第2回定例会一般質問  2011.6.15 曽根文子

子どもを放射能から守る取り組みについて

 

3月11日の東日本大震災、福島原発の事故の収束の見通しは未だに立たず、日々空や海に大量の放射性物質が放出され続けています。そんな中で放射線感受性の強い幼い子どもを持つ多くの保護者が不安を抱えながら子育てをしている状況です。

4月には杉並区内にあるビルの屋上の放射線量をガイガーカウンターで計ったら高い値が計測されたという映像がインターネットで流れました。真実を確かめたい、そのため区に実際に放射線量の計測を実施すべきではないかと思い保健センターに問い合わせたところ計測の予定は無いという回答でした。

生活者ネット・みどりの未来」は518日に区長と教育長に面談し、ヤゴ救出作戦を直後に控えていた小学校プールの水質、保育園・子供園・幼稚園の砂場と小学校の校庭の放射線量の測定、測定結果のホームページでの公開の3点について要望書を提出いたしました。その直後から幼い子どもをもつ母親が中心になって同じ内容を求める請願署名活動を始めたところ、3週間という短期間にもかかわらず4000筆以上が集まりました。区民からの強い不安の表れだと思います。

私も5歳の子どもを保育園に通わせる母親として、子どもの健康を心配する保護者の方の気持ちを代表するつもりで、区の子どもを放射能から守る取り組みについて、学校や保育園などでの放射線量の計測と給食について質問いたします。

 

まずは放射線量計測についてです。

このたび区が、おおぜいの区民の要望に応えて放射線計測のための経費を補正予算に計上されたことに対し、先ず感謝申し上げます。

6月3日付で区内のプール5か所で、3月11日以降の雨がすべて含まれる水を採取・計測され、6月9日には放射能は不検出という結果がでて、多くの保護者は今後余計な心配をせずに済むことになりました。7月のプール開きを控え、保護者の不安解消に大きく寄与したと評価するものです。

 

それでは、最初の質問として区が今回放射線を計測する方針を示された目的を伺います。

また、この間区にも計測を求める声が数多く寄せられたことと思いますが、その内容はどのようなものであったのかお示しください。

そして、補正予算で経費として927万5千円が計上されていますが、その内訳についてもお示しください。またどこをいつまで計測する予定か具体的にお示しください。

 

今回の計測にあたっては、外部の専門家を招いて測定結果を評価した上で公表する、とうかがいましたが、専門家といってもいろいろな立場や考え方の方がおられ、人によって全く違う評価がされています。区民にとってはバランス良く複数の専門家に評価していただきたいと考えます。具体的にどなたをお考えでしょうか。また放射能の対応については庁内のさまざまな部署の担当者が関わることが必要と考えます。区の考えをうかがいます。

 

計測の結果、数値が低く安全が証明されることを望みますが、万が一高い値が計測された場合には、専門家の助言も得て独自の基準を定め、その数値によってどのような対処をするのかを決めておくことが必要だと考えます。幼児は砂場あそびが大好きで、鼻の穴に泥や砂が入り黒くなっていたり、泥だらけの指をしゃぶったりするのも普通に見られることです。幼児は砂を吸い込み、また食べているような状況にあるのです。そのため基準をこえる高い値が出た場合には周辺も計測すること、砂場の砂の入れ替え、校庭の土壌の入れ替えなども行う用意をしておくことを要望いたします。

 

屋外プールについては、先ほども述べたように、3月11日以降の雨が含まれた水を調査してヨウ素131、セシウム131137がそれぞれ不検出だったこと、それを公表されたことは区民の大きな安心につながりました。しかし原発の事故現場ではいつまた暴走が起きるかわからない状況にあり、もし変化があったときにはただちに水を検査し、結果によってはプールの使用を中止するなど処置をとってくださるよう、今後もご配慮をお願いいたします。

 

今回は外部機関に測定を委託する、また外部の専門家を招いて測定結果を評価すると聞いていますが、原発事故は3か月たった今なお収束の見通しが立たず、これから長期にわたって放射能と付き合うことになると覚悟しなければなりません。区は長期的な視野にたって取り組むことが必要だと考えます。区として今後どのように取り組んでいかれるのかうかがいます。

 

放射能については「正しく怖がる」ことが重要と言われています。そのための十分な情報提供がされるべきであり、計測結果だけでなく、理解を深めるために疑問や不安など自由に意見交換できる場があればと考えます。区で放射線を理解するための放射能の専門家、医療関係者、行政などによる学習会を持ち、その後に一般参加者も加わってそれぞれの立場から意見交換できる場が必要と考えますが、いかがでしょうか。

 

また、区民が放射線について理解するためにホームページに有益な情報を掲載するなどいま以上に充実を図っていただきたいと考えますが、区としてはどのように取り組む予定でしょうか。

東京23区において区が独自測定を行う動きが広がる中で、23区長でつくる特別区長会が東京都に放射線量測定を充実させるよう要請しました。それが都を動かし、空間放射線量の測定を区市町村が希望する都内100か所で行うことが決定されました。また都が確保した計測機器70台を市区町村に貸与し、さらに今後30台を増設し、測定を行うこととなったことは、同じ機種の計測器で測ることによって、各所での比較もでき、有効なデータが得られることを期待するものです。ここで得られる計測結果と杉並区独自の計測結果を合わせて杉並区のホームページで掲載していただく事もお願いいたします。

以上を伺って次に給食についての質問に移ります。

 

