第3回定例会一般質問 2011.9.12 市橋綾子
男女平等の推進について
私は、生活者ネット・みどりの未来の一員として、「男女平等の推進」について質問します。
3月11日に起きた東日本大震災がもたらした被害は、多くの人の命を奪い、生き残った方たちの生活すべてが破壊されるという甚大なものでした。津波と原発事故により、震災のあった日から長い人で半年以上も避難所での生活を強いられているという現実のなか、あらためて避難所運営やボランティア支援のあり方が問い直されています。私ども生活者ネットワークでは、「内閣府中央防災会議専門調査委員」でもあるNPO法人イコールネット仙台 代表理事の宗片恵美子さんをお招きして被災者支援の学習会を開き、お話をうかがいました。
災害発生直後の避難所では、食糧など緊急課題への対応が最優先になるのは当然ですが、それでも先送りできない女性特有の問題が生じます。昨年2月の第一回定例会での一般質問でも申しましたが、今回も避難所では女性への性暴力やDV被害をはじめとする女性ならではの悩み、例えば避難所では着替えもままならず、毛布にくるまっての着替え、人の目の多い避難所で若い母親が被災のストレスに加え、授乳や子どもの夜泣きに気兼ねをするといった新たなストレスなどは無視されてしまうことなどが報告されていました。
こういう状況は被災者自身からはなかなか語られないため、ときに行政は「声がないのでニーズがない」とすることがあります。性暴力は重大な犯罪ですが、被害届を出さなければ犯罪として扱われず闇に葬られています。避難所生活が長引くにつれ、こうしたきめ細かなニーズを拾うことができる人材が求められます。私は、かねてから「防災計画の策定に女性の参画が必要」「震災救援所運営責任者に女性も位置づけるよう女性のリーダーの育成を」「震災救援所の運営責任者への支援」などを提案してきましたが、この学習会に参加して、避難所運営責任者に女性を置く必要性をあらためて確認しました。
さて、2008年、我が国の災害対策の根幹をなす防災分野の最上位計画である「防災基本計画」が修正されました。それまで「女性の参画」とだけしか書かれてこなかった箇所に、「男女双方の視点に配慮した防災を進めるため、防災に関する政策・方針決定過程および防災の現場における女性の参画を拡大し、男女共同参画の視点を取り入れた防災体制を確立する必要がある」、また、「地方公共団体は、避難場所における生活環境に注意を払い、常に良好なものとなるよう努めるものとする。また、避難の長期化等必要に応じてプライバシーの確保、男女のニーズの違い等男女双方の視点等に配慮するものとする」という記述が加えられました。それから3年が経過しましたが、区の防災体制は男女双方の視点を取り入れたものになっているのだろうか。「男女共同参画都市宣言」を掲げた杉並区なのにどうして地域防災計画を決める31人の防災委員のほとんどが男性なのか、と探っていくうちに、防災に限らず区が行う施策に男女共同参画の理念が浸透しきれてないのでは、という思いが湧いてきました。そこで今回、防災の視点をからめながら男女平等の推進について5つの柱をたてて質問をいたします。
まず4点伺います。
1点目。「男女共同参画社会」とはどういう社会を指すのでしょうか、区の認識を伺います。2点目。杉並の「男女平等推進センター」は「男女平等」が使われています。しかし、当区の施策では「男女共同参画」が使われています。本質的には「男女平等」だと思うところですが、男女平等と男女共同参画の違いは何か、をお示しください。3点目。1997年に「杉並区男女共同参画都市宣言」を行った背景と、この宣言をつくることで何をめざしたのでしょうか。伺います。4点目。これまで当区が進めてこられた男女共同参画事業の評価、そして課題はなにかお示しください。
次に2つ目の柱、国の第3次男女共同参画基本計画との関連で2点伺います。
昨年12月、国は第3次男女共同参画基本計画を策定しました。この基本計画は男性と女性が対等なパートナーとして社会に参画することをめざした法律「男女共同参画基本法」に基づき策定されたもので、2000年に最初の基本計画が策定されて以来、5年ごとに評価・総括をし、今回第3次の基本計画となっています。毎回、「政策・方針決定過程への女性の参画の拡大」を筆頭に、「社会制度・慣行の見直し」「意識改革、雇用等の機会均等」など、重点分野が示されていますが、今回、これらに加えて「男性、子どもにとっての男女共同参画」「貧困など生活上の困難に直面する男女への支援」「地域、防災・環境その他の分野における男女共同参画の推進」「科学技術・学術分野における男女共同参画」「高齢者・障がい者・外国人等が安心して暮らせる環境の整備」の5分野が挙げられました。
