「働いているのに貧しい、貧しさのどん底まで落ちて抜け出せない」生活実態。啄木の歌「働けど働けどわが暮らし楽にならざり」には詩情があるけど、これは悲惨そのもので、政治が何の助けにもなっていないことに言葉を失いました。
しかし貧困はその後もさまざまに変容しながら増殖・拡大を続けています。
12日、ホームレスの自立生活サポート活動に取り組むNPO「もやい」の事務局長、湯浅誠さんの講演会が区内で開かれました。タイトルは「現代の貧困と憲法25条」、主催は前回雨宮処凛さんを呼んだ「憲法ひろば・杉並」です。
湯浅さんは、憲法9条と25条をセットで語ることと同様に、戦争と貧困をセットで語ることの必要を指摘します。「米国で若者を軍隊に駆り立てるのに軍国主義はいらない、貧困があれば。貧困から逃れ家族を救うためにかれらはイラクに赴く」と書いたジャーナリスト、堤未果さんの著書『貧困大国アメリカ』を引用しながら、「日本でも野宿者には自衛隊経験者が多い」ことを挙げます。
「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を掲げた25条が保障されない、お金がなくてアパートを追い出されネットカフェに「住んで」いる人は憲法改正の国民投票に行かない。それどころじゃからないです。また「自己責任」を言うのも違う。がんばるためには最低条件、25条が要るのです。
「貧困の最大の問題は目に見えないこと」と湯浅さんは言います。背景にいろんな問題があることが見えない、と。いまの好景気が労働者の生活を抑えつけることによって成り立っていること、貧困が原因の犯罪が増えていること。
それなのになんと、日本政府の貧困に対する見解は、存在を認めていない(!)。人数の調査もしていないのだそうです。私たちは貧困がすぐ近くにあるという現実を認識しなければならない、だから「反貧困バッジ」をできるだけつけることにしました。
区議会議員 小松久子