第2回定例会一般質問   2010.6/5 小松久子

私は、区議会生活者ネットワークの一員として、プラスチックごみの削減について、在宅で介護する家族の支援について、以上2点、質問いたします。

 

《プラスチックごみ削減について》

35年間にわたって「焼却不適物」として扱われてきた廃プラスチックが、2008年に「埋め立て不適物」すなわち「可燃ごみ」に区分変更となり、一部を除くプラを焼却するようになって2年経過しました。「一部」というのは、いうまでもなく、ペットボトルと容器包装プラのことです。杉並区はこれらを資源として生かすため「燃やさない」ことを継続しています。

 

このことは評価しつつ、プラスチックの焼却がもたらす環境汚染とCO2排出量の増加を懸念する立場から、燃やすプラスチックを減らしていくことがごみ全体を減量していく中でも重要と考え、今回、質問いたします。

 

区では今般、環境基本計画の改定が行われ、本会期中の都市環境委員会で報告されるとうかがっています。ことし2月に公表された「改定案」の段階では、「行政の取組み」としてプラスチック製容器包装年間回収量の目標数値が平成22年度5,200トン、平成25年度5,800トンと、「増やす」計画であったことに驚き、予算委員会で質問したところ、分別を徹底させリサイクル率を上げていく目的で数値を拡大させるのだ、というご答弁でした。

 

私は、リサイクル率を上げることと回収量を増やすことは別であって発生抑制が必要と考え、区が掲げる「脱石油社会をめざす」のがほんとうなら、石油由来であるプラスチック類の製品そのものの使用を抑えていくような生活提案をすべきではないか、と申し上げました。その後、パブコメを経て策定された新しい環境基本計画では、容器包装プラ回収量の目標数値が平成22年から25年まで、増えるのでなく横ばいに修正されたとうかがい、納得したところです。

 

容器包装プラの回収は、100パーセント区の清掃・リサイクル事業の一環として実施されているものです。容器包装リサイクル法にのっとって当区が23区の中でもいち早く分別・回収に着手し、実験的なモデル事業から始めて地道に実践を積んでこられたことは、生活者ネットワークとして高く評価してきました。現在、23区中16区が何らかの形で容器包装プラの分別回収を実施していますが、杉並が他区の取り組みをリードしてきたのは間違いありません。区がこれからも名実ともに環境都市と称されるよう、前向きな取り組みを期待する立場から、以下、質問いたします。

 

はじめに、その廃プラの分別収集とリサイクルについてです。これまでの取り組みを区としてどのように評価されるのか、また、今後もこの取り組みをさらに推進していくべきと考えますがいかがか、見解をおうかがいします。

 

可燃ごみに占めるプラ混入率が、直近の区の家庭ごみ組成調査では7.6%になっています。この中には容器包装プラが相当量含まれていると考えられますが、区の原因分析はいかがでしょうか。

 

改定された環境基本計画には、容器包装プラスチック回収量の目標値が設定されていますが、可燃ごみの中に占めるプラスチック混入率を下げる目標値が見当たりません。削減目標を立てるべきではないのでしょうか。見解をうかがいます。

 

容器包装プラの回収率を上げる取り組みが必要です。杉並区では毎年人口の5分の1から4分の1の人が転出入すると聞いています。絶えず人が動いている当区にあっては、啓発活動も意識的に間断なく行われなければなりません。お考えをうかがいます。

 

今年度の容器包装リサイクル協会の落札結果により、区で回収したプラ約4,000トンのうち3,000トンが足立区、残りは板橋区の施設に運ばれます。ここで中間処理がほどこされ保管ののち、さらに再商品化のため別の事業者に輸送されることになります。昨年、生活者ネットワークの仲間とこの足立区入谷にある中間処理施設を視察いたしました。

 

杉並区内から車で運ばれてきた廃プラスチックが山積みで保管されているようす、また、動くベルトコンベアーの上の排出物から、異物やリサイクル資源として不適切なものを人の手で取り除く作業を経て、11メートルの立方体に圧縮・梱包されるまでの工程を間近に見てからは自宅のごみの出し方が変わる、と参加しただれもが感想を述べています。

