《緊急寄稿》穀物相場の高騰と私たちの食卓②
農政ジャーナリスト 榊田みどりさんからのレポート
異常気象ばかりが原因としてクローズアップされていますが、実は、2000年以降、世界の穀物在庫は余裕のない状況が続いており、世界の安定的な需給を保証するラインとしてFAO(国際連合食糧農業機関)が設定している穀物の安全在庫基準(17~18%)を、近い将来割り込むのではという懸念さえあります。
生産量は落ちていないのですが、世界の穀物需要量は、1970年に比べて2倍。途上国を中心とする人口増加、中国やインドなど新興国の経済発展による肉食の増加による穀物消費が背景にあり、今後、さらに需要は増えると予測されています。在庫に余力がなくなりつつあることが、今の穀物相場の乱高下の根本的な原因ともいえるのです。
さらに、相場高騰を押し上げていると指摘されているのが、金融危機以降、金融商品よりも利益が見込める穀物相場にシフトしたといわれる投資マネー。2008年には、穀物の高騰で、食を求める複数の途上国で暴動が起きましたが、その裏では、穀物高騰で利益を上げる投資家たちもいたのです。
規制緩和による自由貿易の推進を前提に、国際的な適地適作で世界の需給調整を図ろうとしてきたのが、従来の食の受給構造です。しかし、この構造は、今後も機能するのか。食糧輸入国の日本にとって、避けて通れない大きな課題になり始めています。