杉並区の住基ネット訴訟 上告は賢明な判断か

あらためて区民に意思を問うべきでは

杉並区が国と都を相手に起こしていた「住基ネット訴訟」。11月29日に原告敗訴が言い渡された東京高裁判決を受け、区は12月12日、最高裁に上告しました。区議会では5日に総務財政委員会と区民生活委員会の連合審査会において「上告したい」旨の区長の発言がありましたが、それに沿った決定です。

区のHPには12日付で区長コメントと見解が掲載されています。自治権の確立や個人プライバシー権の保障など、これまで主張してきた訴えが2度も司法の場で退けられたことを不当とする論理には、うなずける部分が多くあります。

たとえば判決文にある次のような表現には驚きを禁じえません。

市町村長は、住民が通知を希望しているか否かを問わず、都道府県知事に対し、漏れなく当該住民に係る本人確認情報を送信する義務があるといわなければならず、通知するかしないかにつき裁量の余地は全くない・・・(略)」。

また、「プライバシー権という権利は、いまだこれが認められる外延も内包も不明確であり、不確定な要素が多く、・・・(略)個人情報の保有及びその収集、処理を制限するよう求める権利を憲法13条から直ちに認めることはできない。

これではまるで「国が決めたことに地方が逆らうことはならぬ」「プライバシー権は権利として認めない」といっているようで、いつの時代の話か、認識を疑います。

しかしだからといって、一審、二審とも門前払いされた裁判に三度挑むことが妥当だとは思いません。これまでに裁判経費としてすでに4,374万円かかっていますし、上告でさらに1,000万円余が税金から支払われることになります。

また、最高裁は書類審査のみで行われるので新たに論点を示すことも証言を伝えることもない、といいますから、これまでの経過から見て勝てる見込みはなおいっそう薄いということは、素人が考えてもわかります。

区の見解は理解しますが、その主張を貫くためにここで裁判を続行するのは自治体のすることとして賢明でしょうか?ここでいったん判決を確定させて、改めて区が住基ネットをどう扱うのか区民に問い、国と都に対しては住基ネットの必要性も含め自治体が行う仕事が何であるかを問いただすなかで自治権を獲得する、というのがとるべき判断ではないでしょうか。
区議会議員  小松久子

写真 中央図書館となりの読書の森公園(荻窪3丁目) 12/14

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