法も気にしない層が増えている日本人。どうしたらいいのだろう?と唸りながら後半のTPPのお話を聴きました。
そもそもTPPとは何か?95年のGATT締結から順を追っておさらいし、その流れからすれば、マスコミで取り上げている「TPPを締結しないとグローバリズムに乗り遅れる」という論調はナンセンスであるということがわかりました。また、なぜ秘密交渉なのかという疑問やISD条項をどうするかという問題、そしてTPPが締結されたら最も影響を受けるのは消費者であるということなどが突き付けられ、これからもTPP問題の経緯を見て行かねばならないと思いました。
最後に被災地での取材のことを話してくださいました。飯舘では作物を育てても売れないし食べられない、でも農地は手を入れないと荒れ果てて農地としてつかえなくなるので、数十年後に子や孫が故郷に帰る時のために耕し続けるとのこと。原発事故のせいで日本の食品の価値が一気に下がったことで苦しんでいる東北の農家・畜産家の方々に対して消費者として申し訳なさでいっぱいになりました。
聴けば聴くほど不安になる話ばかりではありましたが、世界的な流れがもう止まらない以上、消費者がどこまで賢くなれるかが肝心なのでしょう。消費者が何を選び、何を買うのかが食糧問題の鍵です。榊田さんのいう消費者のチカラが「試される」のはこれからです。 (杉並ネット会員 鹿取愛弓)