貧困問題とセーフティーネット②

ちょっとした躓きで誰でもがおちいるかもしれない生活困窮の救済のために

生活サポート基金は2005年に創業し、お金にかかわる相談と主に「事故情報」のためにどこの金融機関からも借りられない人への融資をしています。そして20084月からは東京都、都社会福祉協議会、労金、サポート基金の4社の提携事業として東京都生活再生相談窓口が開設され当基金が相談をうけています。この制度にも融資があり、当基金は労金へ融資斡旋し労金が融資します。昨年の相談件数は初回面談で943件、融資件数は5112000万円です。他の相談機関が軒並み多重債務問題では相談者を減らしていますが、サポート基金へは融資というツールがあるためでしょうか、相談も増え続け融資も毎年倍増している状況です。

 私たちの生活サポート基金には生活が行き詰った、やりくりが難しい、破産をしたために子供の学資をどこからも借りられない、などなどお金に関する相談が持ち込まれます。2時間ほど相談時間をとり、困っていることが何で、どのようにしたいのか、家計診断をする中で解決策を相談者とともに考えていきます。方向性や優先課題を見つけることは実に難しいことです。ご本人が納得するまでトコトンお付き合いをします。必要があれば弁護士相談や生活保護窓口や精神面では保健所へも同行します。いくら相談員が新しい提案をしてもご本人の納得度が低ければ生活を変えることはできません。

 こんな事案がありました。手取り月収13万円で道路工事の警備をしている方です。天候に左右される仕事ですので、税金を納められないこともあります。徴税課からは厳しい取り立てにあっています。当相談窓口へいらして過払い金がある借入を負っていたので債務整理をすることになりました。弁護士に受任してもらい過払い金を待っていたところ、また再び徴税課です。一刻も待てません、すぐ支払ってくださいとのこと。当基金としては過払い金が出るのを待てば納税できます、少し待ってください。そうでないとこの方は生活保護になってしましますと伝えました。しかし徴税課の答えは納税してくれれば生活保護でもよいのではとの答えでした。役所全体から見れば生活保護になるのは税の無駄遣いです。ほんの何か月待てないのか不思議でなりません。

 さて、今回の「生活困窮者自立支援法」ではこのような役所内での行き違いをきたさないように「総合相談窓口」をつくります。相談者がたらいまわしをされないような工夫も必要です。その窓口で就労支援なのか生活保護なのか融資で解決できるのかなどを振り分けます。この窓口がいかに重要な役割を果たすかお分かりいただけるでしょう。当基金ではこれまでも家計相談がいかに重要であるかを説いてきました。就労するにしても生活保護にしても家計がどのように回っているかを把握しなければなりません。まさに今当基金が実施している相談窓口が自治体の「総合相談窓口」となります。その基本は家計診断です。私たちは融資制度を持っていますので、特にその方に融資できるかどうかの目で厳しく家計診断します。そこができないと自立支援にはつながらないと確信しています。

 20154月からは全国の福祉事務所設置自治体はどこでもこの「総合相談窓口」をつくります。自治体独自の体制で進めるか、他機関への委託などやり方は色々と思いますが、生活保護という最終のセーフティネット陥る前の方策を十分活用して生活困窮者が自立できるような仕組みにしていかなければなりません。自治体内部のそして民間、NPOなどとの連携の有無が窓口の成否を決めることとなると思います。                     (生活サポート基金 理事/杉並ネット代表 藤田 愛子)