第2回定例会一般質問 2015.6.1.奥田 雅子
いのち・平和クラブの奥田雅子です。会派の一員として
1.暮らしのセーフティネットとしての住宅政策について
2.地域を豊かにする空き家の活用について質問します。
いま、住宅政策は、少子高齢化、家族形態の変化、価値観の多様化、経済格差の広がり、地域コミュニティの希薄化、社会保障制度への不安などにどのように対応するかが問われています。住宅問題を単に箱としてではなく、ひとりで住むのか複数で住むのか、複数なら誰とどのようにどこで住まうのかという、住まい方に応じた住宅問題についての議論が必要です。
私は昨年まで地域福祉の活動に関わってきましたが、住まいに関してニーズと実態がかみ合っていないと感じることがいくつかあり、どうすれば解決できるだろうかと考えてきました。
一つには、世代間におけるニーズの違いです。広さを必要とする子育て時代には経済的余裕もなく十分な広さの住まいの確保はままならないのに比べ、高齢世帯は広い住宅に一人暮らし・二人暮らしというような不経済・不効率なことが多々起こっています。国交省が出した「H26年度住宅経済関連データ」でも、子育て世帯は「住宅の広さや間取り」に対する不満を多く持っている一方で高齢世帯は「住宅が広すぎて管理が大変」という回答が増加傾向にあると指摘しています。
二つ目には貧困が社会問題となる中、住宅ストックとしての数は十分足りているにも関わらず、住むところのない住宅困窮者が増えていることです。どんな状況にある人も住まいの確保は生活の最低条件として憲法でも認められた生存権にかかわることですから、市場からこぼれ落ちてしまう人に対するセーフティネット住宅の整備が必要です。
三つ目に、日本の住宅市場における中古物件の割合が欧米に比べて低いということです。メンテナンスやリフォームしながら長く大事に使う文化が形成されてこなかったことが空き家の増加問題の一因だと考えられます。まだ使える家は、小規模なリフォームや大胆に改修するリノベーションもふくめて手を加えることで、空き家にしないように促す政策誘導が必要です。これまで空き家は個人資産という性格上なかなか対策が進みませんでしたが、国の法整備を受けて自治体でも検討が始まっており、期待するところです。特に、私は「まちの縁側」ともいうべき、元気な高齢者や親子連れも立ち寄れる居場所を実際に地域の中につくってきたという経験から社会貢献的な空き家の利活用について注目しています。
そのような問題意識から以下、質問いたします。
最初に、暮らしのセーフティネットとしての住宅政策についてです。
今年度から施行された生活困窮者自立支援法の議論を通して、これまでの行政施策では単身の若年低所得者が住宅施策の主な対象になってこなかったことや、”貧困ビジネス“の温床となる無届施設の増加などへの対応が十分ではなかったことも浮き彫りとなりました。またネットカフェ難民に見られるように、とくに若者世代に、定住する住居がないために就職できない、定職に就けないからアパートなどが借りられない、といった悪循環が生じています。高齢者や障がい者、外国籍住民など、保証人が見つからないために民間賃貸住宅への入居が困難になっているなど、安定した生活基盤を築くためには住まいの確保が欠かせない課題となっています。
昨年2014年に策定された第5次杉並区住宅マスタープランは、2008年度から2017年度までとされた第4次マスタープランを、期の途中で見直す形となりました。第4次マスタープランで掲げられた基本理念は「ともにつくり ともに暮らす すぎなみのいえ・まち・ひと」でしたが、第5次は「誰もが安心して住み続けられる良好な住環境の実現」とされました。その中で、住宅確保要配慮者向けの住まいの整備や空き家対策が重点に掲げられたことを評価しています。この視点に着目し、現状および今後の施策の方向性についてお聞きしていきます。
1点目として、「杉並区の住宅政策について」です。
1-1-1「誰もが安心して住み続けられる」という文言は第5次マスタープランの重要なキーワードと考えます。区はどのような意図でこの基本理念を掲げたのか、見解をお聞きします。
1-1-2「杉並区総合的な住まいのあり方に関する審議会」が区長の付属機関として5月15日からスタートし、高齢者や子育て世代、障がい者の住まいについて検討していくと伺いました。先ほども述べたように住まいは誰にも平等に保障されるべき問題であり、数の確保やハード面の整備とともに、質を担保するソフト面の充実も重要です。また、現在すでに住まい方が多様化している実態にそって、既成概念にとらわれない議論を期待しています。審議会ではこれらを同時に検討していくことが必要であると考えますが区の見解をお聞きします。
