使用済み食用油 回収中です
杉並・生活者ネットワークの事務所にはこれまで、廃油が少ない年でも年間約300リットル、2017年は685リットル持ち込まれました。天ぷらや揚げ物に使って不要になった食用油をバイオ燃料BDF(Bio Diesel Fuel)などに再資源化するための中継所として、回収ステーションとなっているからです。
BDFは軽油に代わるディーゼルエンジンの燃料とされ、廃油100リットルから95リットルのBDFができます。大気汚染の原因となる硫黄酸化物はゼロ、呼吸器官障害の原因といわれる黒煙は軽油の半分以下です。
家庭からの廃油は、凝固剤で固めたり布にしみ込ませたりして捨てれば単に燃やされるだけですが、リサイクルすれば健康にも地球にも優しい、CO₂カウントゼロで車を走らせるクリーンなエネルギーとなります。またBDFのほか、飼料や肥料、石けん、塗料、発電機にも使われます。
ただ、この回収油の中には、全くの未使用品もふくまれます。贈答用の缶入りで手つかずのまま、新品同様だけれど賞味期限を10年以上経過したものが大量に持ち込まれる、というケースは珍しくありません。
イタリア産のエキストラバージンオリーブ油や国産ごま油など、高価だっただろうと思われるものもけっこうあります。親の没後に遺品整理をしたので、と化粧箱ごと運んで来られる人もいて、処分に困っていたらしく「引き取ってもらえてありがたい」と感謝されますが、本来なら食品として消費されるべきだったのに、フードロスの観点からすると複雑なものがあります。
全国の食用油使用量は年間約40万キロリットルといい、その半分は飲食店で使われ排出されるそうですが、大部分はすでに回収ルートに乗り、廃棄されることはほとんどありません。問題は家庭から出される廃油です。
こちらはごみになることが多く、もし排水溝に流されれば河川の水質を汚染します。それよりも環境に負荷をかけないエコなエネルギーとして再生させる、そのための回収拠点が増えれば廃油がもっと有効に資源として生かされるのに、と思います。
東日本大震災のとき、ガソリン不足に陥った被災地では廃油リサイクル燃料が車を走らせ、発電機を稼働させるなど活用されました。これも「原発に頼らない」暮らしを指向する取り組みのひとつだと考え、続けていきたいと思います。(事務局長 小松久子)