8060世代の歩みがこの国の現代史 ~立憲ネットの韓国スタディーツアー③

文大統領が新設した内務省行政安全部「自治分権推進団」の職員たち(左から3人)と意見交換 8/30

韓国ツアーの3日目は、文(ムン)政権の下で内務省行政安全部に新設された「自治分権推進団」という部署を訪問し、そこで働く3人の職員たちと意見交換をしました。これも韓信大学教授で政治学者の李(イ)キホさんのセッティング。3人は国家公務員のようなポストです。

韓国の内務省は、日本の総務省にあたるところです。3人のうち、もともと行政職だったのはひとりで、あとの2人は文政権以前には社会運動家だったそう。日本で民主党政権時代に湯浅誠さんが政権内のポストに就いたことがありましたが、これと同じようなものでしょうか。 

自治分権推進団は、地域活動を通して住民自治と分権を生かせる政治をつくることを目的に、現場のサポートをしているようです。韓国でも高齢化が進み社会保障費の増大という課題は日本と同じで、そうしたなかで個人の尊厳が保たれるためのコミュニティのあり方が重要視されています。 

彼らは福祉や住民自治について日本モデルを勉強してきたと言い、必要な人にサービスを届けること、住民の潜在能力をどう発掘し生かすか、腐心していました。そして私が話す日本の地域包括支援センターやケアシステムのことに興味を示し、耳を傾けてくれました。李さんと市民運動家のふたりとは以前からの知り合いだったのか、李さんもこの話題に加わり議論が盛り上がりました。 

今回の旅で出会った人たち、まちづくりのリーダーや国の民主運動を牽引してきたパイオニアたちの口から何度も出てきたのが、「8060世代」という言葉です。「1960年代生まれで80年代に学生運動を経験した世代」。1980年に光州事件が起き、そのころ逮捕された学生のひとりが今のムン大統領で、のちに弁護士となり、やはり人権派弁護士として活動していた若き日の盧泰愚(ノ・テウ)大統領と、学生が軍部から弾圧拷問された事件の弁護を引き受けた同志でした。 

李さんもまさにこの「8060世代」にあたり、この国の平和、労働、女性、農業などの民主的活動の中心的な役割を担ってきたのが8060世代の人たちです。彼らは「対話文化アカデミー」に集って激論を交わし、その熱気を地元に持ち帰って地域の活動に力を注ぎ、オピニオンを発信し政治を動かし、社会を少しずつ変えて現在に至ります。 

そのことが深く胸に落ちた3日間でした。この旅を通して、李さんがプランナー兼コーディネーター兼ガイド・通訳、さらに兼運転手という、ひとり何役も引き受けてくれました。李さんにはいくら感謝してもしきれません。(杉並・生活者ネットワーク事務局長 小松久子)