2点目「住宅確保要配慮者への住宅支援について」特に公営住宅における対応についてです。
住宅確保要配慮者は、2007年に制定されたいわゆる「住宅セーフティネット法」において低額所得者、被災者、高齢者、障がい者、子どもを育成する家庭等と示されていますが、その中にはひとり親家庭やDV被害者、児童養護施設を18歳で退所した後の若者なども対象としてイメージしておくことが必要だと考えます。そのことを前提に以下、お聞きします。
1-2-1まず、公営住宅への入居についてです。要配慮者には公営住宅の抽選に際して、一般の人の5回分くじ引きの機会があるという抽選アドバンテージがついています。しかし、それでも抽選漏れしてしまった場合の次の救済策としてアパートあっせんや応急一時居室提供がされると伺いましたが、それらを通して要配慮者は住まいの確保が出来ているでしょうか?現状と課題をおたずねします。
1-2-2バリアフリー対策については、エレベーター設置は昨年度中に完了し、今年度からはスロープや手すりの設置をすすめていくと伺っていますが、多くの公営住宅は1階の玄関や集合ポストまでにも数段の階段がある場合が多く、早急(さっきゅう)な対応が求められています。住民からの聞き取り調査などを行い、バリアフリー対応についてニーズを把握すべきと考えますがいかがでしょうか?見解を求めます。
1-2-3また、今後、高齢独居や高齢に伴う障がいなどがますます増加すると予測される中、単身者用住宅や車いす使用者住宅の数は絶対的に不足していくと考えますが、その対策について区の見解をお聞きします。
1-2-4現在の区営住宅等の維持管理業務委託は主に修繕を中心とした内容になっているようですが、その業務委託内容に日常の見守りや相談・情報提供などの機能を加えていくことが出来れば、孤立しがちな高齢者や子育て家庭などの暮らしの安心度が高まり、住まいの質が向上すると考えます。いかがか、区の見解を求めます。
公営住宅の需要と供給の現状を見ますと、供給数が不足しているのに対し、独居であり
ながら家族世帯用の住戸に住み続けている世帯数は264世帯あります。この方々も最初は
家族で入居し、時間の経過とともに結果としてそのような状況にあるのだと推察しますが、
限られた戸数の住戸をできるだけ多くの、特に住宅確保要配慮者に提供していくための方
策を検討する必要があると考えます。単身世帯用への住み替えを促すことで空いたところ
に子育て家庭が入るというのも一つの例ですし、隣り合う住戸をつなげてグループホーム
などへ転用する事例も広がっています。また、退去後の原状復帰工事の時に改修を加える
ことで、家族でもカップルでもない他人同士が互いにプライバシーを確保しながら同居す
る、シェアルームのような住まい方ができる環境につくりかえることも考えられます。
今後、新たな公営住宅の建設が厳しい状況の中、知恵と工夫によって区民の課題の解決に取り組んでいただきますようお願いいたします。
続いて3点目として「誰もが安心して住み続けられる住環境の実現に向けた体制について 」伺います。
1-3-1マスタープランの「計画を実現するために」の項目で、「住宅確保要配慮者に対するセーフティネットについては国や都だけでなく、区民・民間事業者・NPOなど様々な主体が連携を推進していく中で居住支援、自立支援や良好な住宅市場の形成を働きかけていく。そのために、広く区民や民間事業者等が参加できるしくみづくりを行う」とあります。そのしくみづくりとは具体的にどのようなイメージを描いておられるのでしょうか、区の見解をお聞きします。
1-3-2区民の暮らしに寄り添ったしくみにしていくためには、まちづくり・福祉・保健・医療、防災など多方面の視点を取り入れることが必要です。第5次マスタープランには、これら関連部門との連携による庁内推進体制の強化と進行管理が掲げられていますが、具体的にどのような形で推進していかれるのか、おたずねします。
4点目、この項での最後の質問です。「情報・広報、相談体制について」伺います。
