2009年度決算についての意見 2010.10.7市橋綾子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、決算特別委員会に付託された2009年度杉並区一般会計歳入歳出および各特別会計歳入歳出決算について意見を申し述べます。

 

当該年度は、歴史的な政権交代を経て国のしくみが大きく変化を遂げた一方、日本経済は、アメリカの金融危機に端を発したいわゆる「百年に一度」といわれる世界的な景気後退に陥りました。民間消費の堅調さを背景に持ち直し基調がみられたのも事実ですが、デフレを懸念する声は消えず、雇用は改善されないまま、完全失業率5.7%と過去最高水準を示した年でした。

 

当区においては、新公会計制度になって初めて、経常収支比率が適正水準とされる80%を超え、83.0%となりました。入ってくるものが減り、予算の執行率を高めていった結果と考えられますが、私どもは減税自治体構想の実現に走ったため、緊縮政策がとられた結果ではないかと思っております。いずれにしても、今後、注視していく必要があることは言うまでもありません。

 

限られた時間ではありましたが委員会での質疑をとおし、また、いただいた資料をもとに施策の執行状況について私ども会派で調査を行ったうえで判断した結果、一般会計ならびにすべての会計決算案に対し区議会生活者ネットワークは認定すべきものと判断しました。以下、決算審査の締めくくりに当たり、時間の制約により述べられなかったことなど生活者ネットワークの考え方を述べさせていただきます。

 

収入未済額について

一般会計のみならず、国民健康保険をはじめとする各保険事業会計においても、収入未済額が増大し続けています。全国どこの自治体にも現れている傾向ですが、当区においても効果的な解決策が見えません。ただ、この解決は低所得層からの徴収に求めるより、富裕層にある滞納者への対応を優先すべきです。区はこのことを念頭に、さらなる地道な徴収努力をされるよう求めます。

 

新しい公共について

今回の質疑の中で、「新しい公共」というキーワードがたびたび語られました。先の一般質問で、区長の言われる「新しい公共」は、内閣府の「新しい公共円卓会議」における見解とほぼ同じ考えであることが示されました。

 

「円卓会議」が今年6月に発表した「新しい公共宣言」は、その冒頭で「人びとの支えあいと活気のある社会。それをつくることに向けたさまざまな当事者の自発的な協働の場が『新しい公共』である。」とうたっています。公共サービスの担い手が行政以外の民間に広がることが「新しい公共」の姿なのではなく、「さまざまな当事者の自発的な協働の場」ということをしっかりと受け止めていただきたいと思います。

 

その意味で、NPOなどの市民活動に対して、その自発性の芽を育て、行政もともに育ちあうというパートナーシップ型の区政を築いていきたいものです。杉並区では、他自治体に比して早くからNPO等の市民活動が活発に行われ、また行政側の取り組みも積極的に展開されてきました。その分ここへきて問題や課題も見えてきているように思います。今後市民と行政によるさまざまな協働の実践を積み重ねることで、「新しい公共」の風土を醸成していけるものと期待しています。

 

選挙管理委員会について

711日のトリプル選挙で大量の無効票が発生した事件は、記載台を4か所とすべきところを2か所にしたことが主たる原因であることを選挙管理委員会も認めておられます。そして今回、参院選の2枚の投票用紙がマニュアルとは逆の順で渡されていた投票所があったことも明らかになりました。選管には、期日前の投票所および当日の66か所の投票所で何があったのか、余すところなく解明したうえで、社会的規範に照らして区民が納得できるような総括がされるよう、あらためて強く求めます。

 

環境施策について

都の改正環境確保条例が今年度より施行され、温室効果ガスを基準年度より8%削減という、きわめて高い削減義務が区庁舎にも課せられました。しかし、目標達成に向けた区の具体策が明確に示されていません。もとより、この削減義務は、職員だけががんばることではなく、区民や事業者、もっといえば議会もともに参加すべきものです。具体策を目に見えるように提示くださいますようお願いします。

 

「漢字表記かかな表記か」ということについて、一言申しあげます。

「子ども・子育て行動計画」の「ども」の表記をかなとしたことを歓迎しています。「子ども」の「ども」はかな表記が一般的に定着し、近年は国の施策をはじめ公的な文書においても漢字表記をほとんど見ることはありません。これを区がいまさら漢字表記に変更するのであれば、ふれあい、みどり、すぎなみ、まちづくり、くらし、あんしん、などの言葉も漢字表記にしなければ整合がとれないのであり、「ども」をかな表記に戻したことは至極当然です。この際、「子供園」「子供読書活動推進計画」などの「供」の表記をできるだけ早い時期にかな書きに改めることを求めます。

 

最後に議会運営について

毎回申し上げていますが、予算は見込みのものであるのに対し、決算は行政が執行した税金を表したもので重要さの度合いは劣るものではありません。決算審議の時間は予算の審議時間一人6分より短い5分という状態では、とても、決算のチェックを大事にして行こうという議会の姿勢がうかがえるものではありません。審査中、予定時間以内に質疑が収まるよう、答弁時間の短縮を促す声がしばしば聞かれましたが、当初の時間設定に無理があったのだと思います。当委員会の冒頭で、他の委員から質問時間への指摘がありましたが、私ども区議会生活者ネットワークとしても決算の質問時間についてご一考いただきたい旨、申し添えまして、区議会生活者ネットワークの意見とします。