 

このことからも、廃プラ資源化の工程が、どこか遠くの土地ではなく、身近なところで確認できることがほんとうは望ましいのだと思います。ごみを自治するという視点に立てば、せめて中間処理的な作業は自区内で行うことが、成熟した自治体のあり方であり、公平な負担のあり方なのだと思います。

 

地球温暖化の現実を知ることが省エネ行動を促すように、ごみのゆくえを知ることはごみの排出のしかたを変えるはずです。プラスチックに限らないことですが、資源が回収された後のゆくえがわかるような広報活動が必要です。

 

広報活動といえば、リサイクル事業における区の費用負担の現状を区民に伝えることで、問題提起することも重要です。というのは、リサイクル事業は安易に焼却するよりはるかに高いコストがかかり、それがプラリサイクルをしない自治体の理由になっていますが、ではリサイクル費用は自治体がほんとうに負担しなければならないものなのか、考える必要があるからです。

 

区が負担するということは、プラスチックを使わない、プラごみを出さない人にも処理費用が課せられることですから、理にかなっているとはいえません。ごみを出す人がその処理費用を支払うしくみに変えなければなりません。製品をつくる生産者が、消費し終わって廃棄物として排出するところまで責任を拡大すること、すなわち「拡大生産者責任」のしくみをつくることで、資源循環を継続してすすめていけるのです。

 

区がごみ処理やリサイクル事業の経費としていくら負担しているのか、品目ごとに具体的に数字で表わし、区民に考える機会と材料を提供すること、すなわち廃棄物会計を明らかにすることで、ごみ処理の負担のあり方を見直し、拡大生産者責任の確立に向けた議論が進むようにすべきと思います。ごみのゆくえと廃棄物会計についての広報は区の重要な役割です。見解をうかがいます。

 

区民のマイバッグ持参が定着してきていると感じます。当区におけるレジ袋削減の取り組みを評価するものです。削減効果をレジ袋およびCO2の削減数値でお示しください。

 

レジ袋有料化の実践にあたっては、区内事業者の理解と協力があって、実現できたといえます。この協力関係を生かして、プラスチックごみ総量を削減する取り組みへと発展できないか、と考えます。たとえば、プラ容器の店頭回収やガラス容器のリユース、消費者へのポイント制度など、モデル実施の可能性を検討すべきではないでしょうか。市民活動団体に声をかけて事業者に向けたアイデアや提案を出してもらう、など、多くの区民がかかわってプラスチックごみを減らす議論ができるのでは、と考えます。区の見解をうかがいます。

 

なお、食品に直接触れるプラスチックの安全性については、今の科学的知見では問題なしとされますが、ガラスなどに比べれば歴史が浅いため、新たな科学的知見が今後出てくる可能性は否定できません。将来にわたっても安全であるとは言い切れませんから、食品の容器として、非プラスチックを広げることが必要だと思います。区はそのような啓発を行うべき、と考えるものです。

 

ところで、前区長が在任中の2008年より地球温暖化懐疑論に同調する姿勢を明確に示すようになり、CO2排出量削減は不要であるかのような発言が出るなか、区の環境施策の打ち出し方に変化が見られるようになりました。たとえば、省エネを推進する目的として「脱石油社会」という文言を使うようになったことです。

 

小泉元首相の時代に「脱石油戦略」というものが策定されましたが、国家戦略としてのエネルギー対策を構築するうえでの指標として「脱石油」は適した言葉だと思います。ですが、区民が環境問題を広く共有し啓発する言葉としてふさわしいのか、疑問です。いま地球上の生き物が直面している環境問題を本質的にとらえるなら、二酸化炭素の排出がより少ない生活のあり方を提案すべきです。山田宏氏が区長を退いたいま、今後、区はCO2削減目標をしっかりととらえ「低炭素社会」をめざすことを積極的にアピールすべき、と申し上げ、つづいて、在宅で介護する家族の支援について、質問いたします。