そこで1点目の質問です。今回、国が新たに提示した重点分野は、杉並区にとっても重要な課題と考えます。区として、これらをどう捉えておられるのでしょうか。また、今後どのように施策に反映させていかれるのでしょうか、お示しください。
2点目です。国は毎年、男女共同参画社会白書を発行していますが、2004年に起きた中越地震以降毎年、「新たな取組を必要とする分野」として「防災」が挙げられてきました。しかし、当区の男女共同参画行動計画にはこれまで「防災」に関しては入れられてきませんでした。なぜ入っていないのでしょうかお答えください。
今回の震災で、被災地の女性たちは、家財道具がヘドロをかぶり、足の踏み場のない我が家を見て、目の前の出来事を信じたくないという思いで、家に入るどころか、近づくこともしない状況にありました。やっとの思いで家の中に入ったとしても体が動きません。なんとかしなくちゃ、わたしがなんとかしなくちゃ、でも頭も体も動かない。当然だと思います。その女性たちが避難所で炊事を任され、朝5時に起きて夜まで100食を3回つくり続けているのです。3か月も4か月も、そしていま半年が経ち、すっかり疲弊しきっています。地震でやっとの思いで助かった人たちが避難所生活の中で亡くなることがこれまでの震災でも報告されていますが、亡くなる方のうち女性の数が男性よりも多いということがこれまでも報告されています。
また避難所の責任者の多くは男性で、女性たちが声を出しにくい事柄だったり、あるいはやっとの思いで申し出たとしても要望がなかなか伝わりにくい、理解されないという事例を多く聞いています。私もボランティアで被災地を2回訪ね、ヘドロで汚れた食器や炊事道具を洗い、瓦礫撤去後の川の清掃、草刈りをしてきました。被災地では当時水が出なかったため、私たちがタンクに入れて持って行った水で下洗いしかできませんでしたが、それでも被災した女性たちは片づけの目途が立ったと言って、ほっとした表情を浮かべていました。真に必要な支援によって、被災した女性たちは次に向かって歩き出すことができるのですが、自ら「自分の家のあと片付けをしてほしい」と言えない状況があるのです。
そういう女性への支援が必要であるにもかかわらず、避難所の男性責任者から「女性支援のためのボランティア」への理解がなかなか得られず、「なぜ女性に限っての支援なんだ。だめだ」と拒絶され、理解を得るまで説明と説得に長い時間を費やしたこと、このような避難所は1つや2つではない、ということが、日本弁護士連合会主催のシンポジウムでも語られていました。男性からの声だけではなく、女性からの声も届きやすいしくみをもった避難所づくりが必要なのです。これでこそ男女平等の推進ではないでしょうか。
特に杉並区の人口は女性の方が2万人も多いのです。これから高齢化が進むにつれ、女性の割合はもっと高くなっていくはずです。防災を考えるとき、そのことを前提とすることが必要ではないでしょうか。避難所の責任者に女性を入れることをはじめとして防災施策に女性の視点を入れるよう担当課としても声をあげていただきたいと、あらためて要望します。
3つ目の柱として男女平等推進センターについてうかがいます。
先日、横浜市男女共同参画推進センターが防災ガイド「わたしの防災力ノート」を作成したことを知り、お話を伺ってきました。センターが多くのNPOをはじめとする市民グループ、企業、行政の参加で、女性の視点を生かした「わたしの防災力ノート」をつくり、地域の町会・自治会の集まり、防災訓練、消防団や地域の防災員の集いなどに向けて、これまで2000人の男女に出前学習会を行っています。
横浜市に3館ある男女共同参画推進センターは、それぞれが担当課と月1回の連絡会議を持ちながら、地域のネットワークづくりや男女共同参画の積極的推進を促す事業を進めています。キーワードは「地域」。女性の視点で自分が住むまちのリスクを点検するなど、まちづくりへの参加も視野に入れた事業を行っています。お話のなかで、男女共同参画は地域づくり、まちづくり、仲間づくりです、とおっしゃっていたのが印象的で、杉並の男女平等推進センターの建設に向けた講演会で、国立女性教育会館の館長をされていた志熊敦子さんが「センターができたら地域の掘り起こしをするのが一番大事」とおっしゃっていたことを思い出しました。
