TPP締結で日本の食料生産はどう変わるのか?

農業者だけでなく、消費者も考えるべき課題

TPPをめぐる産業界と農業界の言い分を解説する榊田みどりさん
TPPをめぐる産業界と農業界の言い分を解説する榊田みどりさん
11月13日、農業ジャーナリスト・榊田みどりさんをお迎えして「飽食の先におこること〜世界の食糧事情と私たちの食」と題した地域協議会主催の講演会が行われました。講師、榊田みどりさんの日本の農業への熱い想いと参加者の関心の高さから、講演会というより双方向の意見交換会の様相を呈した場面もありました。それは、今、私たちが直面する大きな課題を、日本の産業構造、食糧政策、日本の農業が抱える問題、私たちの暮らし方という切り口で、考えを深める糸口を提示されたからだと思います。

序盤の「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加検討をめぐる議論について」は、今まさに連日の報道で耳目にするホットなテーマですが、この問題が突然浮上してきた背景を、政治状況、経済界の思わく、また日本の農業の現状など多方面からのアプローチで分析されました。TPPが施行されれば、都市に暮らす消費者にこそ「食」の大転換をもたらすものになると指摘されました。

自給農業を捨て「売れる」作物づくりの農業に転換したフィリピン、ネグロス島が国際相場の変化によって飢餓の島になった例や、国土保全と環境への貢献という観点で農業に手厚い保護政策を採るフランスの例などが紹介されました。

日本の農業を憂いつつ後半の「日本の食構造を改めて考える」では、加工・外食などの80兆円食品市場に対して、国内農業販売額はその1/10という数字に唖然とし、改めて消費者として何ができるかを考えさせられました。若者が都会から山間地に移住し、「食・エネルギーの地域自給」をめざして、林業や農業を始める動きがあるという話題にうっすらと希望をつなぎました。

最後のまとめでは「持続可能な食べ方・暮らし方」を今一度考えることが必要であり、日本が農業を捨てないためには、時期としてギリギリのところにいることを実感させられました。旬のもの、近くでとれるものを自分で調理して食べる、というシンプルな暮らしを見直す時期なのだと思います。          杉並ネット会員 鹿取愛弓