 

《在宅で介護する家族の支援について》

10年前、介護を社会化するシステムとして始まったはずの介護保険制度でしたが、改正を経るたびにかえって家族への介護の負担が高まり、高齢者の在宅介護をめぐるさまざまな問題がクローズアップされています。虐待の頻発、老老介護、男性介護者や働きながら介護するシングルの増加、貧困などの実態は、都市化、少子高齢化、国際的な不況という社会的背景のもとで深刻さを増しています。

 

これを解決するには、介護保険制度の枠をこえて社会保障制度全体をつくりかえるほどの大事業が必要になりますが、考えてみると、この問題は高齢者介護だけに限ったものではありません。在宅介護を「介護する人」の側からとらえ直してみると、障がい者、病気で寝たきりの患者を介護する家族も、抱える問題の根本に共通するものが見えてきます。

 

家族介護者がいることが前提で成り立ついまの日本の在宅介護において、介護者への肉体的・精神的、さらには経済的な負担は、人権が抑圧される問題ととらえることが必要なのではないか。在宅介護を担う家族をサポートするため居場所を設けるなどの活動を広げてきたNPOの代表者は、相談事業などの活動現場でその感を強めてきたそうです。

 

社会保障制度を再構築するうえで「介護する人」「看病する人」の問題をきちんと位置付け、ケア者を支援するしくみを社会的に整備することをめざし、いま市民が動き始めています。先行モデルとされるのは、イギリスの例です。現地を訪問調査された方の報告によれば、イギリスでは介護者の概念は、障がい別や、高齢者かそうでないかという縦割りではなく、高齢者、障がい者、障がいのある子どもなどをケアする人たちのいずれも、「介護者」というひとつの括りでとらえられているのだそうです。

 

介護者自身が自分のことを後回しにして、自分より弱い立場にある人のことを優先させなければ、と自分を追い込んでしまう人が少なくないのは日本と同じ状況ですが、そうした介護者のために多彩なサービスが用意された、介護者だけのための在宅介護者センターが全国的に設置されているところが大きな違いです。同センターを運営する財源は公費と王室関連の福祉団体の独自予算であり、そこでは相談・情報提供、人権擁護活動、カウンセリング、などを行うことが義務付けられ、モーニングカフェなども設置されています。

 

そしてそのような事業の法的根拠となっているのが、1995年に制定された法律「介護者法(ケアラーズ・アクト)」です。これまで2度の改正を経て、08年には「介護者のための全国戦略」が策定され、介護者支援が強化されているとのことです。

 

日本での市民の動きは、イギリスの手法をお手本に目標を定めつつ、最初のステップを踏み出そうとしています。67日に設立が予定されている「ケアラーズ連盟」は、病気や障がいごとに縦割りで分断されている介護を横につないで、「ケアする人たち」すなわち「ケアラーズ」の権利を守るための活動を推進していこうとしています。

 

私は生活者ネットワークの仲間とともにこの趣旨に賛同し、運動をすすめていきたいという思いから、以下、質問いたします。

 

認知症をふくむ高齢者、障がい者、各種疾病の罹患者など在宅で介護を必要とする人は、ヘルパーなどプロの介護者だけでなく家族による介護を受けている場合がほとんどと思われます。そのような在宅の被介護者は区内にどの位おられるのか、把握しておられるでしょうか。またその介護の状況や、介護者本人の生活実態について把握しておられるか、おうかがいします。

 

タレントの清水由貴子さんが母親の介護に行き詰まって自ら命を絶った事件はまだ記憶に新しいところですが、類似の事件は後を絶ちません。「介護うつ」という言葉があるように、介護のストレスが原因で身体や精神を病んでいるケースが少なくありません。また介護のために失業をやむなくされ経済的に困窮するケースも多いと聞いています。区の認識はいかがでしょうか。区内のそのような事例を把握しておられるか、おたずねします。

 