同じように保護者の方からは、学校や保育園の給食に使われる食材の放射能汚染について多くの問い合わせや要望を受けています。私自身も日本の暫定基準は国民の健康を考えて設定されたものではなく、原発から放射能漏れが続く現状に合わせて急遽作られたものであり、その判断に不安を感じています。緊急時とはいえWHO世界保健機関の基準と比べて、我国が採用している食品における放射性物質の暫定基準値は非常に甘いものです。例えば飲み物で比べるとWHOがヨウ素131、セシウム137は共に10ベクレルとなっていますが、日本はヨウ素131300ベクレル、セシウム137200ベクレルとヨウ素が30倍、セシウムが20倍となっています。また食べ物については国際的に食品基準を決めるCODEXの基準が100ベクレルであるのに対し、日本は野菜のセシウム137の基準値が500ベクレル、ヨウ素131の値が2000ベクレルとなっており、それを子ども達に食べさせて大丈夫なのかと考える保護者が多いのは当然だと考えます。

 

区が給食の食材には素性のわかる国産品を極力使う努力をされていることを評価します。であればなおさら、食材の産地に神経をとがらせなければならなくなった原因である原発事故に対し、残念でなりません。

 

区は、学校や保育園の給食に使う食材の放射能汚染については安全確保のためにどのような取り組みをされているでしょうか、うかがいます。

 

保護者の中には、給食の食材について、関東以南のものを使用してほしい、牛乳の産地を北海道に限ってほしい等の要望をなさる方が少なくありません。私はそもそも食品の基準値が高いことにその原因があると考えます。生活者ネットワークは、これまで食品に含まれる化学物質の安全性リスクについて、影響を受けやすい子どもを対象とした「子ども基準」を設けるべきと主張してきました。放射能汚染を常に心配しなければならないいまの状況で、子どもたちを守るためには、なおさら「子ども基準」を設けるべきです。それは広域的に都や国レベルの施策として行われるべきで、杉並区は他の自治体と連携し、都や国に対策を求めて動くことを要望いたします。

 

食の安全を確保する仕組みのひとつとして、現在保健所が取り組んでおられる「食に関する意見交換会」があります。食に関して消費者、生産者、事業者、などいろいろな立場の人たちが集まって意見を交換し合う、いわゆるリスクコミュニケーションの場です。私が先ごろ参加した会では生肉の食中毒事件などを受け「最近の食品衛生状況」をテーマに話し合われていました。これと同様な、放射能をテーマとした保護者、学校関係者、栄養士、給食調理員、食材の生産者、給食に係るすべての人がそれぞれの立場から意見をのべ情報交換できるリスクコミュニケーションの場の設置も必要だと考えます。食べ物に含まれる放射性物質についてどう考えるのか、どういう食を選択するのかは、最終的にはその人自身が判断するしかないのだと思います。ただ、いまの極度に不安を募らせている人とほとんど無関心の人との間に認識の大きな差が生じている状況に対して、区がその溝を埋めるような努力をしていただけないものか、と思います。多くの人の意見や立場に触れること、人に話を聞いてもらうことで自分の考えを整理し、状況を受け止め判断する助けになると考えるものです。

 

ある小学校では給食委員の子どもたちの側から、被災地支援の給食メニューを提案したということで、保護者の方から心配の声が届けられました。その心配の原因はつきつめれば食品の暫定基準値が甘いことにあります。杉並区が学校給食を食育の機会として積極的に取り組んでおられることを評価しています。そこで、いま直面している放射能汚染の問題についても、食の問題のひとつとして子どもにきちんと事実を伝え、子どもとともに考えることが必要と考えますがいかがでしょうか。区の見解をうかがいます。

 

放射能に関して心配している保護者の不安を受けとめ疑問に答えてくれるような電話相談窓口があればと思います。放射線の専門家や小児科医、保健師などの医療関係者、カウンセラーなどが対応できるような電話相談があれば、子どもをもつ保護者だけでなく多くの区民にとって不安は軽減されると考えるものです。

 

杉並区で子どもを放射線の被害から守るために区は最大限の努力をすべきと考えます。区の決意をうかがいます。

 

このように大きな不安をこれからも長期間強いられることになった放射能汚染の原因は原発事故です。

 

これまで区内の子どもを守る取り組みについて述べてまいりましたが、高い放射能汚染が確認されている福島県内の子どもたちのことを忘れてはなりません。文部科学省はその汚染状況に合わせて1年間の基準を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに緩めると発表し、日本国内のみならず海外からも強い批判と抗議を受けました。現在は「年間の基準値を1ミリシーベルトにするよう努力する」と変更しましたが、子どもたちを守ることを最優先に考えているとは言えない対応がとられています。大人として区内の子どもを守ることと同様に、福島県内の子どもたちを守ることにも取り組んでいかなければなりません。

今回の福島第一原子力発電所の事故は、原発が人の手で完全に制御できるものではないこと、多くの被曝労働者を生み出し続けること、一度事故が起これば数十年にも渡り空気、水、土壌、海を汚染し、食物の安全も根底から壊されてしまうことを明らかにしました。原発はトイレの無いマンションと言われていますが、使用済み核燃料は最終処分方法が無いままに生み出され続け、それが原発の傍に容量を超えて置かれている状態です。原発を使い続けることは負の遺産を生み出し続けることです。今こそ、脱原発の決意をするときです。そして「足るを知る」省エネの暮らし、自然エネルギーへの転換を進めるべきだと考えます。放射能汚染の根本原因を取り除き、子どもたちに安心して暮らせる社会を残すために、議会、行政が一体となって区民とともに脱原発を強く進めていくべきと申し上げ、私の質問を終わります。