定率減税の07年度完全撤廃を含む増税案が出されているが、もう一つの大きな問題は医療改革であろう。
厚生労働省が示した「医療制度構造改革試案」の大きな柱は75歳以上を対象とする独立した新高齢者医療保険制度の創設だ。65歳以上を前期(65歳〜75歳未満)と後期(75歳以上)に分け、前期の人は従来通り健康保険組合(健保)や国民健康保険(国保)などに入り、後期高齢者は新保険制度に加入するという案である。
高齢者の1人当たりの医療費は現役世代の5倍となっており、国民医療費の4割近くが老人医療費だ。高齢者の大半は市町村が運営する国保に加入しているが、その6割が赤字である。
高齢者医療の改革は医療費抑制の鍵ではあるが、現行の老人保健制度を根底から変えることになるため、国民の納得を得る必要がある。
問題の第一は負担増だ。新制度では、医療機関の窓口負担が2割から3割に増える。長期入院者の居住費や食費も自己負担となる。低所得者への配慮はもとより、年金収入に頼る高齢者も多いことを考え、医療費抑制と負担増をどうバランスさせるかの議論をすべきだ。
次は制度設計の問題だ。現行の老人保健制度(現在は73歳以上が対象)は、原則1割の患者負担を除く医療給付費を税と国保、健保などからの拠出金=仕送りでまかなっている。拠出金は事実上、タレ流しに近い状態で、新制度でもこの制度は変わらず、医療費を抑制する機能がない。
また、なぜ高齢者の年齢を65歳以上の高齢者を前、後期に分けるのかということだ。妥当性が問われるし、国民に納得のいく説明が必要だ。
高齢者の医療制度改革は、医療費抑制には欠くことのできない柱であるが、GDPに対する総医療費の割合を国際的に見てみると17位で先進諸国と比較しても決して高くない。地域医療や社会的入院問題など現行制度の見直しや食育やたばこの害など予防医療の普及を徹底してからの負担増を考えるべきである。
誰でも、いつでも、どこでも安心して平等に医療を受けられる国民皆保険制度を守るために、制度への信頼は重要だ。国民の声を十分に聞くべきである。
杉並・生活者ネットワーク
代表 藤田愛子