神奈川県秦野市では、老老介護のすえ心中に至った事件が市内で起きたことをきっかけとし、介護者の抑うつ傾向の実態把握を目的に2007年に「介護者実態把握調査」を実施しています。500人強の在宅介護者を対象に、ケアマネージャーが調査用紙を直接配付または聞き取りを行うかたちで実施され、約半数がうつ状態にあるというショッキングな結果が報告されました。その2年前に厚労省が行った調査では「23%が抑うつ」と報告されていましたから、市の関係者も当然それに近い数値を予想していたでしょうが、実際はその倍以上だったわけです。

 

この調査により支援の必要な在宅介護者を見つけ出した同市では、「介護者のつどい」や「介護者セミナー」など介護者支援のサービスの対象者としています。看護師を1人から6人に増やし、直接、電話相談・訪問相談を実施しています。ひるがえって当区の介護者支援施策はどのようになっているのか、3点おたずねしたいと思います。

 

1点目。当区における介護者支援施策としては、まず家族介護継続支援事業 認知症家族の安らぎ支援事業が挙げられるかと思います。これらの概要をお示しください。

 

2点目。また、認知症でない高齢者、在宅で闘病生活を送る難病患者などで家族介護者はどのような支援が受けられるのでしょうか。障がい者(児)の家族はいかがか、併せて伺います。

 

3点目。秦野市が実施したような、介護者を対象とした実態把握調査が当区でも必要と思います。実施すべきではないでしょうか、うかがいます。

 

介護保険制度の利用者だけに限ってみても、過剰な介護を抱え込んでいつ倒れても不思議でないような、過酷な状況にある在宅介護者は決して珍しくない、ということを福祉の現場で働くヘルパーやケアマネの人たちは口にします。同じことは障がい者や難病患者の家族の場合にもいえます。

 

イギリスで最初に介護者支援活動として始まったのは、高齢者問題ではなく、若年世代の就業支援だったそうです。親の介護のために職に就けない、あるいは職を失った若い人たちの就職相談や、技術取得プログラムの活動が出発点と聞きました。

 

日本ではどうでしょうか。介護休業を保障している企業はまだ多くありません。一事業体としての杉並区の状況はいかがでしょうか。区の職員が、家族に介護が必要になったために休業を申し出た事例はないか、またその場合、区の対応としてどうなさるのか、うかがいます。

 

おりしも、育児・介護休業法が改正され630日に施行されようとしています。介護休暇制度の新設がここに盛り込まれましたが、当区では事業者として、法に基づく取り組みをどのように進めていくお考えか、お示しください。

 

在宅で介護する家族に共通する問題が、介護者の生活を圧迫し、人権侵害にまで至っていることが社会問題として捉えられていない、と先に述べた「ケアラーズ連盟」設立に向けて奔走中のNPO代表者は指摘します。介護者の権利擁護のしくみが必要であるとして、イギリスのように法制化をめざしているといいます。介護者の権利擁護について、区はどのようにお考えになるのか、見解をうかがいます。

 

また、介護者を支援するしくみとして、さまざまな介護者のレスパイトケアに取り組む市民の活動が注目されます。21世紀ビジョンで「個人の尊厳」「区民一人ひとりの人間性が尊重されることを何より優先」とうたう区としても、このような活動を支援すべきと考えますがいかがでしょうか。おたずねします。

 

質問は以上ですが、最後に1点つけ加えます。きょう私が介護者の問題を取り上げたのは、私にとっては大切なある人のブログに背中を押されたからです。その人は昨年ALS(筋委縮性側策硬化症)という難病に倒れ、ご自宅で奥さまや娘さん、ヘルパー、看護師さんなどの介護・看護を受けながら療養生活を送っていますが、身動きのままならぬベッドの上から日々ブログを発信しています。家族の疲労を目の当たりにして心を痛め苦しい心情がつづられているのを読むと、介護者のストレスが介護を受ける側にもストレスとして積もっていくのだとわかります。何らかの介護者支援のしくみが必要、と繰り返し書かれています。もうこれ以上在宅介護者の問題を放置していてはいけない、ということをこの場で最後に訴え、私の質問を終わります。