1-4-1住宅セーフティネットとしてあげられる住まいには、区営住宅・都営住宅、高齢者住宅みどりの里、シルバーピア、サービス付き高齢者向け住宅、都市型軽費老人ホーム、特養やグループホームなど多種多様なものがあります。多様なニーズに応え選択肢が多いのは望ましいことですが、区民には違いが非常にわかりにくくなっています。自分の状態や経済状況、今後の変化予測に照らし合わせ、どの仕組みが使えるのかが見てわかるように一覧になっていると当事者やその家族にとって助けになると考えます。さらに、住まいに関してなんでも相談できる場があれば、と思います。一番望ましいのは、コミュニティソーシャルワーカーが配置された「暮らしの困りごと総合相談窓口」のようなしくみだと考えていますが、ここでは、まずはあらゆる人を対象とした「住まいの総合相談窓口」的なものを想定しています。そのようなしくみづくりについて、現状の情報ツールの有無、住宅に関する情報提供や相談の体制についておたずねします。
次に、2項目目の「地域を豊かにする空き家の活用について」の質問に移ります。
空き家の増加が問題視されている昨今ではありますが、その中にはまだ十分使えるものもあります。整備・改修することで人と人の出会いの場や地域活動の拠点として活かしていくという発想に立つと、これを活用しない手はないと思います。
その視点でまず、「空き家を所有する側への支援」について3点お聞きします。
2-1-1 1点目です。マスタープランの中の空き家等対策の項目に「空き家の利活用、建替えや除却等の対応策を平成26年度中に検討し、安全・災害対策を推進する」とありますが、昨年度どのような検討がされたのかお聞きします。
2-1-2 さて、区は2012年度、空き家の所有者へのアンケート調査を実施されました。この結果によって具体的な状況が見えてきたと思います。特に「空き家の利活用を検討したい」と回答した16件、東京都の空き家活用モデル事業利用を「希望または検討」と回答した13件については今後、事例につながることを期待したいところです。区として実現に向けた取組みが求められていますが、2点目として、実際のすすめ方のイメージをおたずねします。
2-1-3 3点目、このアンケート調査で空き家の利活用方法に関する設問についてです。「賃貸住宅として貸し出したい」という回答が5件、「区の事業の拠点として貸し出したい」が2件、「建物・土地を売却したい」が4件、「建物を取り壊して公共用地として行政に使用してもらいたい」が2件ありましたが、私が期待したいところの「ボランティアや地域活動に貸し出したい」という回答は残念ながら0でした。資産は運用するか売却するかのイメージはあっても、社会貢献的な活用についてはなかなかイメージしにくく、選択先として考えられないのだと思います。けれど、私はぜひとも地域貢献的な活用を引き出していきたいと考えています。空き家の利活用について学びの場や見学会など実例を知る機会があれば、これを促すことにつながると考えますし、空き家にしないための予防策にもなると考えます。空き家の社会貢献的活用について区が積極的に発信していくべきと考えますが、見解をお聞きします。
最後に「空き家を活用する側への支援」についてお聞きします。
2-2-1いま、空き家の活用事例は様々な地域で展開されています。元気な高齢者や親子連れ、障がいのある方などが気軽に立ち寄れて会食などもできる居場所に造り変える取り組みが市民の間で広がり、たすけあいの拠点ともなっています。ほかにも、グループホーム、若者や高齢者のシェアハウス、子育てや子ども支援の拠点、NPOの共同事務所などニーズや考えられる用途はたくさんあるものの、法の壁が実現を困難にしている場合が多い状況です。先駆的な事例情報を収集して具体的な実践例を区が率先してつくってほしいと考えますがいかがでしょうか? 区の見解をお聞きします。
2-2-2先にも少し触れました通り、私はこのたびの選挙の前まで、そのような市民の取組みをすすめる活動の場に身を置き、このような居場所を「まちのほっとスペース」と呼んで地域のなかに増やすことに努めてきました。この活動をとおして目にしてきたのはこのような事業は営利を目的としていないため、安価な家賃であってもどこも運営は厳しく、スタッフの報酬も少ない中で支えられている状況です。空き家を活用した居場所づくりは、これからの地域包括ケアの形成にも有効なしくみになりうることが、実践からも確実に見えてきています。このような市民の活動を誘導するための区の積極的な支援が必要だと考えます。最後の質問として区の見解をお聞きします。
以上、杉並区基本構想でうたわれた「支え合い共につくる 安全で活力あるみどりの住宅
都市 杉並」を実現するため、区の前向きな答弁を期待して、私の質問を終わります。