貧困問題とセーフティーネット ①
ネットで探したベビーシッターに子どもの命が奪われた事件に思うこと
若い母親は生活保護を受けていたそうです。働きに出ることもあったとのこと。親を責めることはいくらでもできるでしょうが、生活費に困る切羽詰った状況の中 でのことでしょう。理由が何であれ誰かに子どもを預けなければならなかったことは事実です。認可保育所が限られ、夜中まで働かなければならない人もいま す。その時の預け先として、ベビーホテルについては認可外保育施設として行政に届け出義務がありますが、ベビーシッターについては野放しです。ましてネットを介してだと成りすましでも何でもできてしまい、今回のようなことが起きました。ベビーシッターについても、いまは資格も問われず制度もありませんが、子どもの命を守る観点から最低限届け出等の制度を提起したいと思います。
さて私はここで生活保護受給者の「働き方」についてお話ししたいと思います。昨年11月に全国の生活保護を受けていた人は216万4857人で、前月より519人増え、2カ月連続で過去最多を更新しています。生活保護の不正受給について、地方自治体が2012年度に把握した件数は約4万2千件、総額は約191億円で、前年度と比べ、件数は約6千件、総額は約17億円増え、それぞれ過去最多を更新しました。自治体が不正受給の調査を強化しているのが主な原因とみられています。生活保護の不正受給については、タレントの親が受給しているとの報道が大きく取り上げられ、世間の関心を引き起こし「けしからん」の声ばかりで保護費の引き下げも確定しています。もちろん不正受給は「けしからん」ことです。家族が豪邸や高級車を持ちながら受給しているなど、どのような審査をしたのかしらと疑いたくなります。しかし、今回発表された不正受給の内容別では、「働いて得た収入の無申告」(件数全体の47%)「年金収入の無申告」(同21%)な ど生活保護受給者でも病気で動けない人以外は働くように指導があります。当然でしょう。しかしこの指導が働くことを奨励し保護からの離脱に向けた方策には思えないのです。東京都内在住の単身者(年齢によっても違いがある)であればおよそ住宅費込みで13万円ほどが支給されます。住居費は53700円、水光熱費・通信交通費が28000円、残りが食費や被服費です。この方が5万円当月に働いたとすると申告して5万円を保護費へ返金しなければなりません。就労控除がこれまでは2万円ありましたので実質は3万円を返金。これを生活費の足しにしていくことになります(貯金が6万円以上あると生活保護は停止となってしまします)。しかし、この就労控除も今回の改正で減額されてしまいました。「働き」に対する申告を怠ったということが生活保護受給者の悪意がない行為によるものだったとしても、ここに不正受給といわれる種があります。働くことを奨励して早く生活保護からの脱却を促したほうが税金の使い道としてはベターなのではないでしょう。
今、アベノミクスで大手企業は賃上げまで進んできました。しかし、中小企業は賃下げすら出てきている状況です。2020年のオリンピックに向けて公共事業も増え、昨年の非労働力人口は22年ぶりに減少したとはいえ変わらずの就職難です。「職種を選んでいないで掃除でも何でもやればよいでしょう」という声がありますが、その清掃でさえ空きがない、短時間しか働けない状況は続いています。生活保護は最終のセーフティーネットですが、そこに至る前の生活困窮者に自立してもらうための方策をということで、昨年12月に「生活困窮者自立支援法」ができました。総合相談窓口をつくり相談者をたらいまわしにしない、就労を手助けする、そのために基礎となる家計相談を実施、子供を貧困の連鎖から救う、などが盛り込まれています。平成27年度からすべての福祉事務所設置自治体が実施します。 次回はこの制度について私たちサポート基金が現在行っている相談を通して検証してみたいと思います。 (生活サポート基金 理事/杉並ネット代表 藤田 愛子)