すでに横浜市では国の第3次基本計画に基づいた行動計画を策定済みということもありますが、センターの機能が当区と全然違いました。横浜市のセンターは公益財団法人男女共同参画推進協会が指定管理者として運営を担い、講座・セミナーの企画、NPOや市民グループ、企業、学校、行政機関等との協働事業、情報収集と提供、広報、調査研究・事業開発、その他は当区と同じように相談事業と施設管理運営事業を行っています。
男女共同参画の課題解決につながる講座・セミナーが多彩なプログラムで展開されていました。
当区はどうでしょうか。「男女平等推進センター」は1997年に児童青少年センターと併設でオープンしました。2007年からは相談事業をNPOに、受付、図書類の管理と貸出、会議室の貸出業務を株式会社に委託しています。
このたび出された国の第3次基本計画では「男女共同参画センター・女性センター等の機能の充実・強化」が掲げられていますが、当区のセンターは果たして「機能」を果たしていると言えるのでしょうか。残念ながら単に入れ物として存在しているようにしか見えません。
そこで3点おたずねします。
1点目。男女共同参画を推進するうえで、当区のセンターはどういう位置付けにあるのでしょうか、うかがいます。2点目。区とセンターは一体となって、地域のネットワークづくりや男女共同参画の積極的推進を促す情報発信を行っていくことが重要だと考えますが区のお考えをうかがいます。その場合、センターのあり方についての見直しが必要と考えますがいかがでしょうか。お答えください。3点目。センターの立地についてうかがいます。センターは、徒歩ですと丸ノ内線南阿佐ヶ谷駅から15分、JR荻窪駅から20分の住宅街の中にあり、高齢者や障がい者、お勤め帰りの方、ベビーカーを押す人にとって、立ち寄りやすい場所にあるとは言えません。よりアクセスの良い場所への移転を求める声を私どもに頂いています。センター機能の充実・強化が求められるなか、だれもが立ち寄れるセンターにする工夫が必要だと考えますが、区としての見解を伺います。
4つ目の柱、「男女共同参画をめざす杉並区行動計画」について2点うかがいます。
当区の行動計画は、今年3月31日までを計画期間としていましたが、その後改定されないまま半年が経過しました。男女共同参画社会の実現に向けて、次の行動計画を早急に策定すべきと考えますが、策定の予定はどのようになっているのでしょうか。うかがいます。2点目です。行動計画を着実に推進していくためには目標の数値化が必要と考えます。当区では、保育所数や高齢者施設の定員数、各種審議会等の女性委員の比率などは数値で目標設定されていますが、これに加えて男女共同参画に向けて「めざす姿」を打ち出し、それに向けた具体的な、例えばワークライフバランスに取り組んでいる企業の割合や男性育児休業取得率など、目標数値を示すことが必要だと考えますが、いかがでしょうか。また、目標達成に向けて進行管理と評価が重要になってきますが、現在の進捗状況調査報告書では「何なにを行った」しか見えてきません。実施したことが目標に照らしてどうだったのか、という評価が必要と考えますがいかがでしょうか。お答えください。
今回取り上げた男女平等というテーマは新鮮味がなく使い古された感がありますが、今回取り上げた避難所で女性が置かれた状況を見ても、「子育て・介護」の現状から見ても、相変わらず女性が抱える問題であり、いまだに不平等な状態にあるのが現実です。「男女平等」は意識して取り組まねばならない重要なポイントです。
そこで今回の質問の最後に、現在策定中の新基本構想に関連してうかがいます。
前に述べましたように、男女平等は、私たちの暮らしに密接な子育て、介護、防災、まちづくり、教育、環境、くらしなどあらゆる所管との連携や全庁的な体制が必要であり、男女共同参画推進の担当所管だけでは進みません。いま、区では新基本構想策定作業が行われていますが、男女共同参画というテーマが議論されることが少なかったように思います。基本構想、また、総合計画の策定にあたっては「男女平等」を意識的にしっかり盛り込んで施策化するべきと考えますが、区としてのお考えはいかがでしょうか。お考えを伺って質問を終わります。